神父は公務員のみたいなもんだから、将来安定。
そう思っていた時期が俺にもありました。
神殿の専売品の横流しがバレたからなんだが・・・
捕まった横流し品は、どこぞの貴族様に流れていたらしく、グランゼドーラの勇者姫様が誘拐された?とかで、王城内の一斉操作が行われて明るみに出たらしい。
だが、首謀者のいわゆる大貴族で罰することもできず、すべてもみ消された。
一応、神官を除籍ではなく、別命あるまで自由にしてよし。神の慈悲に感謝せよ、だそうだ。
グラン銭スも慈悲深いことで。涙がでそうだ。
なんにしても、担当する教会から追い出され、収入減を絶たれて転職活動中というわけだ。
「・・・言葉もでないねー」
そうか?出てるじゃねーか
「そうじゃなくてね・・・。で、なんで、コンシェルジュなわけ?」
紹介された仕事が、これだった。
「グランゼドーラ王国からの紹介だっけ?前のプラコンやめちゃったから、新しいコンシェルジュの一覧見てたら、知ってる顔が居るんだもの。つい選んじゃったわよ」
いまから変えてもってか、エルシドつったっけ?前のプラコン、あいつはどうした?
「コラーダねーちゃんのとこに取られた」
寝取られたって訳だ。
「クビにすんぞ!?」
おー、こわいこわい。
「いーのよ。ソナは元々よく使ってくれてたけど、ねーちゃんはあっちじゃあんまし使ってもらって無かったし。ロクな相手に持ってもらって無いしね。せめて、ティアでくらい一緒に居ても良いでしょ。」
なんだそりゃ?
「こっちの話よ。それより、名前登録するよ。教えてよ」
偽名でいいよ
「ぎめい。っと」
うぉぃ
「しっかし、神官服脱ぐと、若作りしてない?めっちゃ幼く見えるんだけど」
人の事言えんのか、お前は。
「それじゃ、家の事お願いね」
分かったよ。適当にさぼってるわ、言いながら協会の専売品を取り出す。
「仕事しろよ!?ていうか、アタシの前では吸うなよ!?」
分かってるよ。幼児の前で吸ったりしねーよ。ジッポを取り出して払うように手を振る。
「・・・。それじゃ、ガタラに行ってくる」
おう、気を付けてな。
元気な緑色が、ルーラで去っていく。
カキン!シュボ。
ルーラ音が消えると同時に慣れた手つきでジッポに火をつける。ガキっぽい自己満足が心地いい。
それを背中で見送りながらほうきを取出し、庭の掃除を始める。
枯れ葉を集めて山にする。
以前、地下室でお礼だと押し付けられた包み紙から中身を取り出す。
少し時間が経ったので芽が出始めているが、旨そうな芋だ。
それをアルミホイルに包んで枯れ葉の山に突っ込んでおく。
そこに火のついた専売品を落とし、パチンと指を鳴らして少し上でバギを発生させる。
小さい風に煽られた火が勢いよく点火し、立派なたき火が出来あがる。
俺に報酬を届けた使者の話を思い出す。
『御指示通りに、貴族の情報をグランゼドーラのノガート兵長に伝えておきました。陛下より謝礼を預かっています』
『ちいさなメダル10枚とはずいぶん少ない気もするのですが・・・。ええわかってます詮索無用ですね。では、次の任務のプラコン潜入用の書類と服です』
ま、因縁って奴かね。任務のターゲットを思い浮かべる。何故メイド姿なのかはとりあえず、置いておく。
思い出したくもない過去に馳せるのに、既製品をもう一本取り出す。
カキン!
乾いた音が出るが火が付かない。おや?落ちたもんだな俺も・・・と思いかけた時、ルーラの音がする。
「ただいまー」
おう。お帰り。
「おろ?たき火?くんくんくん。あ!焼き芋!」
なんでアルミホイルに包んでるのに匂いが分かるんだよ。犬かよ
「わんわん」
お前な。
「あ、それよりお土産。ドワチャッカオイル拾ってきた」
拾ってって、まぁ、そうか。
「ジッポのオイル無くなってるでしょ?匂いでわかるもん。だから採ってきた」
・・・気づかなかったな。ありがとよ。落ちたわけじゃないらしい。
「落ちたって何が?」
何でもねーよ。
オイルを受け取りポケットに入れる。
それより芋が焼けたぞ。適当に一個取り出して放り投げてやる。
「やった!いただくよって、あっちぃ!?」
落としそうになりながら、わしゃわしゃと音を立ててアルミホイルをはがす。ぽこんと音を立てて二つに割り、山吹色のホクホク、さらに蜜がたっぷり。
あの時のエリートも、俺に押し付けたままで惜しい事をしたものだと思う。
「にへへ、おいしー」
まぁ、より直接的に守れる位置にいる。くそったれを相手にする任務でも、悪い話ばかりでも無い。