…うーん。…あれ、ここはどこだろう。真っ暗で何も見えない。私はたしか…。ルマくんとケーキを食べて…。お願い事も大きな紙にかいて…。…いや、そんなこと、今考えても仕方ないかなあ…。私、病室から出たことなんて、あの車イスでルマ君と出掛けたことくらいしかないのに、なんで病室にいないの…?それにしても、暗くて怖いなあ…。…。あ、10mくらい先のあそこにいるのは、もしかしてルマ君…?そうだ、あの後ろ姿は、ルマ君だ。ルマ君のところに行けば…。…あ、そうだった、私、足が動かないんだった…。どうしたら気づいてくれるかなあ…。声をだして呼んだら気づいてくれるかなあ…。…あ、私、声も出せないんだった。どうしよう。あ、手でもふってみれば、気づいてくれるかもしれない…。おーい!ルマ君!…。あ…!振り向いてくれた…!こっちに来る…。慣れてる人だけど、こういう時って少し緊張するなあ…。
「誰?」
…え?ルマ君…?私だよ…?リウだよ…?
「いや、おれ、お前のこと知らねえから。そんな目線で見てくるの、やめてくれる?」
え、そ、そんな…。ルマ君、なんで私のこと覚えてないの…?どうして…?何かあったの…?あ、ちょっと待ってよ…!行かないでよ…!ルマ君…!寂しいよ…!怖いよ…!私を一人にしないで…!ああ、意識が…。気分が悪いよぉ…。ああ……。
うーん…。あれ、私、眠ってたの…?記憶がはっきりし…。いや、私、ルマ君に見捨てられたんだっけ…。…。あれ、いろんな動物のぬいぐるみがある。私の前方にたくさんあるなあ…。病室でなら可愛いと思えると思うんだけど、どうしても今じゃ不気味に感じてしまうなあ…。…あれ、ぬいぐるみたちが一斉にこっちを向きだした。あれ、操り人形なの?糸は見えないけど…。そもそも私って視力いいのかな…?いや、今そんなこと考えても仕方ないか。…!こ、こっちに歩いてくる…。や、やめて…。笑顔だけど、それ故の無表情で近づいて来るのが怖いよ…。に、逃げることもままならないよ…。助けて…。あ、あれ…。ぬいぐるみたちの目が赤く光ってるよお…。た、助けてよ、ルマ君…。怖い…。逃げられないよ。何されるか分からないよ…。…う、後ろにもたくさんいる…。気味悪いよ…。私、なんで囲まれてるの…?怖い…。助けテ…。ああ…!
あれ、ぬいぐるみたちがいなくなってる…。なんだったの…?…。あれ、ルマ君が目の前にいる。
「お前、歩けないんだろ?話せないんだろ?それって、人間としての当然の機能を有してないってことだよな。」
え、る、ルマ君…?何を言っているの…?さっきからおかしいよ…。ルマ君、私のことをそんな蔑まないで…。ルマ君に見放されたら、私、どうしたらいいの…?
「なんだよ、見んなよ、人外。」
え、じ、人外…!?ちょっと、酷いよいくらなんでも…!わ、ぬいぐるみがまた出てきた…。目も赤く光ってるし、なにか少しニヤついているし…!
「人外、人外。」
「人外、人外。」
な、なんナの…!?ルマも、ぬいぐるみたちも…。私ヲどうシテそんナニ責めるノ…!私ノ事を何ダト思ってルノ…。酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷い救われない救われない救われない救われたい救われたい孤独恐怖孤独恐怖救済希望救済希望味方無味方無皆敵皆敵皆敵救済救済救済無知友情愛情要求全員敵私無救済故私要求恐怖全部恐怖辛辣娯楽求救済敵助無私皆恐怖全部敵皆不必要助ケテ私ヲ
「お、おい、リウ!起きろ!すごいうなされてたぞ…!」
[…。ひ、る、ルマ君…!]
リウは恐怖で、ルマを手で押し退けた。
「な、なんだよ!早朝来たのに、その仕打ちは!」
リウは、ルマを見つめていた。その瞳は、来る者すべてを拒む目だった。
「なんだよ…。」
ルマは拗ねて、何も言わずに、病室から出ていってしまった。リウは、それを黙って見つめていた。
続く