(注意:中編からの続きです)
「マイカさん、ここやってくるヤツがいる」
マージンが声をかける。マイカは手にとっていた本を
鞄にしまうと、二人のもとへいく。
ガシャンガシャンと、何か金属がすれるような
音が徐々に近づいてくる。
「静かに。相手に気づかれる。」
フツキが小さな声で言うと、そのまま三人で動いて
近くの棚の裏側に隠れる。
そしてついに音の主がやってくる。
「まさか、あの壁の中に入れるとは思わなかったな」
「あぁーおかげで俺達が骨を折る必要がなかったぜ」
と、徐々に部屋の明るさで姿が現れる。そこに
いたのは、暗めの青い色をしたよろいのきし風の
魔物が二体が大きな反った剣を携えて、やってきた。
「ここに先に入った奴らはどこいるんだ?」
「しらん、もう出ちまったんじゃないのか?」
魔物達がその場で話しはじめてしまう。
マージンとフツキは見えないように覗いた後に
「くそう、あそこで話し始めてしまった」
「どうする?荷物は見えない所には置いたが
とらないと、何も出来ない」
マイカが話し合う二人とは別の方向から、覗こうとした時に
小石を蹴ってしまい、コロコロと大部屋に鳴り響いてしまう。
「誰だ!」
魔物が音のする方に向かって怒鳴る。
「不味い…」
「マイカさん、何してるんですか」
「す、すいません」
三人がたじろいでいると、魔物の一体が剣を抜き
周りの棚をなぎ倒していく。もう一体も後をついていく。
「まさか、先に入った連中か?」
「だとしても、俺たちの存在を知った以上、生かして
返すわけにはいかないな」
マージンは額から汗を一筋たらし、
「これはヤバいな…」
「見つかるのは、時間の問題だ。俺が行く…!」
フツキが飛び出そうとした時
「待ってください!ここは私が時間を稼ぎます。
お二人はその間に何か策を…!」
マイカは押しのけるように杖を構えて、飛び出して
行ってしまう。
「待て!マイカさん!」
「ダメだ、聞いてない…!」
走り去ったマイカを見つめるのをやめ、マフラーに頭を
埋めるように座り込んでマージンは思考に入る。
その様子を見ながら、フツキは隠れながら状況を確認する。
すると
「よし、これなら!」
マージンはマイカと違う方向に動き、フツキを
呼ぶように手招きし
「相棒!まずは荷物だ!荷物を拾うぞ!」
マージンが言うと、走り出す
「何か思いついたんだな!」
フツキも追う。
☆
一方。駆け出したマイカは、魔物二体の前に立っていた。
「なんだぁー?ガキ一人か」
「子ども扱いしないで下さい!これでも私は立派な魔法使いです!」
と言う。魔物たちは、見下したように大笑いする。
「ガハハハ!魔法使いか!」
「じゃあ、オメェーは冒険者としては”ひよっこ”だ」
「どういう事ですか?」
「魔法使いが、一人で来るのは…!」
「”自殺行為”なんだよっ!!」
魔物は自身の大きな剣をマイカに振り下ろす。が
「二重・身体加速呪文(ツヴァイファハ・ピオラ)」
マイカの体が白く光る。そして剣が地面に着くよりも
早く移動し、振り下ろして来た相手に対して
「呪文加速・三重詠唱(スペルブースト・ドライファハ グザン)!」
マイカが唱えると、周りに白い光と黄色い光の2つが浮遊し
杖の先に炎の火球が瞬く間に出来上がり、
「第一詠唱・中級火球呪文(エアストグザン・メラミ)!」
「ぐぉぉ!」
魔物一体の顔面に、火球を叩きつける。爆炎とともによろけて
姿勢を崩す。
「てめぇ!」
自身の仲間がやられたのを見て、胴を狙った斬撃でマイカを
斬り飛ばそうとするが、最初の呪文で加速されている状態の
マイカには当たらず、攻撃を当てた相手を土台に
飛び上がり、剣は空を斬る。
「第二詠唱・中位氷結呪文(ツヴァイトグザン・ヒャダイン)!」
自分の左にある白い光に手を掲げると、そこにヒャドよりもふた回り
以上も”大きい氷の矢”が作り出され、槍投げの要領で、攻撃してきた
剣を持つ手に向かって投げつける。
ピシャーンという音と共に、氷の矢が手に突き刺さると
凍てつかせていく。
「な…何ぃ!腕が凍りついて…!」
マイカはそのまま、魔物たちの背後に立つと黄色い光に杖を突きつけた後に
クルクルと光とともに踊らせるように回し、光を飛ばす。すると、光が分裂し
複数の光の玉が魔物たちを囲った。
「第三詠唱・中級爆発呪文(ドリットグザン・イオラ)!!」
というのと、同時に爆発を引き起こす。
「「ぐああああっ!!」」
魔物たちは、うめき声を上げながら吹き飛んだ。
(第10-2回へ続きます)