ここは岳都ガタラ。昼下がりの時間。
つい先日の事。ヴェリナード王国でとある極秘作戦の準備をする
アスカから手紙が届いた。以前も、冒険者を襲うある集団の動向を
追ってほしいと書かれた手紙も届いた。
でも今回は違った。ここ数日ほど、近況報告がマイカからだけ
途絶えしまったと手紙には書かれていた。自分ももちろんそれには
気がついていた。だけどマイカの事だ。いつも様に調査や
気に入った本の読破に熱中していると思っていたけど、
別の日の手紙で、あの子は太古の危険な魔導書の確保と
その処分に出ると話していた。連絡がない今、さすがにもうこれは、
何かあったとしか思えない。そのため、あの子が拠点として使っていた
ここへやってきた。
駅から出て、しばらく歩いた後。人の多い場所の定番、酒場に向かった。
そして酒場の扉を開くと、中から昼から酒を豪勢に飲む人や静かに飲む人
様々な人いた。カウンターの前までいき、そこのバーテンダーに
「すまない、ちょっと聞きたい事があるのだが」
と話しかけると、バーテンダーはあたしの方を向き
「いらっしゃい、聞きたい事って何かい?」
「先日ここに、白いローブを着たエルフの女の子が訪れたと
思うが、知らないか?」
「白いローブ…あー見たよ。キミのちょうど斜め右後ろかな、そこの
テーブルに居た男性二人と話し込んだ後、三人で一緒に出たよ」
バーテンダーに示された場所を見つつ、話を聞く。
「まぁーこっちはこれ以上は知らないかな、別の話を聞きたいなら
この酒場を出て右手の階段降りた所に、いつもうわさ話をしている
おばちゃんたちがいるから、そっちに行くといいよ」
「そうか、感謝する。」
そうして、酒場を後にしてバーテンダーに言われた通りに
歩くと徐々に、ウキウキワイワイと快活に話す声が聞こえてきた
そこには、この都に住む奥様と思われる二人のドワーフが居た。
「それでーこの前、こんな事ありまして、聞いてくださるかしら
奥様ー」
「なんですかー聞きますから早く話して下さいまし」
と、とても間に入れる雰囲気ではない感じだったが
相手に聞こえるように、大きな咳ばらいをするふりをする。
それを聞いた奥様たちは、不機嫌そうな顔をするが
反応してくれたので、要件を済ませる事にしよう。
「突然、邪魔して申し訳ない、ちょっと聞きたい事あるのだが」
とあたしはバーテンダーに話した事と同じ話をした。
「白いローブのエルフの女の子…」
二人はアゴに手をあて、思い出すように頭を上げる。
「あっ!奥様、もしかしたらあの子じゃありませんこと!?」
「そうですわ!」
奥様二人は自分に、どこかに男性二人を引き連れて出かけた後
帰ってきて、マイカが一人で展望台に上った事。その後、展望台から
魔法使い風の老人とオーガの男性に抱えられて、駅の方に連れて
行かれた事を話してくれた。
「老人とオーガ…。嫌な予感がする」
奥様二人にお礼を言うと、すぐに駅に戻った。そして列車の前で
受付をする駅員に
「すまない、ちょっと聞きたいのだが」
「なんでしょうか?」
「数日ほど前に、老人とオーガ…あと白いローブを着たエルフの女の子が
この駅からどこかに言ったと思うが、何か知らないか?」
「申し訳ありません。お客様の個人情報をみだりに話すのは…」
くぅーこういう時に役所系の人は、仕方ない”アレ”を出すしかないか。
「実はあたしは、こういう者だ。」
ヴェリナード軍に所属している事を示す紋章付きの手帳をこっそり出す
「!…ヴェリ!むごごご!」
「こら…大声で言うな!…で、どこにいったんだ?」
駅員の口を押さえた手を外す。
「はぁはぁ…そ、そのお客様なら…オーグリード大陸、グレン城下町
までのチケットを買われましたよ」
「そうか、情報感謝する。ついでにあたしもチケットを買おう。
グレン城下町までのを頼む」
そうして、電車に乗り込んだ。しかしこれ以上は足取りを掴める気が
しなかった。読みが間違っていなければ、今追ってる相手は
アスカから依頼されて調べ上げた冒険者を襲う組織”エゴート団”だ。
王国への街道で待ち構える突入部隊のメンバーもいる
冒険者を襲う奴らを捕まえて聞き出したその名前と…そして目的。
奴らは、いま離宮で力を蓄えている
(太陰の一族の元へ行く突入部隊の妨害)する事で恩売りをしている。
世界を脅かすかもしれない者たちに与する理由は
本当に分からない。だけど、あたしの家族をさらった以上
許すわけにはいかない。
しかしどう探そう…裏で暗躍しているのなら、裏事情にも詳しい…
そうだ!噂でしか聞いた事がないけど、世界各地に拠点を持ち、
その場所を転々とするが、何でもやる傭兵集団「雷神会」!
その拠点の一つが、確かグレンの近くに…。