どこまで話したっけ…。…ああ、そうだ。ペトラが死んだ日、休校になったから、その日はすぐに帰ったんだ。そして、家についてすぐ、ポストを確認したんだ。なにか、胸騒ぎがしてね。まあ、別になにも入ってなかったんだけど。
「え、遺書なかったの?」
「あれ、遺書入ってるパターンじゃねえの?」
休みになったからといって、なにも嬉しくない。親友を失った辛さと、家でも落ち着けない境遇を考えたら、まあ当然だよね。別に、この期間になにか特別な出来事があったわけでもないし。
学校が再開してから、私はすごい陰口を叩かれるようになってしまったんだ。
「おい、あいつペトラの友達だったエマじゃないの?」
「うわ、ほんとだ。気味悪いし、近づかないでいようぜ。」
休み時間なんてほんと苦痛だった。椅子に座って、なるべく何も考えないようにしてた。後ろからの声が、嫌に耳についた。何度も何度も。私は次第に、他者との関わりを遮断するようになっていった。学校にいる人のほとんどを、まともに信じられなくなってしまったんだ。あわれな話だよね。まるで、私だけ生きている世界が違うように、配色でもされてるみたい。いつしか、笑うこともなくなっていたな。
そんな私の、少しだけ気晴らしになったのが、散歩。私の住んでいる街は、とても閑静な街なんだ。昭和レトロとでも言ったらいいのかな。私は、そういう雰囲気が好きだったんだ。そして、ある日の散歩のことを、私は鮮明に覚えているんだ。
普段、私は宛もなく散歩をするんだけど、その日は、ルートを定めたんだ。ペトラの家に行ってみたくなってね。ちっちゃい頃は、ペトラの家で遊んだりもしたんだよ。ペトラの家の道中に、公園があるんだけどね、よくその公園で、ペトラと二人で遊んだな。そんなことを考えながら、親友の済む住宅街へと足を運んだんだ。
道中の公園には、どうしても立ち寄りたくなって、私は寄道していったな。夕焼け空だったから、少し時間が心配になって、時計を見たなぁ。たしか16時41分だった。…なんでこんな正確に覚えてんだろ。それで、時間的には問題ないと思えたんだよね。公園で無邪気に遊んでいる子供たちもいたな。…いい意味でも悪い意味でも、いろいろと考えさせてくれたよ。
閑静な住宅街についてから、私はゆっくりそこを歩いた。一軒家が林立しているような住宅街なんだ。そして、左から4軒目、右から3件目の家の前で、私は足を止めた。私の脳内ナビゲートは、そこで終了したからね。
「あ、エマちゃん!いらっしゃーい!」
「…おじゃまします。」
玄関を見るや否や、こんな会話が脳裏を過ったんだ。今でも、あの子の声の脳内再生は容易だからね。…え、家では何して遊んだのかって?レースゲームとかアクションゲーム。
しばらく、ペトラの家を見ながら、私は感傷に浸っていたんだ。どうしたら今もペトラと話せたのか、私がどうするべきだったのか。…今となって考えても、なんの意味もないのにね。しばらく家の前に立っていたけど、そのうち、帰ろうかという気になってきた。静かな街だから、人も誰もほとんどいないからね。ある程度ペトラの家を見てから、また少しずつ歩いた。最後の家の前に到着してから、私は引き返そうと決めた。
「帰ろう。」
しかし、そこから、あることが起きたんだ。
続く