リョウトが本来生きていた時代…。それは、今現在の時間軸よりも1000年後の世界。そんな世界に、セイヤたちは今から飛び込むこととなる。現代と違うもの、これから起こること…。それはリョウトのみが知っている、あるいは誰しもが知らないことだ。果たして、1000年後の世界で、セイヤやメイ、そしてシロは、何を見るのだろうか。セイヤたちの新たなる冒険が、今、幕をあける。
リョウトはある小道具を取りだした。四角い物体で、回転する。しかし無色、いや、白色が基調の箱だ。色のないルービックキューブとでも名状すればいいのだろうか。
「この箱を使えば、時代を行き来することができる。早速1000年後の世界に飛ぶぞ。」
小道具の持ち主であるリョウトは、皆にそう言った。そう、この小道具は、タイムスリップを可能としてくれる、とても貴重な道具なのだ。現代では完成してないが、1000年経った彼の世界では、量産されている。
「どんな世界なんだろ、楽しみだなー。」
メイは期待の目をして、リョウトを見つめる。
「あまり期待しすぎない方がいいと思うぞ…。別に、この時代と何かすごい変わったことがあるかと言われたら特に思いつかないしな…。」
リョウトはそう吐き捨てる。その言葉に、メイは顔をしかめた。
「誰か、触ってみたいやつとかいるか?」
そうリョウトは言う。
「え、使っていいのか?」
その言葉にシロが反応する。
「この道具はある程度手先が器用じゃないと扱いが難しい道具だ。セイヤみたいなのじゃ厳しいかも知れんが、シロなら扱えそうだな。」
「どういう意味だ?」
リョウトの言葉にセイヤは膨れた。事実、戦士のような職業がメインの彼は、お世辞にも手先が器用とは言えないだろう。
「それで、どうやって使うんだ?」
「この箱の表面に、ボタンが複数ついているのが分かるな?このボタンを規定数押すことで、その押した回数と連動している時代に行けるんだ。1000年後のパターンでボタンを押した後、それの側面の丸いボタンを押せば、完了だ。ここまでは分かるな?」
「おう、一応。」
「では、1000年後のパターンを教えるから、そのパターンをボタンに打ち込んでくれ。急いでいれる必要はないから、ゆっくり、正確にやってくれたら大丈夫だ。」
リョウトは一通り説明した後、シロにパターンのレポートを渡した。
「うわ、めちゃくちゃ複雑じゃねえか。」
そうシロは驚いた。押す回数の多さ、ややこしさ、文句をつける余地は十分にある。
「間違えさえしなければ大丈夫だ。ゆっくり、焦らず入力するんだ。」
そう言って、リョウトはシロを宥める。しかし、シロは今になって自分自身で担当義務を背負ったたことに、後悔の念を抱いているようだ。そして、シロは始めた。
「ここをこうして…。次は…。」
シロは慎重に押す。タイムリミットのようなものはないとはいえ、その入力数の多さや、ややこしさを考慮すると、慎重になるのも無理はない。そしてシロが作業を始めてから、5分ほど経った頃…。
「よし、入力完了。」
シロは入力作業を終了させた。
「すごい時間かかったね。」
「お前次やるか?かなり神経使うぞ?」
メイの心ない言葉に、シロは怒り半分で言い返す。しかし、メイはさほど気にしていないようだ。
「よし、ご苦労。じゃあ、いよいよ飛ぶぞ。準備はいいか?」
リョウトはそう確認をとる。
「いつでもいいぞ。」
「はやくいこー。」
「いこうぜ。」
「よし、では、いくぞ。」
リョウトは丸いボタンをタッチした。突如、謎の光が、4人を包みこんだ。
「な、なんだ…?」
「どうなってるの…!?」
この出来事に、セイヤやメイはパニックになる。
「落ち着け、今から時代を跨ぐんだ。変に動かず、じっとしていろ。」
リョウトはそういって、セイヤとメイを止めた。
「どんな世界か…。楽しみだ。」
シロは、これから訪れる世界への期待を寄せていた。
2章に続く