魔人と相対するのならば、まずは天使。
しかるのちに祈りを入れつつ聖女をばら撒き火力を維持して打ち破るーー。
火力の維持こそ僧侶の妙技。
大火力を維持しつつ敵の戦力を削げば勝利間違いなし。
言ってみれば当たり前のことでもある。
その意味で魔人において開幕天使をするのは
あくまで保険であり、本題ではない。
本来ならば聖女を使うべきである。
そう主張する僧侶も少なくはなく、議論の余地のある話題である。
だがそれは開幕時点から壊滅を警戒することと同義。
立ち上がりの遅い魔人に対してなら、
後々使う暇がないであろう天使を先に行い、
徐々に体勢を整えていく方が自然。
バト3と言うリスクを考えれば当然の選択…!
彼はそう考えてしまった。
ここで、暗黒の魔人の主要な攻撃手段を見てみよう。
グランドショットはさておき、
フルスイング、怪光線、なぎはらい、じしんなどは
全て予備動作があり大振りである。
即ち、回避手段があるということ。
全員が受ける可能性は低いと考えて良かった。
前述のとおり保険に走るのもわからないでもない。
だが仮に…今回の魔人が因果律を歪めてしまっていたとしたらどうだろう。
そんなことがあるはずがない。
賢明な読者諸君はそう考えるだろう。
しかしながら実際の現場はⅩの日で賑わう魔法の迷宮である。
「世界が重く感じた」としばしば言われるように、
そのような時間には結果と過程が逆転することがありうる。
彼らの視点から見れば
「なぎはらいを背後に避けたと思ったら全員が倒れていた」
ようにしか見えない。
全員が祭りの熱気で幻覚を見ていた可能性もあるが、
ともかくそれは起こったのである。
HP0
HP0
HP0
HP1(天使)。
死体は全て密集。
これが開幕1分経たずしての戦況である。
この時の僧侶は、まるで全員がマヌケにもテールスイングの直撃を喰らい、
自分を含めて罵倒する相手が居ないような心境に陥る。
その後押し寄せるようなパニックに…
陥らなかった。と言うよりは、
頭が働くより先に指がザオラルを選択したので助かった、とも言える。
二人程蘇生した辺りで死亡し、
天使復活するまで、多少頭が空でも問題なかった、というのが大きいだろう。
しかし、これは完全な作戦ミス。
僧侶で言う3〜4ターンの遅延とは即ち状況次第では致命的損失を意味する。
そして状況は致命的損失の機会を作り出していた。
諸君が仮に敵の立場なら僧侶を集中攻撃すれば
放っておいても体勢は盤石になる、と思うのではなかろうか?
そんな誰もがわかることを敵がして来ないわけがない。
敵は死体で僧侶を釣り、指弾とグランドショットを被せ、
事あるごとに地震を警戒させ、必殺を潰した。
加えて死体は各地に散乱する。まさに生き地獄。
その内に魔造兵の建造は終わり、回復を放ち始め、
じわじわと怪光線となぎはらいで追い詰めていく。
加えて魔人は因果律を歪めてくるのである。
振り向きざま遠心力を利用して放たれるそれは、
ターンフルスイングとでも言うべきか。
一瞬気を緩めたであろう僧侶がロザリオごと粉砕されていく。
さて、この状況で僧侶ができる事であるが…
・無敵時間タゲ拡散待ち
・ロザリオ待ち
・必殺待ち
である。
運に頼るなど僧侶にあるまじき行為…
と言うのは理想でしかない。
どれだけ作戦を立てようが死ぬ時は死ぬのである。
実際現場に居合わせたのならば、
プライドなどはかなぐり捨ててでも機会を待つしかない。
実情はと言えば天使連打を中心に、ひたすら生き延びるだけである。
魔造兵の射程範囲外から天使の瞬きを使えばギリギリ間に合う事が多い。
何せバトは蘇生をしてもすぐ死ぬ、
天使復活からの自己聖女は2ターンかかる、
祈りすら惜しい、そんな状況である。
やらざるをえない。
半ば自棄になり始めていた僧侶が再び必殺を引く。
同時にターゲットはバトルマスター側。
彼は必殺を活かすタイミングをようやく得られた。
無敵時間を利用し、とりあえずベホイムから祈り。
ベホマラーからザオラル、聖女へ移行。
これが課題終了の瞬間でもあった。
時間にして12分の戦闘である。
この日も彼は勝利を収めることができた。
次回も果たして生き延びられるのであろうか。
今回の活動に期待がかかる。
完
いや、かけんでいいけどね…(-_-)