これは蒼天のソウラの二次創作になります。執筆者の
独自解釈などが含まれます。そういった関連の事が苦手な方は
注意が必要です。それでも良い方は進んでください。
ー本編ー
ボスエミューは、フツキとマージンが駆け出してくるの見て
これから自分がどうなるのか悟ったのか、拘束を抜け出そうと
必死に暴れだす。
「暴れ…ないで…!!」
「マイカ!最後のひと頑張りだ!…耐えろッ!」
「マージン!首の方を頼むッ!俺は体に打ち込む!」
「了解だッ!行くぞ!」
二人がボスエミューに取り付く。フツキは体の各部に
麻酔薬付きのナイフやピックを打つ。マージンは
首の方に登り、軽くナイフを滑らせ、首の皮膚を斬る。
的確な処理に、あの凶暴だったボスエミューは徐々に
力が抜けていき、やがてその巨躯を地におろし、その場で
すやすやと眠り始めていった。
「「オールクリア」」
フツキとマージンが告げると、リルカは尻尾を離し
マイカは呪文を解いた。
「お…終わりました…。」
「マイカさん、ご苦労さま」
フツキがマイカに手を差し伸べる。その手を取りながら
「……おかえりなさい。戻って来てくれて嬉しいです。」
と言い、フツキは少し笑みを浮かべて頷く。
「さて…早く尻尾、回収しなきゃな。」
「それなら、アタシに任せろ」
いつの間に回収しにいったのか、リルカの手には投げた太刀が
握られていた。そして素振りをしながら眠っている
ボスエミューの元へ行く。
「…斬るのか?」
マージンはリルカがしようとすることを悟る。
「変に優しくしない方が良い…特にソイツのようなのはね。
自慢であろう尻尾を失う事になるけど、分からせなければ…
これだけマージンたちとぶつかったんだし、今度は冒険者に
危害を加えるかもしれないしね」
太刀を納刀し、腰に据えて構えた。すると後ろからフツキがやってきて
「…だったら、俺がやる。元々村を救うために材料を
集めたかったのは、こっちだしな」
「ううん…途中で分かった事だけど、あの尻尾…
トゲは大した事は無いけど、振り回していた筋肉が
尋常じゃないほど頑丈だった。たぶん並の刃物じゃ
刺す事も出来ないかもしれない。だから任せて…」
リルカは辺りを見回す。
「あれが…使えるかな?…三人とも、その場から離れてて!」
何かを見定めると、右手を横に突き出す。深呼吸をすると
そこに風が集まっていき、手に纏わりついていく。その状態で、
駆けだしていき、見定めた場所。家屋とその屋根に続くように
階段状に積まれた木箱に向かって駆け上がり、
屋根の上で助走をつけて、さらに空中へジャンプする。
ジャンプはかなり高くボスエミューの真上まで飛び上がっていた。
「風の一閃!“嶺渡(ねわたし)”!!」
その頂点で、リルカは納刀していた太刀を一気に抜き去る同時に
竜巻呪文のような風の刃が巻き起こり、ボスエミューのトゲと
付け根の部分を地面ごと切り裂き、トゲの部分が見事に
切り落とされた。
凄まじい一撃に、麻酔で眠っていたボスエミューは飛び起き
何事かとキョロキョロ見る。次の瞬間、何かに気付いたのか
尻尾の方を見る。
その場の誰もが起きる事は予期しておらず、
しばらくの間静寂が流れた。
やがて、ボスエミューは全てを悟ったのか、その眼を突然
ウルウルとさせて、大粒の涙を流しながら、悲しみの鳴き声を
上げてドスドスと村を飛び出していってしまった。
「悲しんでいましたね?」
「あぁ…泣いていたな」
「本当にあのボスアサシンエミューは、モンスターなのか?」
と言いながら、三人はリルカを見る。リルカは太刀を納刀しながら
「いや…こっち見ないでくれ…罪の意識が…」
気まずい空気が流れたものの、切り落とした尻尾は猛毒がある
トゲの部分をマイカが持ってきていた大きめの布を使い、
フツキの手によって何重にも巻き保護された。
それをマージンが担ぎ上げ
「よし!これで霊薬が作れるな!」
「…早く薬師の元へ行くぞ。」
「お姉ちゃん、早く行こう!」
マイカが声をかける。が、リルカは別の方向“大男”が
吹き飛ばされた方へ向かっていた。
「マイカはフツキさん達と先に行って…アタシは確認してくる」
「それなら私も…」
「いや、見てくるだけ。すぐに追いつくから、大丈夫」
リルカは、笑みを送りそのまま歩いて行った。
続く