「高寺先生、少し待っててください。」
星野は高寺を中庭の入り口で待機させ、一人池の前に立った。そして、なにやらぶつぶつ唱えている。
「(星野先生は何をしてるんだ...?)」
高寺がそう思ったときだった。
「私を呼んだのは誰かな?」
どこからともなく声が聞こえる。
「私です。」
星野がそうつぶやいた。
「そっか、君かー。んで、何の用かなー?」
「(だ、誰だ?この人...。年齢からして二十歳っぽいが...。それに見た目が不気味だな...。見た目と口調がマッチングしてない...。)」
高寺はそう思った。
「高寺先生、この方が願い事を叶えてくれる神様、「ガンム」様です。試しに、休憩が欲しいという願いでもいかがですか?」
「ね、願いが叶う?そんなバカな話が...。」
「百聞は一見にしかずです。」
「...わかりました。やってみます。」
高寺はガンムのところへ向かった。
「ガ、ガンム様、休憩が欲しいのですが...。」
「おっけー。んじゃちょっと待ってねー。...はい、これでおっけー。」
「え、もういいんですか?」
高寺はきょとんとしている。
「うん、じゃあねー。」
ガンムは池の中へ消えていった。二人はいったん職員室へ戻った。
「(はあ、あんなんで本当に休憩なんかできるのやら...。)」
「信じてませんね?高寺先生。」
「わわ!星野先生!そ、そんなわけないじゃないですか!」
「いえ、あなた今、はあ、あんなんで本当に休憩できるのやら...。とか思ってましたよね?」
「いや、なんで一文の誤りもなく分かるんですか!怖いですよ!」
「顔に出るんですよ、あなた。」
「てか、本当に願い事効くんですか?信じられないんですが。」
「まあまあ、そのうち分かりますよ。」
「はあ...。」
高寺は一週間後の会議に出さないといけないレポートを始めた。
「はあ、だるい。こんなんなければいいのに。」
そのとき。
「あ、高寺君。」
「あ、湯川先生、どうされましたか?」
高寺に声をかけてきたのは、教師を続けて30年のベテラン教師、湯川俊明(ゆがわとしあき)先生だった。
「高寺君、来週の会議は急遽中止になったから、レポートはやらなくて結構だよ。」
「え、あ、はい。」
高寺は状況が理解できなかった。
「え、まじ?よっしゃ!」
高寺はガッツポーズをした。
「ただいまー。」
「お帰りなさい。」
隼一は帰って由子に今日の出来事を話した。
「あら、よかったじゃない。」
「ああ、あれ(レポート)がなければ今週はゆっくりできるぞ。あ、ていうかさ、悟志は?」
「ああ、悟志はね...。」
「え、熱だと!?」
「そうなの。さっき計ったけど、38、7度もあるのよ。」
「え、じゃあ俺明日学校休まないといけないのか?」
「いいえ、あなたは普通に行ってくれたら結構よ。」
「あ、ああ。」
翌日
「ええ!な、なんだこのニュース!」
隼一が朝から大騒ぎを起こしている。
続く