(続きです。前編を読んでから来てくださいな♪)
入ってきたのは、黒髪に赤いハチマキを巻き、白い服に身を包んだ
眼鏡をかけた男性だった。男性は、その右手に大きなハンマーを
持っており、それを肩に担ぐと
「ここに、ギブっていう人はいるかー?」
「えーと、僕がギブです」
椅子から降りて、男の前まで歩いていく。
「おぉー!ようやく会えた!とりあいず、まずは自己紹介させてくれ」
と言うと、左手の親指を自分に向かって立てながら、
「俺っちは魔法建築工房”OZ”で現場監督をしてるロマンってもんだ!」
と快活に挨拶と自己紹介をし、左手でギブに握手を求める。
「どうもです」
ギブもその握手に応じた。それを終えると、マルチナとアレックが
やってきて、
「”魔法建築工房”さんが、私たちの所へどんなご用事かしら?」
ちょっと不審そうなおも持ちでロマンを見るマルチナ。
「なんでぇーその顔は。俺っちはあんたたちが募集に出した
”突入部隊”への志願者だせぇ?」
「え!確かに数人ですが・・・既に決めましたが、まだ連絡を出しては・・・!」
そうギブが驚いた表情で言うと、ロマンは左手の人差し指を立てて
「ちっちっ。どこのどんな場所に突入するかは事前に知っているんだ。
俺っちは魔法建築工房としての自分自身とある”作戦”を早めに一緒に
持ってきたんだせぇ」
「作戦?・・・ギブ君、そういえば”冒険者で突入部隊”を作るのは
決まっていたけど、その”突入する作戦”はどうなっているの?」
マルチナがキブに聞いてくる。
「作戦のいくつかは、色んな人に掛け合って用意してもらう予定に
なってるけど、実際に”突入してからの作戦”はまだ全然決まってなかったね」
「そうだろうー!そうだろうー!で・・・相手の城は海ん中にあるんだろ?」
「え、まぁーそう言う話は事前に募集内容にのせておきましたが・・・」
ギブはロマンのテンションに若干気圧される。
「人がそもそも行くのが大変な場所に、少人数で行って、相手んトコの
戦力がどれくらいか確かでは無い中に短い期間で勝てるのか?」
ロマンは身ぶり手振りを加えながら、ガンガン話していく。
そんな中、ギブは話に耳を傾けつつ、
(そうだ・・・それは想定していなかった。アズを乗り込んで助けてくる位
しか考えていなかった。仮にも対等かそれ以上にソウラと戦える
相手がいる要塞。トーラの情報で不明瞭ながらも兵力がそれなりに
大きい事も忘れちゃダメだ)
ギブが思考する中、ロマンの話はまだ続いていた。
「さらに言うと・・・戦力を維持や増強するにしても、行くこと難しいなら
当然、物資の運び入れも追加も難しい!・・・・」
「で、でも戦力や物資の問題は船とかで往復する事で解決とか・・・?」
「いや、お嬢様。敵の本拠地は海中の奥底。準備はありますが、
どうかなるかわかりかねますぞ」
マルチナとアレックが話し合っていると
「そこでだ!!ここで、俺っちの”作戦”さ!」
ロマンが声を張り上げる。ギブもマルチナとアレックも
驚いて、振り向く。
「海ん中にある敵の城ん中に・・・物資の保管や休息場などの施設を
含んだ”突入部隊の前線基地”をブッ建ってるっていうのはどうだ!?」
「「「前線基地を建てる!?」」」
「そう!魔法建築工房のOZの技術力をもってすれば不可能では
ないはずだぜぇ?・・・ついでに”旅の扉”も同時に設営するつもりだ」
ギブはロマンの話を聞いて、少し考えたあと表情が明るくなり、
「ロマンさん!その作戦、頂いてもいいでしょうか?」
「おうおう、返事が早くて、良いぜぇ!このために持ってきたんだ!」
「ギブ君。それでいいの?」
「うん。どのみち、急がなきゃいけないけど、強引に
推し進めても、上手くいかない。ならじっくり腰を据えて、
地道に要塞の攻略をやって行くのが最善だと思ったんだ。」
「ワシもその方が良いと感じてはおりましたぞ。」
「本当はソウラの思いや今のアズの状況を考えると、
やっぱり急いで行くべきだけどね。」
「んじゃあー決まりだぁー!俺っちは早速、前線基地の計画
とその準備を進めるぜぇ!」
「はい、お願いします!」
ギブは嬉しそうに話し、再び机に戻る。それに合わせて
マルチナやアレックも戻り、シートを手に取った。
「それとロマンさんの事は女王様や作戦に参加する皆様にも
伝えておきますね」
と話すと、ロマンは腕をあげて「おう!」と返し、部屋を
後にしていった。
(これで、一つ心配事が減った。後はここから腕利きの
冒険者を探すだけだね・・・!)
ギブは心の中で思うと、再びシートを手に取り、
選定作業へと戻っていった。
つづく