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英雄の魔女

リンドウ

[リンドウ]

キャラID
: HS978-681
種 族
: 人間
性 別
: 女
職 業
: 旅芸人
レベル
: 121

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リンドウの冒険日誌

2020-05-02 20:00:20.0 テーマ:その他

【過去編】第3話『熱砂の絆⑤』

※この日誌は、蒼天のソウラ二次創作です。

―――――――――――――――――――――

リンドウは、アザミが見えない位置から慎重に牽制を重ねていた。2つの理由から、リンドウは持久戦を狙っていた。
1つ目は魔力量の限界だ。
アザミがどれほど優秀であろうと、使える魔力は有限であるのに比べ、リンドウは賢者の石の効果で無限に魔力を使える。最近の冒険者界隈では無限の魔力に昔ほどの需要はないが、こういった状況に於いては有利に働く。
2つ目は経験の差だ。
出会い頭の早撃ち勝負であれば、素人にプロが負けることはよくある。その日のコンディションによって、結果はいくらでも変わる。あの次元大介も虫歯の時は本調子を発揮できていなかった。
だが、持久戦になると素人はプロには絶対に勝てない。素人と特殊部隊の隊員にサバイバル勝負をさせればほぼ100%素人が負ける。我慢比べの勝負は、モロに知識と経験がモノをいうのだ。

アザミもそれを知っていた。確かに魔法のレベル、純粋な戦闘力、攻撃力、魔女を相手にした場合の立ち回りの有利さ。すべてにおいてリンドウよりもアザミに軍配が上がるだろう。
しかし、アザミは戦闘経験が浅い。倫理観を徐々に外れ始めているアザミは殺人には躊躇はないが、冒険者ではやらない戦闘そのものは数えるほどしかない。
対して、リンドウはずっと"こんな世界"に身を置いている。経験の差がありすぎる。それは癪だが認めるしかない。そも、わざわざ襲う事を目の前で宣言してみせるあたり、アザミにはリンドウに比べ圧倒的にそういった経験が足りなかった。
現に、経験の差は既に表面化していた。

その一つが、索敵。
この視界の取りにくい森の中で、リンドウはオーレリーによる屈光を読んでアザミの位置をかなり正確に把握できている。
だが、アザミにはこのオーレリーを見てもどういう風に光が曲がっているかは読み取れていない。リンドウの顔は映るが居場所は不明。
リンドウの光線による攻撃は魔法判定を受ける。魔女特有の強い魔法耐性を持つアザミにはスターゲイザーだけでなく、光や雷を主力とする魔法ほぼすべてが無効であるが、光線や爆発で木を吹き飛ばして間接的な物理攻撃を狙ってくるような場合は危険だ。

戦うフィールドを誤ったな。リンドウはそう思った。
龍脈を読んで位置を掴むこともできない以上、敵を目視出来ない森の中では圧倒的に不利だ。もっと開けた場所で戦うべきだった。
もし森の外で出会っていたら逃げ場はなかった。今頃リンドウはヴァースの湿地に埋葬されていただろう。

もっとも、リンドウは有利なフィールドで戦えるようにと、森の中をうろついていたのだが。

「…。」

声はするが姿は見えず。長期戦の不利と苛立ちにいい加減痺れを切らしたのか、方々で木々を薙ぎ倒していく音が聞こえ始めた。アザミが再び動き始めたのだろう。
よしよしと、リンドウは少しだけ安堵の表情を浮かべた。ここまでは予定通り。順当に行くならば、アザミはこのまま魔力のリソースを無駄に削り続け、疲弊したところを突けば危なげなく勝てる。
とはいえ、相手はあのアザミ。彼女の実力は誰よりも自分が一番分かっている。ほんの少しの油断が命取りになり得るのだから、気を引き締め直さなければ…と、改めてアザミを写すオーレリーに目をやった。

「…あん?」

暗かった。月明かりに照らされている筈の自分の視界全てが。最初にそれが何かの影に入っているからと気付き、次にそれは巨大な何かだと察し、リンドウは晴れた満天の夜空を見上げた。が…。
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