ルマは、数学の問題の解法を導こうと思ったが、どうしてもリウのことが心配で、集中できない。
「…。」
リウに、万が一のことがあったら、ただじゃ済まされない。いや、済まされないというより、ルマ本人が済ませられないというべきか。とりあえず、リウに貸していた服を回収した。微かないい香りと、温もりが残っている。幸い、リウがここを離れて、そこまで時間は経っていなさそうだ。そもそも、幸いという表現が正しいかも、怪しいが。
「探しに…行った方がいいのかな。」
ルマ自身、ナイフで怪我を負わされているため、万全のコンディションとは言えない。これで、自分の身も危なくなったら、それこそ世話ない。
「…もしかしたら、帰ってくるかもしれないし…。」
なんて淡い期待でも寄せてみるが、ルマの性格上、ほってなどおけないだろう。けれど、今の状態じゃ、図書室を出るのは危険だ。ルマは、最適な方法を考えた。
「…きっと、リウはそんな簡単に、死なないよな。」
ルマは、リウの生存に賭けるようだ。何処にいるかも不明瞭である以上、むやみやたらに探すのも、危険であろう。ルマは、図書室で、リウの生還を待つことにした。
「…。」
それにしても、ルマも実感しているようだ。リウがいないと、こうにも孤独を感じると。失って、はじめて大切さに気付いているようだ。まだ、確定しているわけじゃないが。
ーーーーーー
「ねえ、ルマ。今日は何して遊ぶ?積み木?お絵描き?」
「はは、お前のやりたいことに従うよ。」
「じゃあ、お絵描きしようよ。」
「ああ、いいよ。」
ーーーー
「…ああ…。」
ルマの記憶が、ルマにさらに追い討ちをかける。ルマは、机にうずくまった。
「…やっぱり、行った方がいいかも知れない…。いや、行かないと。もしものことがあったら、リウが…!」
ルマは、急遽作成を変更した。まだ、肩の痛みが残っているが、この際、そんなことを気にしている余裕はなかった。ルマにとっては、リウの命の方が大切なのかもしれない。いや、おそらくそうだ。
「リウは、一体何処に…。」
ルマは、七不思議が出没する場所以外の教室を、重点的に探そうと考えた。リウのことだから、もし何か捜索をしているなら、極力危険性の低いところに行くはずだ。
「とりあえず、粗方探しにいこう。」
ルマは、ゆっくりと図書室を出ていった。肩を抑える必要はなさそうだが、まだ少し痛そうだ。改めて、独りということが身に染みた。リウ同様、彼も、パートナーがいないとしんどい体質へと化したようだ。いや、もともと化しているか。
「さっきまで、リウは一人でここ歩いてたのかよ…。女子なのに、よく出来るな…。」
ルマは、そんなことを考えながら、独りで歩いていた。あたりを見渡しながら、ゆっくりと歩いていく。何が出るかも分からない空間で、恐怖に怯えながら歩く恐怖は、想像にかたくないだろう。
「…うう、ほんと、なんでこんなとこ来ちゃったんだろ。」
後悔しても、時既に遅し。自分たちで巻いた火種は自分たちで刈らねばならない。子供にとっては、過酷な運命だ。けれど、紛れもない現実である。
「悩んでても仕方ない、行こう。」
ルマは、今一度勇気を出し、暗闇の中に歩いていった。
続く