ルマは、自由奔放に走り回るリウに振り回されていた。しかし、とても嬉しそうな笑顔だった。この展開、望んでいたのはリウだけではなかったはずだ。
「ちょ、どこ行くとか決めてるのか?」
リウは一瞬立ち止まって、あたりを見渡した。そして、先の方に綺麗な花畑があるのを確認した。リウはキラキラした目でルマを見つめ、花畑の方を指指した。
「あ、あそこいく?」
二人は、目的地の方に向かって歩き始めた。ルマは、はじめはリウがこけそうにならないか心配でならなかったが、徐々にその不安は薄れていった。リウの無邪気な眼差しと、健気な様子は、ルマを逆に安心させるまでに至るようだ。リウは、この時間がずっと続いてほしいと願っていた。この前のように。
「あ、そろそろか。」
程無くして、二人は花畑についた。とても美しい景色だった。リウは心奪われ、唖然として景色を見つめていた。
「いい景色だな。」
リウは、大きく頷いた。リウは興奮して、突然走り出した。
「あ、危ないぞ!」
といった時は既に遅く、リウは転んでしまった。
「だ、大丈夫か?」
ルマは心配そうに、倒れているリウの方に近づいた。リウは、花に囲まれて笑っていた。倒れながら、自身を覗きこむルマを見て、はにかんで両手で手をふった。そして、片方の手で自身の隣を指した。
「なんだ、近くで寝ろってことか?」
リウは笑顔で首を縦にふった。ルマは戸惑いつつも、リウの指す場に寝転がった。悪くない寝心地だった。居心地がいいかは不明だが。
「なんか、照れ臭いな…。」
こういう経験がないのか、ルマはいつにも増して緊張していた。リウはうつらうつらしていた。どうやらリウは慣れているようだ。いや、慣れているとしてもどうやって…。そもそも言い方に語弊があるか。
「いいね、この時間。」
ルマは、リウに笑顔で言った。リウも、笑顔で頷いた。ルマの方も、こんな時間を望んでいたのか。二人は、花に囲まれながら寝ていた。しかし、二人とも、目は直線ではなく、扇の弧のような形だった。
[あ…。]
リウは、花摘みを始めた。とある花に衝動を駆られたようだ。楽しそうでもあり一生懸命でもある彼女の姿に、ルマはとても和ませられた。といっても、年齢は変わらない。とある意味合いでは、ルマの方が上なのかもしれないが。そうこうしているうちに、リウがルマの元へ歩み寄った。そして、花を持った手をルマの方へのばした。満面の笑みで。
「え、これくれるの?」
リウが差し出したのは、マリーゴールドだった。とても美しく咲いている。ルマは、その花に力を感じた。
「ありがとう、リウ。」
ルマは、快く花を受けとった。そんな彼をみて、リウも嬉しそうだった。突如、リウは立ち上がった。そして、走り始めた。
「お、お前、危ないぞ!」
という忠告をまたもきかず、リウは笑顔でルマの遠くへ離れていった。そして、リウは満面の笑みで、ルマに片手で大きく手を振った。転けはしなかった。
「ま、待てよ。」
ルマも立ち上がり、リウを追いかけた。リウは、それを確認して、ルマから逃げるように走り始めた。しかし、やはり走り慣れ度が違い、ルマはあっという間に追い付いた。
「タッチ!」
ルマは、リウをタッチした。リウは走るのをやめ、苦い笑顔でルマのことを見つめた。そして、どこから出したのか、片手に花を持っており、ルマにさしだした。
「ま、また花か…?」
リウは、少しくぐもった顔でルマを見つめ返した。気にいられなかったということを恐れた所以か。しかし、ルマは思わぬ発言をした。
「あ、これ…。ミモザじゃん!」
そう、リウが見つけた花は、ミモザだった。リウは、名前を知って驚いた顔をしていた。
「ありがとな、リウ。大切にするよ。」
その言葉をきいて、リウはとても嬉しそうだった。
「よし、そろそろいくか。」
ルマが発した一言に、リウも賛同した。二人は花を持って、花畑を後にした。
to be continued