「はぁ…はぁ…はぁ…。」
リウは、必死に走っていた。感情すらあるかどうか怪しいが、ただただ必死に走っていた。ルマも引きずられていた。ただ疲れているだけで、意識はあるのだが、ただ流れに身を任せていた。
「あ…!」
リウは、とある教室を見つけた。ルマのポケットから鍵の束を無理矢理とりだ
「さなくてもおれに断りいれたらいいだろ!」
突然、ルマが衝動的にツッコんだ。リウは、少し驚いたが、はにかんで見せた。
「と、とりあえず入ろう!」
リウは、ルマから鍵の束を受け取り、あらかた鍵をさしこんでいった。そして、しばらくして、扉が開いた。リウは、ルマと一緒に、教室へと入った。
「…こんなに、机と椅子が並んでるんだね。」
リウの発言。我々現代日本人からしたら、教室の風景は、とても馴染みが深いものだろう。しかし、この子供たちからしたら、学校でさえ、身近なものではないのだ。
「…特に、これといった手がかりはないかも。」
二人は、呼吸を落ち着かせながら、教室の中を歩き回っていた。
「…あ、おいリウ、見ろよ。」
ルマは、とある机を指さした。その机には、一冊の教科書と、ノートがおいてあった。二人は、それらについて、調べることにした。
「…な、なにこれ。」
教科書には、非常に複雑な、数学の問題が一問、そして、ノートには、その解法と論法が、途中まで記されていた。
「…意味がわかんねえ。」
ルマは、一瞬で混乱した。リウも同様だった。
「…ねえ、ルマ。これ、持っていかない?なにか手がかりになるかも。」
ルマはそれをきくと、しばらくの沈黙の後、小さく頷き、ノートと教科書を手にとった。
「…よし、一旦この教室は出るか。」
二人は、教室を後にしようとした。
「ガチャガチャ。」
「…!ま、またか…!?」
しかし、教室の扉は閉ざされていた。
「な、なんで…!?」
リウとルマは、一気に心臓の鼓動が強くなった。同時に、リウは、あることを思い出した。
「ねえ、ルマ。ここって、何年何組?」
「え…?」
ルマは、あたりを見渡した。
「…3年1組。…あれ、ここって…。」
どうやら、ルマも気づいたようだ。…そう、3年1組は、七不思議の出没場所として記されていたところの一つなのだ。
「え、ということは…。」
ルマは、一気に、血の気が引くのを感じた。リウも、心臓が、より強く鳴り出した。すると…。
「分からない…。」
「…!」
突然、後ろから、男の声がした。リウとルマは、反射的に後ろを見た。すると、さっき、ノートと教科書がおいてあった机の椅子に、一人の男が座っていた。頭を抱えている。見た目からして、この学校の生徒と思わしき者だった。
「…リウ、気をつけろ。おそらく、こいつも、今までの奴等と同じように…。」
ルマは、リウに忠告をしたが、途中で、止めてしまった。男は、嘆いている。
「…分からない。分からないよ…!」
突然、男は、リウとルマの方を見た。二人は、身構えた。経験上、こいつも例外ではないはずだ。
「どうして…。どうして…!なんで…!」
「シャキンッ!」
「…!」
男は、ポケットから、ナイフを取り出した。
「どうして解けないんだアアアア!」
叫びながら、リウとルマの方に、走ってきた。
「ま、まずい、リウ、逃げろ!」
リウは、扉を開けようとするが、開かない。鍵をさしこんだが、それでもなお開かない。
「ァアァアアァアアァア!」
男は、二人を無我夢中で追いかける。二人は、扉をあける余裕すら得られず、教室中を逃げ回った。
「…まずい、このままじゃ、いずれあいつに捕まるのも時間の問題だな…。」
リウは、そんな中、ある提案をした。
「…ルマ、逃げ回っていてくれる?その間に、私が…。」
「アァアアアアァァァアアァアァ!」
そんな二人の会話を阻止するように、男は、二人を追う。ルマは、リウが言いたいことを理解し、囮となった。
「ほら、こっちこいよ!」
ルマは、ひたすら逃げ回っている。その間、リウは、なんとか扉を開けようと奮闘した。
「シャキンッ!」
「…いってえ…。」
しかし、ナイフが、ルマの右肩を、僅かに裂いた。血が、右肩から出てくるのを、ルマは実感した。そして、とある希望の一声が、響いた。
「…よし、ルマ、開いたよ!」
リウは、無理矢理こじ開け、ルマを呼んだ。ルマは、急いで扉の方へと走った。リウは、ルマをひっぱり、教室から飛び出して、出たと同時に、急いで扉を閉めた。男は、出てこなかった。
続く