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英雄の魔女

リンドウ

[リンドウ]

キャラID
: HS978-681
種 族
: 人間
性 別
: 女
職 業
: 旅芸人
レベル
: 121

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リンドウの冒険日誌

2020-05-03 20:50:46.0 テーマ:その他

【過去編】第3話『熱砂の絆⑥』

※この日誌は、蒼天のソウラ二次創作です。

―――――――――――――――――――――

「なんっ…!?」

巨大だった。あまりにも。常軌を逸していた。デカかった!それ以外の思考が廻らない!
大山林を全てを見下ろすほどの巨躯が、じいと赤い瞳で眼下を眺めていた。顔だけではない。手、腕、胴体半分と、地中に根差しているかのように存在していて、そのいずれもが規格外の大きさだった。
暗黒の魔人の一回りは大きい。それがギリギリ、巨人に構えられた拳が振り下ろされる刹那、リンドウに判断できた現状だった。

「薙ぎ払え、巨人人形(ゴリアテ)!」

轟音。震動。吹き飛ぶ大量の大地の破片。振り下ろされた拳が地面に触れた瞬間、ウェナ諸島を揺らすような地響きと共に辺り一帯が跡形もなく更地と化した。
巻き込まれて入れば肉片も残らなかっただろう。思わず出てしまいそうな叫びを押し殺して、危険信号と共にじっと止まった思考を回し始める。

「間一髪…じゃねえ!アザミのやつ、闇雲どころかこの辺り一帯を徹底的に更地にするつもりだ!私を焙り出す為に!」

アザミの本気をまざまざと見せつけられた。本気で彼女はリンドウを殺すつもりであり、ヴェリナード国を滅ぼすつもりなのだと。その勝算と算段を見せつけられたかのような一撃。リンドウが驚くのも無理はなかった。

「つか、マジかよ!こんな芸当が出来るものなのか!?魔力が足りるものなのか!?」

そして何より驚いたのは、これだけの巨大な質量を操ってみせた魔力だ。ただでさえ使える魔力量に制限があるはずのアザミが、いかにも消耗の激しい魔力の使い方を平然とやっていることが解せなかった。

この時リンドウは知る由もないが、アザミがA級にまで危険視された一端がここにあった。
それは、アザミの操るゴーレム人形たちは魔力では無く、大地を流れるエネルギー…龍脈の力で動いている点だ。つまりエネルギー源は自然の力。アザミが魔力で1から10まで動かしている訳では無い。
あくまでアザミはゴーレム達に指向性を持たせているだけ。ラジコンを動かすだけの魔力と体力しか使っていない。ゆえに魔力の省エネにもつながり、力も人間を遥かに超える人形を扱える。
一個師団レベルの戦力というのは拡張でもなんでもない。本気で正規軍の一個師団と渡り合うレベルの兵力を、アザミは既に有していた。
アザミは周到だったのだ。武器の簡易生成術を盗み見てのゴーレム達の戦力増強、魔法戦士団の殺害による誤った情報の伝聞も、ただの復讐心からの考えなしではない。

「いや、考えるのは後だ!予定変更!全力で、ここから逃げる!」

当初の予定だった長期戦は不可能。全身の毛が総立つ感覚と同時に、リンドウはすぐさま身を隠していた密林地帯を飛び出し、逃げの一手に入った。同時に目晦ましの光弾も幾つか撃ち出す。
幸い、自身の姿がどこにいるかまでは正確に把握されていなかったが、木々そのものを破壊し尽くすつもりなら話は別。このままでは死を待つだけであるし、プランを変更しその準備に全身全霊で取り組まねば先にこちらが潰される。
同時にアザミもリンドウの逃げに気付いたが、速度ならばこちらが上だ。まずは全力で距離を取る。仮にアザミが無敵でも追いつけなければ意味はない。安全圏を作り、態勢を立て直す。
ゴリアテの脅威と破壊力に気圧されながらも、即座に逃げに徹するここまでの判断の速さ。それこそがリンドウを今日まで生き延びさせてきた要因だった。
が、アザミはそれを許すほど温い相手ではなかった。

「!なんで、ゴーレムが宙に浮いて…!」

答えは出ない。出るよりも早く、熱月人形(テルミドール)の一撃がリンドウを捉える。腹部に一撃、今日一番重たい打撃が入り、リンドウは中空から放り出され落下していく。
そして下には、地殻操作で大地の移動も即座にやってのけるアザミが待ち構えていた。その後方には大量のテルミドールと未だ無傷のゴリアテ。あまりにも、絶体絶命。

「かつては…あなたが空中戦、私が地上戦に秀でていた。地に引きずり降ろされた貴女に手はあるのかしら?万策尽きたわね。」

アザミに隙は無い。万全の状態で迎え撃ち、兵を整え、戦局を支配してみせた。
アザミは間違いなく、リンドウの想定を遥かに超えた。想像を上回った。地面に這い蹲りながら、リンドウはアザミの成長ぶりとその強さに、称賛さえ送りたくなった。
やはり、勝てないな―――。突撃を指示したアザミの背後から迫り来るゴーレム達の進軍の音を聞きながら、そんな事を思った。

ああ、やはり、アザミは強い。一対一では勝てないだろう。

"一対一では"。
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