「頭領さん。心配しなくても大丈夫ですよ。」
マイカが歩み寄ってきた。
ライオウは拳を一旦納める。
「大丈夫というのは、どういう事だ?」
「これです」
と、マイカは自分の右耳につけてあるものを触る。
「イアリング?それはなんだ?」
「私がつけているこれは、リルカお姉ちゃん達とおそろい
なんですよ。」
「こら、マイカ。今、そんな事をいってるば…あっ!」
リルカは話している事の意図に気づく。マイカはその表情を
見て、笑みを浮かべる。
「待て待て、姉妹の間で納得されても分かんねーぞ」
ライオウのツッコミが入ると、マイカは近くにあった
手頃な瓦礫の上に座ると
「実はこのイアリングは、私たち三姉妹の大切なもの。そして
それと同時に、互いの場所を教え合う一種の魔道具でもあるんです。」
「ヴェリナードで仕事をしているアスカは別として、あたしとマイカは
各地を転々としているから、これが無いと見つけるもの大変なんだ」
リルカが話していると、ライオウは腕組をし
「まぁ、お前たちの事情は分かったが…それと”心配しなくて大丈夫”
というのはどうつながるんだ?」
すると、今度はマイカが逆の耳を見せる。しかしその耳には、
何もついていなかった。
「マイカ…あんた。まさかイアリングを片方だけ」
「うん♪ライカちゃんの服に忍ばせたの」
「おおー!ということは…!」
ライオウの顔に元の余裕たっぷりの顔が戻ってくる。
「探せるかもしれません。イアリングは互いに近づけば、
つけている人に音で知らせてくれます。」
それを話した頃、ライオウの指示で人を集め戻ってきた
ジンライ。
「ダンナ!とりあいず、フウライを中心に数人かき集めて
きやした!」
「よし!…今こっちで、ライカを探す目処がついた!
ジンライ!もう一度悪いが、各地に情報を集めにいってくれ!」
「へい!お嬢のためなら!」
すぐにジンライは飛び出していく。
「フウライ!おまえたちは、グレンの拠点を中心に
捜索してこい!」
「分かりました!今すぐに馬を回して、行ってまいります!」
フウライは、他のメンバーを引き連れて駆け出して行く。
「ライオウさん!あたしも行くよ!」
「私も行きます!」
リルカとマイカも、ジンライたちを追って行こうとする。
「待て。お前たちは俺と一緒に動くぞ。」
とライオウが二人を静止する。
「マイカはひとまず、もう少し休んでろ。さっきも
治りきってないまんま、無理やり呪文使ったろ?」
「うぅ…」
マイカはちょっとほっぺを膨らませて、怒ったような顔する。
「そんな顔すんな、ちょっとこの辺りをリルカと馬を使って
探すだけだ。終わったら、すぐに帰ってくるさ」
と、マイカの頭をワシャワシャと撫でる。それをしていると
「ライオウさんー!馬、連れてきたよ!早く来てー!」
リルカが一頭の馬に跨り、後ろからもう一頭の馬を引き連れてくる。
「おう!今、行く!」
こうしてエゴート団と雷神会の戦いは幕を閉じた。が、これは
のちに起こる「蒼天の物語の運命」に導かれし冒険者たちを
襲う災いの「たったの一節」に過ぎなかった。
☆
一方、その頃。ここはバドリー岩石地帯。
そこには、黒衣の鎧に身を包んだ少女。そして二人の妖精が
応援するようにわいわいと声を上げていた。
その少女の周りには、赤い体に刺々しい緑の甲羅を背負った
トリカラトプスが数匹周りを囲んでいた。
続く
(ここでライオウさんと雷神会の物語はひとまずおしまいです)