私、メイは、毎日、学校が終わっては美術室へ行き、絵を描いていた。ここでなら、私のすべてをさらけだすことができる気がしたんだ。
メイ)…。ここをこうして。
サキ)メイちゃん、とても上手くなってる。いい感じだよ。
先生は、いつも私に温かい言葉をかけてくれる。…いいにくいけど、そんな先生が、私は大好きだった。
サキ)ところで…。メイちゃん、部員が一人だけって寂しくないかな。
メイ)…私は、このままでいいです。
サキ)…え、どうして。
どうしてって…。言わせないでくれよ、恥ずかしいなぁ。
メイ)こうやって…。サキ先生と二人で、絵に向き合える時間が、私にとっては幸せなんです。
サキ)め、メイちゃん…。
先生は、驚いた表情を見せてきた。私も、今のは取り消したいくらいだ。でも本心なんだよな…。
サキ)…。ありがとう。
メイ)はは…。
私の絵心は、みるみるうちに成長していった。いつしか私は、勉強、友達などどうでもよくなっていた。ただ、美術だけが、私の心を創造していた。
サキ)メイちゃん、今度のコンクール…。応募してみない?
メイ)え…。私が?
サキ)うん。ほら、申し込み方法とか書かれた紙あるから、挑戦してほしいな。
私は先生から、コンクールに関わる紙を受け取った。
メイ)…。考えておきます。
サキ)うん。
コンクールか…。まあ、気が向いたらでいいかな。今の人生は楽しいし。私の人生は、順風満帆だった。好きな先生と絵に打ち込む毎日。ずっと、こんな日々が続くと思ってた。
そんな良き人生は、ある時を境に、潰えた。
私は、いつも通り、美術室で絵を描いていた。
メイ)…。今日はこないなぁ。
先生が来ない。とはいっても、どの部活の顧問も忙しい時は来ないこともある。サキ先生だってこれまでに来ていないことはあった。私は、特に違和感はなかった。
「では、次のニュースです。」
私は、家に帰ってニュースを見ていた。そして、ある一つのニュースに、五感全てが震えた。
「刃物を持った男1名が、殺傷罪の容疑で逮捕されました。被害者は、この地区の…学校で、美術教師を勤めているサキさん。」
メイ)…。…え?嘘?
私は聞き間違いを信じた。しかし、真実は嘘には勝てない。
「サキさんは、刃物によって腹部を刺されており、意識不明の重体となっております。」
メイ)…。
「容疑者は、イライラしてて、誰か殺したかった。と、容疑を認めています。」
メイ)…。
あんまりだ。サキ先生を、そんな身勝手な理由で。通り魔には些か腹が立った。が、私がどうにかできる話ではない。
メイ)…。サキ先生、大丈夫かな…。
ただただ、先生が心配だった。もし死んじゃったら…。
メイ)…。コンクール…か。
ふと、私は、コンクールのことを思い出した。
メイ)…。
続く