蒼天のソウラの共同二次創作になります。執筆者の
独自解釈などが含まれます。そういった関連の事が
苦手な方は注意が必要です。それでも良い方は進んでください。
ー本編ー
「行動で…示す…」
その場にぽつんと取り残されたアスカは、
掛けられたばかりの言葉を反芻する。今までどんな時だって、
自分はこの名に恥じぬよう、最良を考え行動して来た…
そのはず、だ。
でも、もしそれがアスカの独り善がりに
よるものだったとしたら?
それこそが寝不足の原因。明け方近くまで寝るに寝られず、
彼女の頭の中でぐるぐると巡っていた疑問。
「早急に気持ちを切り替え… 行動で、示す…」
自身のこれまでが果たして正しかったのかという不安。
そして、浮かんでしまった疑問をそのまま残す後味の悪さ。
それらを全て押し込めて、意識の外へと追い払う。
「考えるよりも… 今、私がやるべきことは、この村の異変を
解決すること…!」
言葉にすることで改めて頭の中に認識させ、上官に
言われた通り気持ちの切り替えを図る。
腰のベルトに提げていたポーチを開けると、入隊時から
使い続けて来た革の手帳を取り出し、アスカは駆け出した。
任された役目を果たす為に。姉と妹に追い付こうと、
新たな一歩を踏み出す為に。
☆
頭上を海鳥が飛び交い、キラキラと輝く朝陽に
照らされる波打ち際を、ロスウィードは歩いていた。
一歩ごとに足元の砂浜を踏み締め、今回の騒動に連なる痕跡を
探してみるものの、手掛かりになりそうなものはなかなか見つからない。
目に付くものと言えば漂流物ばかりで、打ち上げられた
流木や絡み合った海藻の塊を調べてみても、特に気になる点もなかった。
空も風も、そして波も実に穏やかで、海岸には魔物の一匹すら見当たらない。
報告書に記された現状を知らなければ、村は平和
そのものだとすら思えて来る。
ぶらぶらと歩きながら、点在する幾つかの岩場を乗り越え…
そろそろ一度引き返そうかと思い始めたその時。
少し離れた波打ち際に、幾つかの漁船らしきものが見えた。
足早に近付いてみると確かに漁船ではあったが、
そのいずれも大きな衝撃が加わったのだろうか…
船底や側面に孔が空いたものや、酷いものは無残にも
船体が真っ二つにへし折られた状態になっていた。
漁船の形状はウェナ諸島において広く普及しているもので、
普通に考えればあの村の漁師たちが使っていて、何らかの理由で
この場所に打ち棄てられたのだろう。
注意深く船体に触れ、破壊された箇所を調べる。
「これは酷いな…」
観察すれば、破壊された船体の傷跡はまだ新しく、
ここ数日のうちに刻まれたようにも思えた。
戦闘にでも巻き込まれ、使い物にならなくなって
この場所に廃棄したのだろうか。
更に観察を続けると… 物理的な傷跡とは明らかに異なる、
帯状に焼け焦げた跡が目に留まる。
「攻撃魔法… メラ、いや…ギラ系の跡か?」
周囲に人影も、人の気配もないことを確認すると、
眼帯を押し上げて左目を露出させる。
右眼に比べると、それは明らかに異質な様相。
眼帯の下に隠れていたのは、碧とも蒼ともとれる色に発光する眼球。
ロスウィードが数回瞬きをすると、その表面にアストルティアでは
目にすることのない細かな文字がびっしりと奔った。
「攻撃魔法で間違いないな」
数秒後。目的のものを確認し終えると、眼帯を元に戻し
砂浜の一箇所に目を向ける。
そこには、内陸に広がる熱帯植物の覆い繁る森へと続く、
重いものを引き摺ったような痕跡。
――魔力の残滓がはっきりと残ってることを考えれば、
戦闘があったのはやはり数日以内。そして、隠すわけでもない、
何かを引き摺った跡。
恐らく、今回の騒動に関係している可能性が高い――
「…もう少し探ってみるか」
空を見上げ、太陽の位置を確認する。
願わくば夕食には間に合うようにしたいものだ。
そう考えつつ、ロスウィードは森へと足を向ける。
続く