この物語は、[蒼天のソウラ]海底離宮突入部隊の一員であった[アヤタチバナ]中心に展開されていきます。些かショッキングな表現を含みます。また若干のエスコンネタも含みます。
00[NIGHTMARE]-悪夢-
暗闇の中、そこが水中であるかのようにくぐもった衝撃音を聞く。目が開かれるが、焦点が合わず何もかもがボヤけている。赤茶けた色が、僅かに開かれている視界にさす。ここは岩場か。どうやらボクは強かに何かを叩きつけられ地面に転がされているようだ
<<自分が死ぬ夢を見た>>
「アンタがっアンタが皆んなを騙してたのね!」
五感の内、聴覚だけが正常に働いていた。いや、やはり異常だ。聞き覚えのある女の声が、その声が、鼓膜に突き刺さるように頭に響き渡る。苦痛を覚えるこちらを気にも掛けず自らが正義の代弁者であるかの様に女が捲し立てる。その殆んどが騒音と化して脳を焼く
<<それも何度も>>
「バケモンが、性根が出たのう!」
今度の声は低音を効かせた男の声。その音はまるで遠雷だ。振動が骨身に、それが包み込む心までも揺さぶる。視界がスローモーに持ち上がって声の主を見る。大柄の、黒色の、コートか?いや、大剣か?大きなシルエットから煌めきが伸びる。本能で理解した。殺意の刃だ。あれは
<<忘れようも無い悪夢>>
聞いた声は二人だけだったが、人影は目の前で分裂してゆき、様々な色の大きな塊となった。眼前の物体が膨張を止めたとき、視界に張っていたモヤが漸く晴れる。冷たい感触を覚えた。皆会ったことがある顔だった。今の視覚ならはっきりと見える。ざっと見て99人は居る[群体]は、皆一様に飢えた猛禽の眼をボクに向けていた
今、何故99人だと思ったのだろうか?
「信じてたのに。この、裏切者」
静かに、重々しく、無慈悲に振り下ろされる言葉。何故か胸が痛む感触。死刑宣告に呼応し99人が各々の得物を抜く。歩み寄ってくる。何故か、皆、薄笑いを貌に貼り付けている。
「シンジ タ オマエ ガ オロ カ」
嘲笑。男女、高音低音、強弱、大小、99色の騒音。眼前の足の群れは闇を作り、再び視覚を飽和せんと近づく。踏み鳴らす足音と嘲りでとうとう聴覚が死ぬ。恐れを感じ、手を前に伸ばす。伸ばす。伸ばした
手
伸ばしたソレは、手では無かった。緑色で、輪郭が、かたちをうしない、ぐにゃり と くずれる
99の貌は、いつのまにかボクの顔になっていた
ボクは悲鳴をあげた
Dynamis/FATAL FAIRWEATHER