ご近所様からおすそ分けを頂戴した土佐名物「芋けんぴ」をバリボリとかじりつつ冒険日誌を書いていたら、伝説のカオス少女漫画の筆頭である”アレ”を思い出した。
ピンとこない方は「芋けんぴ 漫画」でグーグル先生に聞くがヨロシ。
というわけで、当冒険日誌初のフィクション作品をお送りします。
-----------------------------------------------------
「チョコの事件簿 ファイル8 先輩の慟哭」
まだまだ未熟ではあるけれど、憧れの探偵と食べているようになった。それでも仕事の上司でもありパートナーであるスレン先輩の助手として、クライアントからの依頼でとある人物の素行調査を行っていた。
最近、連日の如く不思議の魔塔に出入りする情報を入手した私たちは、当然の如くターゲットを張り込んでいた、そんな折の事。
私のちょっとした不注意で、ターゲットを見逃してしまう。
スレン「こらチョコ!よそ見をしていたらダメだろう!お前はまだまだ頼りない!」。
先輩に怒られる私。でも、その後、探偵としての心構えを諭してくれた。
厳しさの中に優しさが見え隠れする先輩に対して私は想う。
不覚にも、ちょっと嬉しい。なんて…。
心の奥底に秘める先輩に対する私の想い、知る訳がない筈だけど…。
いけない、私はこれでも探偵のプロの端くれ。気を取り取り直さなきゃ!
チョコ「じゃ、じゃあ 張り込みを続け――――――――」
が、その刹那、スレン先輩が私の髪に優しく触れた。
余りに自然なしぐさだった為に私は完全に虚を突かれ、その動揺を隠せないまま言霊に乗った。
チョコ「な、なに!?」
スレン「いいから、じっとして」
このシチュエーション、まさかキス――――――――――――――――
しかし先輩は、私の髪から何かを摘み取り、こういった。
スレン「芋けんぴ 髪に付いてたよ」
先輩は芋けんぴをかじりながら、私にウィンクして見せた。
う…わ――――――――――――――――
多分、私は真っ赤な顔をしてる。先輩に私の動揺が気が付かれないよう、顰めた表情を取り繕うのに精一杯だ。
しかし先輩は、そのまま仰天する行動に走った。
スレン「住民のみなさーん!夜分すみません!この娘、髪に芋けんぴついてましたよー!これは、ちょっとした事件ですよー!!」
深夜の住宅街で絶叫する。
チョコ「ちょ、せ、先輩、や、辞めて下さい!」
照れと恥ずかしさと、先輩の破天荒な性質を忘れていた私は様々な感情が交錯するけれど、とにかく私がすることは、この人を止めるしかない!!
スレン「なーにーがーどうなったら髪の毛にぃぃぃいいいい…」
「深夜にやかましいわーっ!」と、近所のお団子娘が飛び出してきて、スレン先輩に殴りかかろうとするも、それを物ともせず先輩は続ける。
先輩の気の渦が掌に具現化する。間違いない、これは先輩の必殺技…!?
スレン「芋けんぴがひっつくんじゃああああああああああああああ!!」
魂の慟哭!必殺「一喝」を放つ先輩。吹き飛ぶお団子娘、巻き込まれた謎の魚。
ああ…私はこの人の悪ノリの悪癖を忘れていた。
この人はこうなった以上、テンションが収まるまで見守るしかない。
「芋けんぴ」が何故、髪の毛に付いていたのか、私にだって覚えがないわよ!
ロストアタックでも、ゴールドフィンガーでも、零の洗礼でもいい、今すぐ先輩に食らわせたい!でも私はそんなスキルは持ち合わせていない。
何故なら私は、ただの探偵だから…。
一喝の閃きを持つ先輩のテンションと魂の慟哭はまるで収まる気配が無く、近所迷惑をはばからず、一晩中ご近所様に対して一喝を放ち続けていた。
…先輩は、意地悪だ。ついでに言うと、悪害だ。
-----------------------------------------------------
(終わり)