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おお すぎやん!
しんでしまうとは なにごとだ!
しかたのない やつだな。
おまえに もう いちど
きかいを あたえよう!
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・・・と、これはドラクエ1で主人公が死んでしまったときの、王様のセリフ。
しかし、いくら人生はロールプレイング、といっても、現実の世界ではこうはいかない。
ドラクエシリーズの楽曲を手掛けてきた、すぎやまこういち先生が、9月30日に他界されました。
年齢がバレちゃいますけど、僕がドラクエ1とはじめて出会ったのは、中学1年生の頃でした。
ご存じの方がほとんどだと思いますが、当時はファミリーコンピュータ(ファミコン)で発売され、チープな内蔵音源で曲が作られていました。
加えて、ドット絵の画面と、限られた文字数で紡がれるストーリー。
もともと算数、数字がすきだった僕は、敵を倒してレベルアップしたりお金(ゴールド)がたまるのが楽しくて、何度もプレーしました。
当時の友達がレコードの「交響組曲ドラゴンクエスト」を貸してくれて、聴きました。
あのピコピコ音が、こんなすごい音楽になるのか!と、当時吹奏楽部にいた僕はゾクゾクしました。
あの頃のドラクエは今と違って「想像」することで冒険を楽しめた。
その想像力をかきたててくれる、そんな曲たちに出会い、気がつけばドラクエとともに、大人になり、おっさんになり(苦笑)
そして、気がつけば、すぎやま先生も、90歳になっていたのですね・・・
今も毎日、ドラクエのオンラインゲームにはログインして、すぎやま先生の曲とともに楽しい時間を過ごしてる。
もともと「ロールプレイングゲームの音楽はずっと聴くものだから、聞き減りのしない曲を作る」とおっしゃってたとおり、気がつけば、もう自分にとっては「自然な環境音」だと思っちゃうくらい、当たり前の曲になっていた。
それでも、テレビのCMや、家電量販店などの前を横切ったときに、あのドラクエの「序曲」が鳴ると、なぜか背筋が「ピクッ」と反応してしまう。
大げさでもなく、僕の耳には、いつだってすぎやま先生のドラクエの曲たちがいる。
ここ数年はコロナの影響で行われなかった、毎年夏の「ファミリーコンサート」
2年前は、東京芸術劇場で、オーケストラ楽団を前にして元気に指揮棒を振るわれていた。
ドラクエの「序曲」、オープニングに続いてメインのメロディが流れ、6小節目に、トロンボーンや低音楽器が8分音符を刻むと、それにあわせてこぶしを「ぐ、ぐ、ぐ、ぐ、ぐ、ぐ、ぐ、ぐ」と握るあの指揮が大好きでした。
もう、見ることはできないのですね。
ドラクエ以外もたくさんの素晴らしい楽曲を送り出し、そして何より、東京オリンピックの選手入場のオープニングを飾った「日本の序曲」がドラクエの「序曲」でした。
思えば、そのとき、すぎやま先生からの公式なコメントは、記事を探しても見当たりません。
もうすでに、闘病されてたのでしょうか。
90歳という高齢の中、そう遠くないとき、いつかは来るだろうと思ってたけど、いざそうなってしまうと、心にぽっかりと穴が空いた気分になってしまいました。
自分も、まがりなりに曲を作る身として、心から尊敬をしていたすぎやま先生でした。
たくさんの素敵な曲をありがとう。僕はその曲とともに、まだ冒険します。
心からご冥福をお祈りします。ありがとうございました。