リウの足は、日に日に良好な傾向へ走っていった。もちろん、物理的な意味ではないが。ルマも、毎日マッサージを続けていた。
「なあ、今どんくらい動く?」
ルマの一言をきき、リウは自分が動かせる限り、足を動かした。
「…すげえ、当初は全然動かなかったのに、変わるもんだな。」
もう少しで、歩けるようになりそうなほどに、リウの足は動くようになっていた。リハビリ等はもちろんこなさないと無理ではあろうが、彼女が歩けるようになる日もそう遠くはない…かもしれない。
『本当にありがとう、ルマ。私がずっとねがっていたことが、本当にかないそうな日が来るなんて正直思ってなかった。』
リウは、少し恥ずかしげに紙を見せた。ルマは、少し照れ隠しをした。しかし、隠せないほどに照れていたのも事実。
「まあ、お礼は治ってからにしてくれ。」
ルマはそうボソッと吐き捨て、マッサージを再開した。リウは、名状しがたい表情ではにかみ、ルマを見つめていた。リウは、何故だか眠たくなってきた。マッサージが心地よいのだろうか。明るくも虚ろな瞳が、少しずつ閉じていった。
「リウ、寝るのか?」
閉じそうな目が再び開いた。そして、もう一度閉じそうになりながら、ルマを見つめていた。
「眠いなら寝ていいんだぞ。」
ルマは、小声で語りかけるように呟いた。リウは、その言葉をきいて安堵した。リウの頭はより枕に深く食い込んだ。そして、目がゆっくりと閉じていった。
「おやすみ、リウ。」
少女の耳は、その言葉を最後に眠った。
あ、あれ…?こ、この空間…。ま、真っ暗で何も見えない…。…あれ、こんな空間、前にも見たような気が…。…あれ、ルマ…?ち、近づいてくる…。も、もしかして…。また、私を…。
「目を覚ませ!」
[…!]
リウは、目を覚ました。ルマが心配そうにリウを見つめていた。
「大丈夫か?また魘(うな)されてたが。」
どうやら、リウが魘されていることに気付いてすぐにルマが起こしたようだ。リウは、怯えた表情だった。ルマを見た瞬間、リウは泣きそうな顔になった。そして、上半身だけでルマに抱きついた。
「そんな怖かったのか…。」
リウの涙が、リウの下半身を伝う。ルマは、なんだかとても悲しい気持ちになった。そして、リウの肩を強く叩いた。
「大丈夫だ、おれがお前を必ず良くしてやるさ。」
ルマにそう言われ、リウは涙を拭いた。そして、泣いているのか笑顔なのか分からない顔でルマに微笑んで見せた。
「…。さて、どうしようか。」
ルマは、ここからのリハビリをどうしようか考えていた。治すためにはどうすればいいか。正直ルマは考えがまとまっていなかった。たとえ足が動くようになれど、リウがそれをものにできなければ意味がない。ルマにとって、それが最大の難所だった。
「そうだ。リウ、支えるから少し立ってみろよ。」
ルマの声をきいて、リウは毛布を体から除外した。そして、上半身を起こした。ルマは、リウの腋窟(えきか;脇の下部分)を支えて、リウを立たせようと考えた。しかし、リウを立っている体制にしても、ルマのサポートがなければリウは簡単に倒れてしまう。
「まあ、はじめはこんなものか。」
ルマは、マッサージの上でこれをしようとも考えた。リウは、倒れた時の衝撃が少し嫌そうだったが、それでもルマのやり方に賛同した。
続く