エマは、まじまじと2人を見つめる。底無しの黒目を見させられているリウは果たして何を思うか、定かではない。深淵に近づくために、リウはその目で眼光を灯しに向かった。
「…でも、どうしたの?」
「…まあ、どういおうと、七不思議を封印しないとだめだよね。君たちには帰る場所があるわけだし。」
2人は小さく頷いて見せた。拭い切れない違和感を覚えながら、体の反射的動作に身を委ねて。
「よし、ルマ。頑張って会話人形退治してきて。」
「んな無茶な!?」
当たり前のように無理難題を言うエマに、ルマは当たり前の反応を見せる。しかしエマのことだ。助け舟を出すことには造作無い。
「大丈夫。とにかく精神を強く持つこと。仲間に誘われても、甘い言葉をかけられても、絶対反応しちゃだめ。それだけ。」
「簡単に言ってくれるなぁ…。…家庭科室だっけ?」ルマは腹を括ることに決めたようだ。そんなルマを見て、エマは安堵している。まだ起承転結の起の部分しか確定していないにも関わらず。
「…悪いけど、ルマ、一人で行ってくれるかな。」
「ええ!?」
ルマは、ここぞとばかりに無理難題を多数出すエマに泣きそうな顔を見せる。そんなルマを見て、リウはどういう表情を作るべきなのか非常に戸惑った。
「…万一君が操られたら、すぐ私たちも動くから。…ね?」
ね?じゃねえよ!というような顔を作るルマに、なだめるような顔を見せるエマ。
「分かったよ…。行ってきたらいいんだろ…。」
そういうルマに、リウは右肩、エマは左肩を軽く叩いて励ました。ミントと森林の絡む香りに、ルマの気分は少し落ち着きを取り戻した。
「じゃ…。」
ルマはそういい、図書室の扉を閉めていった。
「…ルマ、大丈夫かな。」
リウが、心細そうな声でそう呟く。
「…。」
「うう…怖いよ…。」
あたりをキョロキョロしながら、ルマがゆっくりと一歩ずつ踏み出す。リウの声も匂いもない。あるのは不気味で今にも何か出てきそうな廃屋の雰囲気のみ。いっそのこと図書室に戻ってリウの同行を願う手段だってある。しかし、ルマは引き返すような真似には気が引けた。
「さすがにかっこ悪いよな…。」
男の子である所以だろう。ルマは、前のみ向いていく。そして、いち早く戦果を得ようとした。それが大きな動機だろう。
「…。お。」
永遠とも思われる永い時間の後、ルマは家庭科室の前についた。
「…いっちょいくか。」
続く