これは蒼天のソウラの二次創作になります。執筆者の
独自解釈などが含まれます。そういった関連の事が苦手な方は
注意が必要です。それでも良い方は進んでください。
ー本編ー
「…ここだ。村長から使っていいって言われてる家は…」
フツキはある家の前に立ち止まり、すでに扉を開いていた。
案内されるままに、二人は中に入ると滞在するのに困らないように
なってるのか、必要なものが一通り揃えられていた。
そして三人は、眠る前に明日の行動を確認するために
中央に置かれていた机、そこにあったイスに座り
改めて明日の行動について話し合う。
「念の為もう一度確認するが、明日はマージン
お前も薬草採取を手伝うのか?」
「おう、俺は元々マイカさんのホウキに乗ってここまで
来ていた訳だし、もし援軍を呼ぶんだったら身軽な方が
早いだろうしな」
実際、マイカの駆るホウキは二人乗りが出来るほど
大きなホウキではあるが、やはり飛ぶ速さが落ちていたのは
否めなかった。
フツキも手が増えるならば…とマージンの案を了承する。
「とりあえず明日は、マイカさん一人になるが…ヴェリナード王国へ
援軍を呼びに行ってもらおうと思うんだが、大丈夫か?」
マイカの方に振り返ると、先程と同じように本に目が向かっており、
今度はかなり内容に興味が惹かれているのか、何も聞こえてないように
見えた。
「おーい…話を聞いて…」
「これですッ!!」
と突然、ガタンとイスが倒れるほどの勢いでマイカが立ち上がり
ぬわっ!とびっくりして、マージンはイスと一緒にひっくり返る。
「と…突然、どうしたんだ?」
同じように驚いたフツキは、すぐさまマイカの後ろに回り
読んでいる本を覗く。
マイカが読んでいたのは、薬草をおいていった薬師の家に
保管されていた蔵書の一冊で、所々に傷があるが、表紙に
”ウェナ薬学白書”というタイトルが書かれた古めかしい本だった。
「マイカさん…この本に何か?」
「はい、これは…ヴェリナード王国の調査部が認定し、
書かれたものです。実はその中に…ウェナ諸島に
古より伝わるどんな病も治すことが可能な
”しんぴの霊薬”の作り方が書かれているんです!」
「なに!?…それは本当なのか!?」
フツキの問いに対して、マイカも力強く返事をする。
「イテテ…それは凄い発見だな…」
マージンは、ひっくり返った時に打った頭を擦る。
その霊薬について、読み進めて行くと
いかにして病へ作用するか?や精錬の手順と
霊薬の中核をなす材料に以下の3つが必要となる…
と綴られ、必要な材料が解説・調査報告と共に書かれていた。
歴代女王の歌の力で清められた海水が
ウェナ諸島の大地を通り、湧き水として出ている
通称【ウェナールウォーター】。通常の
きよめの水よりも高い浄化作用を持つ。
ヴァース大山林の奥地にあると言われている
大地から吹き上がる魔力を集める性質を持つ
光の樹木から取れる【光の樹液】。
樹液に宿る魔力が、ウェナールウォーターの
浄化作用をさらに高める効果を持つ。
ウェナ諸島に生息する二足歩行型の暗殺鳥
【アサシンエミュー】。その中で数十年に一度彼らの中から
生まれる通常よりも体が大きな通称【ボスアサシンエミュー】
という個体。一匹で複数のエミューを従える頭脳や
個としての戦闘能力に優れている。また特徴である
尾に宿す毒も通常個体よりも凶悪で
”天使の加護を得た僧侶”すらも死に追いやったと
言われている【大暗殺鳥のしっぽ】。
しっぽ自体に宿る毒を2つの素材とその他に必要な
各種薬草で浄化・精錬すると”しんぴの霊薬”へ
と昇華出来る。
「…材料を集め、手順どおりに浄化・調合・精錬すれば
”しんぴの霊薬”を手にする事ができるだろう…です」
マイカがひとしきりに読み終えると…
二人は少々難しい顔をする。
「確かに薬効を見る限り、薬草をコツコツ探して
行くよりも遥かに村から流行り病を撲滅出来る可能性は
大きいが…」
「問題は…それを全て揃えられるかだ…」
先の2つは、既に読んでいる本で今も存在している事が
納得の行く調査と記録で示唆されている。
だが、【大暗殺鳥のしっぽ】を持つ【ボスアサシンエミュー】は
数年に渡る調査団の環境調査や分布調査の結果、
生まれていない事が記録されており、本が出された
年に絶滅認定されていた。
つまり、しんぴの霊薬は作れないという事だった。
続く