「リウ…!リウなのか…!?リウなんだな…!?」
「…!うん…!」
「よかった…!本当によかった…!もう二度と会えないと思ってた…!」
二人は、お互いに抱きしめあった。リウもルマも、涙が溢れ出ていた。お互いの涙が、お互いの体を伝った。そして、なによりもその光景を驚いたのは、ルマの両親だった。
「リウちゃん、本当にありがとう…。」
ルマの母は、リウにそう呟いた。父も、感謝してもしきれていない様子だった。
「ていうかお前…。」
ルマは、リウにボソッと話した。
「お前、なんで声出てるんだ…?」
ルマはたしかにきいた。小さくて細い、美しい声を。そして、それの発信源はたしかにリウだった。
「分からない…。でも、ルマのことを本当に想った時、声が出たんだ。」
この声も、さっきの声と同様だった。
「もしかしたら…。奇跡っていうものなのかも知れないわね。」
ルマの母は、個人的な解答を提示した。正誤は不明だが、きっと正のはずだ。
「リウちゃん、どうしても不可解なことがあるんだが、きいてくれるかい。」
突然、父がリウに話した。リウは、軽く頷いた。目線は重くも。
「ルマは…。実は、前向性健忘なんだ。」
「え…。」
「前向性健忘っていうのは…。記憶障害のようなものだ。1日寝れば、その1日の記憶はすべてリセットされる。」
それをきいて、リウは不可解な表情を浮かべた。無理もないだろう。矛盾が生じているのだから。
「そう…。でも、何故かルマは、リウちゃんのことだけは忘れることはなかったみたいだ。」
パンの名称を知らなかったり、キャンディをはじめてのように食べたり、リウとの出来事はすぐ思い出したり…。考えてみれば、説明がつくものだった。しかし、彼の記憶から、リウという少女のデータだけは、消去されなかったのだ。
「もしかしたら、ルマは…。」
母は何か言おうとしたが、やめた。
「リウ、本当によかった。お前がいなかったら、おれは助かっていなかったかも知れない。お前は、おれの恩人だよ。」
ルマに感謝され、リウはとても嬉しそうな表情だった。
「えへへ、よかった…。」
突然、ルマのポケットから何か落ちた。
「あ…。」
それは、前にリウが拾ったミモザの花だった。
「ミモザ…かしら。」
母が突然話した。
「え、母さん知ってるの?」
ルマは尋ねる。軽い気持ちで尋ねたことだが、帰ってくる解答は重かった。
「ミモザってね、友情っていう花言葉があるの。」
「え、そうなの?」
「ええ。でもね、もう一つあるの。それは…。」
「そういえば、リウちゃんって家族とかいるのかな。」
突然、話を遮るように父がリウに尋ねた。
「い、いえ…。家族はいません。というか知りません…。」
リウは答えた。そして、これまた衝撃の返信がきた。
「なら、うちにくるかい?養子として。」
リウは、その発言に混乱しかけた。
「え、本当にいいんですか…!?」
「ああ、いいよな、母さん。」
「ま、まあ、リウちゃんがいいなら…。」
その発言をきいて、リウは満面の笑みを浮かべた。しかし、もう一人、満面の笑みを浮かべている人物がいた。
「リウと…。暮らせるのか…!?本当なのか…!?」
リウとルマは、二人で手を握りあった。リウは、自身のクリスマスの時の願いがこんな形で実現するとは、夢にも思っていなかった。
「やったね、ルマ…!」
「ああ、リウ…!」
二人は互いに喜びあった。二人は、これからの人生に、大いなる期待を寄せたのだった。
「そういえば…。」
ルマが、思い出したかのように発した。
「母さん、ミモザの、もう一つの花言葉って…?」
母は、待ってましたと言わんばかりに微笑んだ。
「ああ、それはね…。」
「秘密の恋」
~心言少女~ termination