あれから1週間の月日が経とうとしていた。リウは、今なおルマのことを心待ちにしている。この長い期間、リウは保証もなしに、親友の再来を信じているのだ。
「コンコンッ」
[わあ…!]
久々の音に、彼女はどれほど胸を踊ったか。
「入るぞ、リウ!」
この声こそ、彼女がもっとも待ち望んでいた声だった。扉が開き、ルマが部屋に入ってきた。リウは、嬉しさのあまりか、ベッドから体を起こし、満面の笑みでルマを迎えた。ルマも、リウに対して嬉しそうに微笑んだ。
「リウ、今日は一緒に外でも行こう。」
[え、外…!?]
ルマがその言葉を発したと同時に、リウはとても驚いた表情をつくった。ルマは扉の奥から、なんと車イスを押してきた。
「ほら、これ乗れよ。おれのおじいちゃんが昔使ってたやつなんだけど。これに乗れば、お前を運ぶことだってできるんだ。」
その発言に、リウはとても目を輝かせ、立とうとした。しかし、リウは立ちたくても立てない。
「ああ、これ乗るのもきついのか…。仕方ないな。」
ルマはベッドからリウを抱っこした。リウは緊張故か、顔が真っ赤になった。ルマも同様だった。そしてルマは、リウを丁寧に車イスの上に乗せた。
「よし、行くか!」
ルマは車イスを押して、部屋の外にでた。リウにとっては、人生ではじめての冒険である。移動している最中も、常にまわりを興味津々に見ていた。
「どうだ、リウ。これが外の世界だぞ。」
リウはルマににっこりと笑顔を見せた。彼に感謝しているのだろう。ルマもやりがいからか、嬉しさを醸しだした。
二人は病院の外に出た。リウは、これまで窓でしか見たことのない景色に自分が到達してきた喜びから、とても感激していた。そして、リウがよく見てたグラウンドのサッカー風景も、今日も幕をあけていた。リウは、ルマにこれ見よがしに人差し指でグラウンドを指した。
「ん?ああ、サッカーやってるな。」
しかし、意外にもルマの反応は薄かった。リウは少し残念そうな顔をした。期待と違った反応だったからか、思ったことが伝わっていないのではないかという不安感かは定かではない。そして、そんな道中、屋台が一件あらわれた。アイスクリーム屋だった。リウは、屋台からの匂いに釣られてか、ルマにアイスクリーム屋の方を指した。
「なんだ、アイスクリーム食いたいのか?」
アイスクリームというフレーズに反応していているかは不明だが、リウはとても興味を持った目付きでルマを見ている。
「はあ、仕方ねえな…。」
ルマはポケットから財布を取りだした。そして、バニラ味のアイスクリームを2つ買った。そして1つを、リウに持たせた。その時、リウはとても嬉しそうな顔をしていた。
「結構お小遣い消費したなあ…。まあ思い出づくり出来たと思えば安いもんか。」
リウはとても不思議そうにアイスクリームを見ている。リウは、先端部分を少し舐めた。その瞬間、彼女は衝撃的な表情をした。バニラの優しい甘味が、彼女の病院食とジャムコッペパンのみの食履歴を塗り替えた。リウは、その後も一心不乱に、アイスクリームを食べた。
「旨いか?」
ルマの質疑に、リウは笑顔で大きく頷いた。そして、リウは感謝のサインか、両手でハートを作り、笑顔と一緒にルマに見せた。ルマは彼女の笑顔を見れた影響か、達成感か、とても嬉しそうだった。
「よし、そろそろ病院戻るか!」
ルマは、帰路をリウと一緒に辿った。リウは、少し悲しげな、物足りなげな表情だった。その意を察したのか、
「また行こうな。」
と、ルマはリウに言った。リウはにっこり顔で、ルマに頷いて見せた。
to be continued