リルカがテントに入った後、ジンライはライオウに頼まれた
通りに、何人かの男たちを引き連れて、集まっていた。
「ダンナ、とりあいずですが”足が早い奴ら”を中心に声をかけ
集めやした」
「さすが、察しが良いな」
そう話すと男たちの方に向き直り、
「お前ら、今回集めたのは…この長く続いてる戦いに
そろそろ終止符を打ちたいと考えている」
すると一人のドワーフが前に出てくる
紫色の荒々しい出で立ちに二刀流の剣が携えた
いつもライカの身辺を守る男”フウライ”だった
「それは前から聞いていましたが、やるんですか?」
「あぁ、だが拠点は…」
「へい!オレが調べた情報によれば、奴らは古代オルセコ闘技場を
占拠し、そこを要塞化しているようでさぁ」
古代オルセコ闘技場。とある事件でガートラントの勇士達が
攫われ、そこで洗脳されて殺し合いをさせられていたと言われて
いる場所。ジンライは懐から巻物を取り出し、広げた。
「オレが偵察で見て回った時に、いくつかの侵入ルートの
目星はつけやしたが…」
話し合う男たちの所へ足音が向かってくる。
「ライオウー」
と、声をかけたのはライカだった。話し合いが止まり、
フウライは驚く
「お嬢…リルカ殿と眠られたのではないのですか?」
「ううん、リルカさんが出ていった時からずっと起きてた。」
「ライカ、オメェー寝てなきゃダメだぞ。昼間からずっと
アイツを看てたんだろ?」
「回復自体は”そんなに”大変じゃなかったよ。それより…
ライオウ。」
ライオウはライカの言葉の途中に一瞬思案しかけたが、
何かを言わんとする目をした娘の言葉に、耳を傾けた。
「ボクもリルカさんの妹を助けに行きたい」
と言った瞬間に、ライオウが固まる。
代わりにジンライが
「お嬢…本気で言っておりますか?」
「本気だよ!…ボク聞いちゃったんだ、リルカさんが
どんなに妹を大事にしてるか、必死になって探しているのも!」
「ですが、お嬢!今回は身辺を守ることが…」
「そうでさぁ。お嬢は拠点に残ってもらなきゃいけねぇと・・・」
言い合いをしていると、ライオウが急に立ち上がる。
ジンライとフウライはそれに驚き、口を止める。
ライカの前まで行くと…ライオウは突然抱き上げる。
そしてその瞳を見つめる。ライカもまっすぐ同じ様に
見つめ返すと、ライオウの口元に笑みが浮かび
「俺の言うことをきちんと聞けるか?」
言う。それを聞いたライカは満面の笑みで
「うん!」
「ダンナ!」「頭領!」
ジンライにフウライ、その他の男たちが
一斉に声をあげる。そうみんな知っている。
ライオウがいかにライカを大事にしているか
そして、その気持ちは雷神会の皆も同じだった。
「落ち着け!おめぇら!ライカが
自分で行きたいって言ったんだ!」
「ですが…!」
フウライが何か言おうとしたが遮って
「どの道、拠点で留守番をさせても、ライカは
ついて来ちまうだろうしな…」
とライオウはもう一度、ライカを見て言い
笑みを浮かばせる。
そんな二人を見て、ジンライやフウライ
他の男たちも、互いを見合った後に納得して
「それもそうでさぁ」「仕方ありませんな」
と話がまとまった所で、ライオウはライカを
下ろして、
「ライカ。今日は、ゆっくり寝ておけ。明日から大変だからな」
「うん、わかった」
そう話して、ライカはリルカの眠っているテントに戻って
いった。
「で、ダンナ。話が止まってしまっちまいましたが、
今回はこれで行きたいと思うんですが…」
ジンライは明日から行う作戦の全貌を
そして人員の分配などを話し合いそして…
☆
夜が明けた。
朝、荒々しく聞こえる喧騒にリルカは目を覚ます。
「もぅー朝からうるさいね…」
不機嫌そうな声を出しつつ、手早く自分の身なりを整え、
太刀と荷物を持ち、テントの外に出ると、
外では、男たちが荷物を持ち運び、馬車に乗せたり
待たせている馬に括り付けたりしていた。
「これは…!」
すると、リルカの所にライカがやってくる。
「おはようございます♪リルカさん」
「おはよう。ライカちゃん」
挨拶をしあっていると、
「行くぞー!!」
と、フウライの大声が響いたのちに手綱を打ち鳴らす
音とともに馬が嘶き、力強く蹄を鳴らし地面を踏みしめて、
出入り口の穴に向かって数頭の馬と一台の馬車とともに
男たちが駆け抜けていった。
「あれは一体?」
「今出ていったのは、今回の作戦の先行隊でさぁ」
とジンライとライオウが後ろからやってくる。
「よう!昨日はちゃんと眠れたか?」
「あぁ、しっかり眠れたよ」
とライオウとリルカがやり取りしていると
ジンライは
「んじゃ、俺も行きやすぜ」
と言い、馬にまたがり飛び出して行った。
「こっちも準備は整ったな、行くぞ!」
続く