これは蒼天のソウラの二次創作になります。執筆者の
独自解釈などが含まれます。そういった関連の事が苦手な方は
注意が必要です。それでも良い方は進んでください。
ー本編ー
……!
…ツ…!
―――!フツキ!
かけられた声に、フツキはハッと驚く。目に見えるのは
木目の天井、視界を落とすとそこには自分の肩を持っている
相棒“マージン”の姿があった。
「気が付いたか…。薬を飲んだ子から、お前の様子がおかしいって
来てみれば…立ったまま動かないでいるから…びっくりしたぜ。」
「…大丈夫だ、問題ない。そういえば“あの子”はどこにいるんだ?」
「ちゃんと居るぞ、よほど心配していたんだぞ?」
と、マージンの後ろからひょっこり顔を出したその少年の姿は、
村長の老婆と同じく“ウェディ”だった。
「エルフのお兄ちゃん!なんともなくてよかったぁ!」
満面の笑みで語り掛けてくれた。それを見たフツキは
あの世界で会ったリヒトの事を思い出し、スッと後ろを向く。
「えっ!?どうしたの…!お兄さん!」
「フッキー…!まだ何か…」
「だ…大丈夫…な…なんでも…ない…」
その状態で何かごそごそとした後に、前を振り向く。
そこにはいつも通りの真剣なフツキの顔があった。
「そういえばマージン、霊薬の方は配り終わったのか?」
「おう。俺もさっきまで手伝っていたし、マイカさんやリルカさん、
ホイミン王たちのおかげで、もうあらかた村には行き渡ったはずだ。」
フツキは、霊薬の配布が既に終わっていた事に安堵した。
そこでマージンがさらに
「それで村長さんが、流行り病の撲滅を祝って…俺たちも招待して
簡単な祝賀会をやりたいそうなんだが、フツキはどうする?」
そう聞かれて、フツキは少し考えたのち部屋の出入口の方へ向かい
「俺は、やめておく。…次のクエストのために休む」
と、告げて部屋を出ていった。
外へ出て、しばらく村を散策するように歩いていく。
周りからは病が消えたおかげか、元気を取り戻した村人たちの
嬉しそうな声が飛び交っており、
自分自身が成し遂げたかった事がようやく
出来たと言う証でもあった。
〇
フツキが村を巡っている頃、村長の家の前では
村人の手で村から集められた椅子や机がどんどんと
並べられていた。
ホイミン王たちも浮遊する能力を活用して、村人から
手渡される色とりどりの紙の帯を会場の上に這わせていた。
「ほっほっ…順調じゃのう」
「…先に戻るのか?マイカ」
「うん…今回の事、早めに師匠…ギブさん達にも伝えなきゃ…って…」
村長は二人のやり取りを聞く
「…もう発たれるかのう?」
「はい!…村長さんも何か必要な事があれば…」
「そうじゃな…ここは普段、何も無い村じゃが……
おう、そうじゃ!隣のルシナ村の”オルカンの坊主”は
元気かのう?」
オルカンの名前とまだ子供のような言い方をして来て
リルカは目を丸くした。するとマイカに強引に
家の裏へ連れられた
「……確信はなかったけど…ここやっぱり…
”約60年前”に ーーこの村は謎の病で滅んでいる…」
「本当なのか!?…じゃあ… ここは…」
リルカが聞くと、マイカは神妙な表情で頷き
「……お姉ちゃん、これは”ここだけの事”にして…
今は村長さん達と”祝賀会”を楽しんで来て」
〇
日も落ち始めた頃、宿泊用の家の前に着き、扉に手をかけると
「フッキー」
マージンが後ろから声をかけてきた。フツキは振り返ると
ニッコリとした笑顔を見せる。さらに村人から分けて
もらったのか、赤い液体が入った飲み物のビン数本、
パン・ハムといった食料が抱えられていた。
「マージン…今頃みんな祝賀会じゃないのか?」
「おう、参加はやめておいたよ。」
「なんだって!?…俺の事は気にしなくていいから、楽しんでくれば…」
「何言ってるんだ?一緒に飲もうぜ…なぁ…“相棒”?」
そういって、マージンは扉をあけるように催促する。
相棒の気遣いにフツキは、小さく笑みを浮かべ
「ふっ…じゃあ、眠くなるまで付き合ってくれるか?
ちょっと話したい事もあるんだ。」
と言い、フツキは扉をあける
「おう!とことん聞くぜ…!」
マージンも嬉しそうに返事をして、二人は家の中へと入り
こうしてそれぞれの祝賀会が始まったのであった
続く