蒼天のソウラの共同二次創作になります。執筆者の
独自解釈などが含まれます。そういった関連の事が
苦手な方は注意が必要です。それでも良い方は進んでください。
ー本編ー
張り切って情報収集を始めてみたものの、
なかなかどうして思うようにはいかないものだ。
警戒されないようにと、努めて明るく声を掛けてみるものの、
ここは小さな漁村。
行方不明になった者とは親しくしていたり知り合いだった者も多く、
そんな状況でのアスカの明るさを、快く思わない村人も見受けられた。
それでもどうにか拾い上げた情報はあれど、
どれも騒動の解決に繋がりそうなものではない。
「何か… もっと、有益な情報は――わ、っきゃ!?」
気ばかりが焦り、手帳に目を落しながら歩いていたアスカは、
転がっていた魚籠に蹴躓いてしまう。
慌てて近くの壁に手を突き、バランスを取ろうとするが… その際、
立て掛けてあった木材や漁の道具をガラガラと音を立てて崩してしまった。
その音で、何事だとばかりに集まって来る村人たち。
「わ、わ… す、すいません…!」
散らかしてしまったものをいそいそと掻き集め、元の通りに
立て掛けようとするアスカの前に、日焼けした体格の良い
ウェディの男が不機嫌顔で近付く。
「何やってんだ、アンタ!」
「ひっ…! か、考え事して歩いてたら躓いてしまって…」
「全く…事件の手掛かり探すのはいいが、余計な仕事増やすんじゃねぇよ!」
如何にも漁師といった風体の男は狼狽えるアスカを尻目に、
慣れた手つきで木材や漁の道具を拾い上げるとさっさと壁に
立て掛けてしまった。
「あの、その… あ、ありがとうござい…ます…」
「フン!」
しょんぼりとした様子で頭を下げるアスカを一瞥すると、
威嚇するように鼻を鳴らし、漁師は何処かへ去ってしまう。
「すまないね、軍人のお嬢ちゃん。今の人、悪いヤツじゃないんだけど…
お嬢ちゃんと同じで不器用でねぇ」
項垂れるアスカに、今度は聞き覚えのある女の声が掛けられた。
「女将さん…」
見れば、大きな包みを手に歩いて来たのは、さざ波亭の女将。
「本当にごめんなさい。少しでも早く、
村で何が起こっているのか明らかにしようと思ってるのに、
返ってご迷惑をお掛けしてしまって…」
耳のヒレをしゅんとさせ、申し訳なさそうに話すアスカの背中を、
女将の大きな手がぽんぽんと優しく叩いた。
「この村の連中は、男も女も漁を生業としてるのが多くてね。
まぁ、ぶっきらぼうで愛想も悪いが、少しの失敗なんか誰も気にしないさ」
そんなことを話しながら、手にした大きな包みをその場で紐解いてゆく。
「だから。お嬢ちゃんもあまり気にするんじゃないよ? ところで…
調べてみて何か分かったのかい?」
何人かの村人たちに話を聞いてみたものの、村長から
聞いた以上の情報はなかったことを、アスカは女将に伝えた。
「そうかい、そりゃぁ残念だねぇ。でもアンタ、朝早くに
宿を出てから今まで歩きっぱなしなんだろう? …そんな根詰めてないで、
ちょっとは休憩入れな!」
一体何をするつもりなのだろうと眺めているアスカの前で、
包みが完全に開かれると、中から出てきたのは美味しそうなお弁当。
その辺に転がっていた頑丈そうな空き箱にどすん。と腰を下ろすと、
立ち尽くしていたアスカに手招きをする。
「何突っ立ってんだい。食べるもん食べなきゃ力も出ないし、
頭だって回らないよ? さっさとこっち来て、これ食べてまた頑張りな!」
日焼けした顔に豪快な笑みを浮かべると、
「まだやるべきことが…」と遠慮しようとしたアスカに向けて、
ずいっとお弁当を差し出す。
――肩の力を抜く、かぁ――
いつの間にか頭上に登った太陽と、食欲をそそる
美味しそうなお弁当の匂い。
少しだけ考えると、「わかりました」と、
アスカは女将の好意を素直に受け入れることにしたのだった。
☆
海岸沿いから離れれば、低かった植物は徐々に高さを増し、
やがて鬱蒼とした熱帯植物の森が口を開ける。
森に分け入って進むことしばらく。
樹々の隙間からはところどころ陽の光が射しているものの、
頭上に覆い繁る大きな葉や色鮮やかな花を付けた枝たちに
邪魔され、
太陽の位置からおよその時間を割り出すことが出来ず、
ロスウィードは歯噛みする。
そして頭上にばかり気を取られていれば、
彼の視界と歩みをウェナ諸島特有の、
高く伸びて大きく垂れた葉を持つ植物が阻んでしまう。
面倒臭そうに、腰に提げた長剣を鞘のままで一薙ぎ。
一先ず進路の確保が出来たところで、
地面に続く引き摺った跡を確認し、更に森の奥へ。
続く