グレン東のとある岩場にある雷神会の拠点。
平和そうなその場所に襲撃者が現れた。
「その必要はないわよ」
と、ドワーフの男がボコボコの状態で投げ込まれた。
穴の入り口には、オレンジの服に身を包んだ
オーガの女性、リルカだった。
「てめぇーよくも仲間を!」
ウェディの男が、リルカに飛びかかる。
「待った!…話を聞いてくれ!」
話すが、全く聞く耳を持たず、剣による攻撃を仕掛ける。
説得しながら、回避し続けるが、煮えを切らせて、
リルカは右手を握り、男の腹に強い一撃を見舞う。
ガハッと、男は腹を押さえてよろけ倒れる。
「もぅ、話を聞いてって言って…」
話しかけた時、リルカの目が鋭くなり、とっさに
身を反らし、軸をずらすように回避した。
それと同時に、拳が見舞われた。それは石壁に
突き刺さった。
「雷神会の頭領ってもうちょっと冷静な人物だと
思っていたよ?」
「あぁ、冷静さ。お嬢さんみたいな強者に会えて
嬉しくってな、ついこの拳が動いちまったんだ」
拳を見舞ったのは、ライオウだった。
それを見たジンライは頭をかいて、困った様な顔で
「あぁ〜ダンナの悪いクセがでちまったなぁ」
部下である男たちも、自身の頭領の事を把握して
いるのか、突然周りの物を片付けだす。
ジンライも、ライカの近くに行き
「お嬢、ちょっと後ろに下がって」
「お兄ちゃん…。ライオウは何するの?あのお姉さん何したの?」
「何もしてないさ…ただ、”赤い飛沫”が飛びそうな状況でさぁ」
石壁に打ち込んだ自身の腕を引き抜くと
手を振り、ついた瓦礫を取り払うと、笑みを浮かべ
「あの〜一応言っておきますけど、あたし、”レディ”よ?」
「分かってるさ、だがお前からは俺と似た感覚がする。」
ライオウは拳を構え直した。
「ただ無心に、戦いを求めて彷徨い歩く。お前…な」
話した所で、目にも止まらない速さでライオウの腹に
リルカの拳が刺さる。
「あんたに何が分かんのよ?知ったような口で、ベラベラと」
と言った時、感触で気づく。今の自分の一撃がダメージにも
なっていない事を・・・
「良い一撃だ。これは、俺の部下が簡単にヤラれちまうのも
頷ける。だが…」
リルカは打ち込んだ拳を引き、間合いを取ろうとしたが
既にライオウはリルカの左肩を掴んでおり、力強く引き寄せ
同時に右手でリルカがやったのと同じ様に腹に一撃打ち込む。
が、ライオウの放つその一撃は並大抵のものじゃなく、体から
魂そのものが剥がされるような想像絶する痛みが
リルカの体を駆け巡る。
「が…は…う…ぐ」
と、痛がる仕草も見せず声を漏らした後、そのままライオウに
寄りかかるように気絶してしまった。そして、少しため息をつき
「あーあ、やりすぎちまった」
「頭領!」「大丈夫ですか!?」
と戦いが終わったのを確認して部下たちがよってきた。
ライオウはそのまま、リルカを自分の肩の上に担ぎあげると
「ぎゃーぎゃーうるさいぞ!お前たち!…ジンライ!」
「へい!ダンナ、その女の身ぐるみ…」
「そうじゃねぇ!休める場所を準備しろ、この女を寝かせる」
ライオウが話すと、その意図を理解したのか
ジンライは頷き、そのまま奥の方へいった。
「ライカ、ちょっと来い」
と呼ばれ、ライカはライオウに駆け寄る。
「来たよーライオウ♪」
「ちょっとこの女の面倒見てくれるか?気絶してるだけだからよ
回復と看病すれば、すぐに起きるはずだ」
「うん!分かった!僕に任せて!」
ライカは満面の笑みで、返事をする。すると、ジンライが
戻ってきて、
「ダンナ、あっちに休める場所を準備しましたぜ」
「おう、わりぃな」
と話し、三人はそのままリルカを連れていった。
☆
その日の夜。
焚き火や篝火で燃える木の音がパチパチ鳴り、
雷神会の拠点を明るく照らしている。
そのテントの一角。毛布をかけられ、眠っているリルカと
寄りかかるようにライカも同じ様にすやすやと眠っていた。
ライオウはその二人の近くで椅子に座り、本を読んでいた。
そこへテントの布をかき分け、ジンライが顔を出す
「ダンナ」
声を出すと、ライオウは口の前に指を立て、シーと言う。
状況を確認すると、ジンライは手招きをする。それに応じると
本にしおりをはさみ、閉じて机に置き、寝ている二人を
起こさないように、外へと出た。
「ダンナの読みどおりでしたぜ。やっぱりあの女は
襲撃者じゃなかったですぜ」
「そうか、となるとお前が持ってきた情報は
やはり間違いなかったか」
二人がこそこそ話していると
「知っていたのね、”エゴート団”の事」
と後ろから声がする。二人は驚き振り向く。
そこには、リルカが立っていた。
「ここに何しにきたか、聞かせてくれるか?」
ライオウの目の奥が、ちらりと光った。