「コンコンッ!!」
[…!]
突然、病室の扉が強く叩かれた。リウは眠っていたが、とっさに目を覚まし、扉の方を見つめた。
「…入るぞ。」
あの声と共に、ルマが病室へと入ってきた。リウはルマを、無表情で見つめていた。ルマも表情を変えず、ゆっくりとリウに近づいていった。リウは、変わらずじっとルマのことを見つめている。
「…。」
ルマはリウの側に来るまでに時間をとても要した。そして、側についた時、ゆっくりと話しだした。
「…一方的にお前に怒ってごめんな。」
ルマの、リウだけが対象の弁論を、リウは黙ってきいていた。
「きっと、あの魘(うな)されていた夢は、おれとお前で何かあったんじゃないかな。それで…。」
リウはその言葉をきいたとき、少しそっぽを向いた。そして、すぐさまルマの方を真剣な眼差しで見つめ返した。
「何も、あんなに怒る必要はなかった。だから、謝るよ。ごめん。」
リウは、それをきいてもなお、ルマのことを黙って見つめている。ルマは、少し恐怖を感じた。
「…だから、もしお前が許してくれる、というのなら…。」
そういうと、ルマは手を差し出した。
「握手、仲直りしてほしい。」
リウは、手を黙って見つめていた。ルマは、その表情を最後に確認し、目を閉じた。ルマは強く復縁を望んでいる。故に、拒まれたくなかったのかもしれない。
「ぐすっ…。」
「え…?」
突然、少女は涙を流して泣き始めた。そして、リウは上半身の力だけでルマに抱きついた。涙を流しながら、リウはルマにしがみついていた。
「そうか…。」
ルマは察したように、リウの背中を軽く叩いた。リウは、強くルマのことを抱擁(ほうよう)した。リウの涙が、ルマの体をつたっていた。
「お前、許してくれるんだな…。」
リウは上半身の力だけでベッドに戻った。リウの顔は涙で溢れていた。でも、笑顔でもあった。そして、大急ぎで紙に文字を書きたした。
『私、もうルマ君ともどれないと不安になっちゃった。でもよかった。本当にふくえんできて。』
紙は、大量の涙で濡れていた。字もとても汚かった。しかし、ルマにはとても美しい文字に見えた。
「おれもよかったよ。」
ルマの一言に、リウは、無理やり笑顔を作った。しかし、リウの瞳はまだ涙を隠しきれない。
「涙を止める必要はない。泣きたいなら存分に泣いたらいいさ。涙を止めようとする行為に、本心は泣いているぞ。」
ルマは、そっと一言投げ掛けた。リウは安堵のせいか、さっきよりも涙の量が激しくなった。リウのその姿を、ルマは温かい目で見守っていた。
「…お前、歩けるようになりたいんだろ?話せるようになりたいんだろ?」
突然、ルマはリウに問い出した。リウは少し動揺したが、大きく頷いた。
「なら、おれがお前の望みを叶えてやるよ。」
[え…!?]
リウは、目を大きく見開き、ルマのことを見つめた。
「お前の病気、病名とか分からないんだろ?」
ルマの問いに、リウは困惑した表情で、小さく頷いた。
「なら、治療法は簡単だ。出来ることをするだけ。」
リウは、手を合わせてルマを見つめている。
「だから、おれがお前の、その9年間悩み続けていた…かどうかは知らねえけど、治すために全力を尽くしてやる。」
[本当に…?]
ルマは、そう約束した。リウは、ルマを信じて軽く微笑んだ。
to be continued