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調理を継ぐ者

ティソナ

[ティソナ]

キャラID
: ZV419-388
種 族
: ドワーフ
性 別
: 女
職 業
: バトルマスター
レベル
: 106

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ティソナの冒険日誌

2016-02-25 12:24:29.0 テーマ:その他

とある神父の・・・

ほとんど何も見えない暗闇の中、僅かに揺らぐろうそくの炎が俺と同行者の視界をわずかに照らしている。
じめっとして体全身を抑え込むような重い空気が、ここが地下室だと認識させる。
即座にザオを受けられる冒険者と違い、事故で死んだりモンスターに殺されたりした一般市民はとりあえずここに運び込まれる。
一般市民からすれば一生かかるほどの金額を寄付するかどうかで、ザオを受けられるかどうかが決まる。
ケチケチしないでかけてやりゃぁ良いのに、と常日頃からは思う。

まぁ、奇跡の力とやらで死体が腐らないのは悪くない。
この魔瘴が蔓延している時代、放置して腐らせるともれなくゾンビ化するか腐った死体とモンスターに成り果てる。
困った事に、かけだしの冒険者では歯が立たない程度の戦闘力を持つから大変だ。
なにより、さっきまで悲しんでいた対象を相手に戦わなくてはならない。
戦闘力がある者でも厳しい。割り切れる者など、どれほどいるだろうか。
結局、退治のために冒険者たちに支払う報酬額と、崩壊した教会の数がすさまじいことになり、さすがにそれはマズイと神殿上層部は判断したらしい。

その施設は、教会に設置され、荘厳に有り難がれと信者に解放された。
自分たちの死体置き場を涙を流して喜んだ信者たちを見たのは、実は数か月前だ。
なんでもグランゼドーラからの技術供与されたもので、食料を保管する技術の応用らしい。
けったくそ悪い思いだけが残ったが、今でもかわっちゃいない。

死体が入っている地下に、家族の姿を見に今日もやってくる。涙を流す。お金を払えなくてごめんと自らを悔やむ。
俺の同行者は、新品同様の退魔の帽子を恭しく外し、横たわる家族にすがる信者に声をかける。
祈りを捧げさせて欲しい。
横たわる家族はモンスターに襲われたらしく、欠損が激しい。
男性なのか女性なのか、種族さえも見た目には判断できない。

祈りをささげる。いわゆるリホイミだ。欠損した箇所が修復されていく。ほぉ、プクリポの御嬢さんだったのか。
大事な部分が欠損していてはザオが効かないし、障害が残る場合もある。
なので死体のメンテナンスも神父にとっちゃ大事な仕事だが、一瞬で治るホイミでは無く時間がかかるリホイミなのは信者たちに奇跡の力をよりわかりやすく見せるためだ。
信者達に慈愛のこもった笑顔を向けているコイツも、大したエンターテイナーだ。
”心を込めました”という顔付の祈りが済むと、一礼して家族たちから離れた。

家族の背中をを見送った後、俺たちは先に進むことにした。家族たちの相手をするために地下に降りたわけじゃない。たまたま居たので営業活動をしたまでだ。
神殿の専売品の一つをうちの教会で預かれと、上の方から御達しがきた。
同行者はその使いで、若いエリートというところだ。
死体が腐らないということは、どんなものも品質を変えずに保管することもできるというわけだ。

貴族たちの間で流行っている代物らしい。
鳥の羽一枚分の重さが、実に黄金のはなびら一枚で取引される代物だ。
効能は天国、キアリー一発できれいに戻る。が売り文句だ。
神の奇跡の魔法とやらが聞いて呆れる。

木箱を空け、エリート保存状態を確認し、満足そうな顔をする。
明日の朝には、受け取りのための騎士団がこの田舎に到着する。
いっそ、魔物が襲わないかな?
ともおもったが、騎士団が城に戻ってから報酬が受け取れることになっている。

三日後、報酬を受け取った俺は、一人前の証を駅員に見せて列車にのった。
ラッカランの地を踏みしめると、カジノやコロシアムなどの活気にあふれている。生き返った気分だ。
だが、その思いもあっという間に終わりを告げた。まぁ、そんなものだ。

教会の裏手にあるのは小さい墓。
小さな小瓶の蓋をあけ、墓にせかいじゅのしずくを垂らしてやる。
死体を腐らせない技術があれば、せかいじゅのしずくがあれば遺体は綺麗に保存できた。ザオもできただろう。
それを知ったのは、ずいぶんあとのことだ。今さらどうしようもないことも。
もう、帰ってくることの無い。どうしようもない感傷でしかない。

カキン!シュボ。
慣れた手つきでジッポに火をつける。コイツに一発で火をつけることが出来るのは、俺の小さな自慢だ。
いつも持っている方の教会の専売品に火をともし、燻らせた煙に数年前のことに思いを載せようとしたとき。
「スカラベキング、サポに任せてたら死んじゃってた、テヘぺろ。」
あの騒がしい緑色の声が教会に響く。
「半額。。。。まかんない?」
コイツは・・・
最近、あいつの笑顔を思い出せていない。
だが、口元の笑みは隠せそうに無かった。
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