蒼天のソウラの共同二次創作になります。執筆者の
独自解釈などが含まれます。そういった関連の事が
苦手な方は注意が必要です。それでも良い方は進んでください。
ー本編ー
村の中央に位置する小さな広場。
少し汗ばむ陽射しの下で元気に遊んでいた子供たちが、
夕刻を報せる半鐘を聞くと各々の家へと足早に駆けてゆく。
誰も居なくなった広場で、茜色の空を眺めてぼんやりと考える。
――子供の悪戯から始まり、行方不明になった家畜やペット、村人、
そして村に立ち寄った旅人や冒険者。
浜辺に放置された漁船の残骸と、魔法が用いられたであろう
戦闘の痕跡。
他者を操る力を持った悪魔の伝承。
そして、この村を回った時から感じていた違和感。確証こそ
ないものの気掛かりなことが浮かび上がり、村長宅へと足を向ける。
「村長、ご在宅か?」
呼び掛けると同時に藁の暖簾を掻き分けると、
囲炉裏の傍らにいた老ウェディの男が顔を上げた。
☆
「村長、協力…感謝する」
礼を告げて村長宅を後にすると、東の空に顔を
覗かせていたのは丸くて紅みを帯びた月。
見渡せばどの家も既に扉を固く閉ざしているようで、
外を出歩く者の姿もない。
気掛かりなことについて村長から話を聞いてはみたが、
未だ確証はない。だがそれでも、自身の推察が正しいのでは
ないかと言う結論に至る。
行動か、それとも様子見か。
どうしたものかと宵口の風に吹かれて迷っていると、
果たしてそれは向こうからやってきた。
「帰還しました。大尉」
何処か着られている感じのする鎖帷子。腰に携えた細剣に、
腕には小振りのバックラー。
明々と燃え盛る篝火に照らされて近付いてきたのは、
アスカ=バンデ・ヒルフェともう一人。
「あれ? グンジンのお兄ちゃん、わたしのおうちになにかごよう?」
アスカが手を引いているのは…
否。どちらかと言えば、アスカの手を引いているのは、
村長宅や宿を案内してくれたウェディの少女。――村長の孫娘。
「用事ならもう……… いや、実は…
ちょっと用を足そうとトイレを借りようと思ったんだが、
生憎村長はお休み中だったようでな…… あぁぁぁもう漏れそう!」
何とも冷ややかな視線のアスカと、若干引き攣った顔の少女。
だがそんなものは気にも留めず、アスカと少女の見ている前で
股間を押さえて、大袈裟に腰をくねくね、足をバタバタと動かし…
「え、お…お兄ちゃん大丈夫? うちのトイレ使っ――
「ダメ!もう漏れちゃう!」
挙句、泣きそうな顔でベルトの留め具を
その場でカチャカチャと外し始める。
「え!?ちょっと! お兄ちゃんちょっと!向こう!
向こうの木のかげで!」
「最低です大尉!」
「いいって言うまで向こう向いててえええええええ!!」
どうやら必死の叫びは聞き入れられたようで… 少女は両手で
顔を覆い、アスカは眉間に青筋を浮かべ、揃ってくるりと背を向けた。
「ふぃ~」とか、「間に合った~」などと声を出して演技を
続けながら… 左眼の眼帯を手早く外すと背中を向けた
二人を確認する。
疑いが確証へと変わった瞬間だった。
「………あー…スッキリしたぁ」
眼帯を戻すと、実に晴れやかな笑顔で二人の元へと急ぐロスウィード。
「お兄ちゃん… 今のはわたしもどうかと思うよ…」
「規律を重んずる軍人が、村の中で…その、立っ、立ち……最低です!!」
何とも最低な手段を使って彼が左眼で覗き見たのは、この世界の魔力。
結果としては、浜辺で見掛けた漁船の残骸で確認した魔力の残滓。
それに酷似したものが、クモの巣のようになって彼女たちの身体に
纏わり付いていた。
魅了。それは相手を支配し、意のままに操る術。
代表的なところで言えば悪魔族――中でもとりわけ、
サキュバスやインキュバスたち。その他、実体を持たない
エレメントと呼ばれる系統の魔物が得意とする術だ。
二人の状態を確認した後、“必要な物資調達の為、一度本国に戻る”と
アスカにそう伝えてロスウィードは足早に村を後にした。
“彼女たち”が動きやすい状況を作るために。
一連の事件に決着をつける為に
続く