注意)
二次創作
Ver4のストーリーのネタバレ的要素を含みます。
キャラ付け等は著者の勝手な想像によるものなので、イメージ等が壊れるのが嫌な方には推奨しません。
「魔王ベリアル」
知の魔王、ソロモン72柱の一人、四獄の支配者の一人。彼を表す言葉は多い。
アストルティアにおいても、強大な敵の一人としてその名を馳せている。
悪霊の三悪魔、ネルゲル親衛隊、そして魔王軍12将。
叡智の冠により数百年もの期間を魔法の迷宮に封じられてなお、数多の冒険者と死闘を繰り返し続けている。
本気(強)でかかれば、駆け出しの冒険者程度なら話にもならず撃退される。
そんな彼のこぼれ話。
傷つき疲れた体を壁の背に預けると、自然と今の自分の置かれている状況を確認出来てしまう。
口を開けば暑苦しいネコっぽい侍と、話しかけても返事すらしない黒っぽいコミュ障、偉そうな髭を誇らしげにスライムのハーレムに溺れる大将軍・・・
他にも古くから見覚えのある押しも押されぬ大魔族たち。
ここはそんなコイン・カードボスの控室、棺桶完備で人間でいう所の神殿も兼ねている。
部屋はかなり巨大だが、より出番の多い者ほど占有しているエリアは広い。先ほどのネコや根暗などと比べれば自分の占有エリアのなんと狭い事か。魔法の迷宮に来たばかりの頃は大きなエリアを確保していたが、他のボスも増えると自分の出番が減り、どんどんエリアも縮小していった。
最近になってからは、「悪霊」でまとめられて三匹で共有スペースにまで減っている。
三食完備だが、24時間体制でいつ呼び出されるかは分からないブラックなのは変わらない。
ここ最近は、熟練の冒険者にかかれば本気で戦っても片手で捻り倒される・・・
悪霊仲間(腐れ縁とも言う)であるアトラス、パズズと共に本気で戦っても勝ち目は薄い。
それでもなお、「魔法の迷宮」という牢獄での任務を忠実にこなし続けている。
先ほども三匹で挑んだが見事に撃破され、今しがた自分だけが先に復活し他の二匹は少し復活が遅れている様子だ。
レンドアの様子を見る限り、次が来る様子はない。少しばかり時間をかけてもよかろう。
二人を待つ間の手慰みに、首元の鱗の裏からコインを数枚取出し一枚を右手の親指の爪で跳ね上げる。
キィーンと乾いた音共にコインは跳ね上がり、やがて重力に逆らえず落下する。その真下から次のコインを指先で跳ね上げて、落ちてくるコインに当てる。それを繰り返していくうちに10枚以上のコインが宙に舞う。
迷宮生活が長いせいでこんなくだらない暇つぶしが上達する
「いけるか新記録!?」
15枚目を跳ね上げた時、
「くそ!くっそ!くそがぁぁぁ!」
激しい雄たけびと共にバズズが目を覚ます。
蘇ってそれだけ吠えられれば充分元気だ。
「落ちつけ。ここで怒鳴ってもただの浪費でしかない。」
愚にも付かない慰めの言葉に、バズズの咆哮がこちらを向く。
「ああ!?旦那、そんなこと言ったってよ。何時になったら俺たちはこんな所から解放されるんだよ!」
「叡智の冠が施した魔法の迷宮の楔は、無限の戦いの果てにある。そんなことは今さらであろう?」
我らの本来の魔力は、アストルティアに散らばった膨大な量のコインとカードに込められている。
これらを全て集めきるまで我らはここから出られない。そういう契約なのだ。
「わかってる。わかっている!だが、倒されても不死身でも痛ぇもんは痛ぇんだよ!」
まぁ、だからこちらも手を抜かずに戦っている。それに冒険者に勝てば、ほんの僅かだが少し多めの魔力が戻る。
ここでバズズの声に反応したのか、アトラスが目を覚ます。
「ウガ?」
「おはよう、お前も起きたか」
「お寝坊さんかよ。おはようさん」
アトラスは周囲を見渡し、部屋の奥に食事の準備が出来ている事に気づく。
食事は迷宮のどこから来るかは分からないが、定期的にどこからか食料が部屋の片隅に転送されてくる。
腹立たしい事に5種族の食い物と来ている。
人間どもの魂を食い漁ってきた身としては情けなくて涙が出そうだが、貯めた魔力を使う訳にもいかないからエネルギーの補充はせねばならない。
必然的に食う事になる。
アルヴァンあたりが見たら腹を抱えて笑うだろうか?
いや、奴なら酒を持ってきて一緒に宴会の一つもやりかねんか。
(2/2へ続く)