湯沸し器が沸騰を告げる音を立てるのを確認すると、元の世界から持ってきた飲み物を淹れる。
さすがにこれだけは止められない。
椅子に座って手に持った端末から読み取れる、無人機からの偵察報告に目を通す。
ふむ、アストルティアも相当にヤヤコシイことになっているようですね。
読み終えてパタッと軽い音を立てて二つ折りの端末を折り畳み、胸ポケットにしまう。
泣く者達が居て、それを見過ごせない、と。彼女はそう思っているというところですか。
気になるのは・・・
ここで思考が中断する
「たっだいまー!」
ちょ、突っ込んできたら
「方向転換~(笑)
お嬢様、ケガしますよ?
「大丈夫だよー、それよりなに飲んでるの?」
ああ、故郷から持ってきたものでね。
「うわ!真っ黒。苦そう!」
大丈夫ですよ、砂糖も入ってますから。
「じゃぁ、ちょうだい!」
はい、わかりました。それでは、この白いのも入れるともっと美味しいですよ。
「わあい!」
器を貸してください。
「あまーい、美味しい!」
気に入って頂いて恐縮です。
「これ、作れないかな?」
難しいと思いますよ。
「何で?」
材料が手に入りませんから。
「材料って?後、この飲み物の名前は?」
小豆ですね。
飲み物の名前は、ぜんざいです。お汁粉とも言いますね
白いのはお餅です。
帰るタイムリミットは、まだある。
わたしが、コンシェルジュのエルシドでいられる時間も。
それより気になるのは、無人機に貼り付けられていた手紙だ
『勝手に連れ帰ったら、★ス。ルーシー』
★の部分は、明らかに刃物で切り取られていた。意思は明確だ。
ルーシー?何者だ・・・
「それでね、そのときママがね」