これは蒼天のソウラの二次創作になります。
執筆者の独自解釈などが含まれます。そういった関連の事が
苦手な方は注意が必要です。それでも良い方は進んでください。
―本編―
~約10年前~
ここは、“バンデクス島”。猫島の南に位置し平原に森林、
小高い山と自然豊かなやや小さな島である。かつてヴェリナード王家に
仕えていた“バンデ・ヒルフェ卿”が開拓した土地で、最初に
建てられた屋敷を中心として小さな港町が栄えており、種族を
問わず、様々な住民が生活をしている。
主な産業・畜産物は島でとれる新鮮な果物や作物、周辺の海域で獲れる魚介類。
それらをエスコーダ商会を通じて、ウェナ諸島の各地へ送り出して取引したり
近くの猫島の猫魔族たちとも新鮮な魚を送る形で上手く付き合っている。
そんな平和な島に、ある日こんな噂が流れた。
“西の洞窟に、大きな魔物が住み着いた”と、最初は噂程度であったが
町の外で作られる作物を魔物たちが荒らすようになり、噂はやがて
問題へと徐々に大きくなっていた。
そんな噂を小耳にはさんだ“少女”が動き出した。
〇
バンデクス当主の屋敷、そのとある一室。部屋の中には
子供が使いやすいように用意された勉強用の机やベット、
タンスがおかれていた。
「あたしたちで、ワルイモンスターをやっつけるよ!」
そう高らかに行儀悪く机の上に乗り、話すのは、赤い肌に
特徴的な痣様なラインを持つオーガの少女“リルカ”。
その右手には、どうの大剣が握られていた。
「さーんせい!わたしも一緒にやるー!」
リルカの言葉に応じるように、木の剣を掲げるのは耳や背中に
小さなヒレを持つウェディの少女“アスカ”。
「お姉ちゃん達やめようよーそんな事…怖いよー」
泣きそうな声を上げているのは、尖った耳を持つエルフの少女“マイカ”。
種族違いの三人の少女たちはみな、島の主で父たる
”パテル=バンデ・ヒルフェ”と母の“マーテ=バンデ・ヒルフェ”が
養子として育てている子供たちである。
そんな彼女たちは養父や養母の活躍は知っており、養親たちのように
周りの人たちの助けになる事を目指していた。
「チッチッ…怖がることは無いぞ?マイカ」
「どういうことー?」
「二人には、“あたし”っていうつよーいお姉ちゃんが居るんだから!」
リルカがそう高々と言うと、マイカはアスカの方を見る。姉のリルカが
そうであったように、もう一人の姉の顔も自信に満ちた顔で見つめていた。
「うぅ…わかったよー…いっしょに行く」
「よし!…それじゃあ、まずは港町のみんなから
いっぱい話聞いてこよう!」
3人は掛け声を上げて、一緒に部屋を飛び出し、
正面のドアをバンッと開け、元気よく屋敷を飛び出していった。
○
サンサンと太陽が照る港、そこでは定期船や商船が
寄港しており、島を訪れた旅行者や冒険者が闊歩し
バザーでは商人たちの大きな声が響き渡っていた。
数あるお店の一角に、島で取れた果物を棚に置かれた
カゴいっぱいに盛り売る腰にエプロンを巻いた小太りの
おばさんエルフが居た。
「おばさーん!」
「あら、いらっしゃい。…と、これはこれは可愛いお客さんねぇ」
おばさんの前には、3人の姿があった。大きな挨拶を
したあとに、リルカは町で噂になっている魔物について聞く。
「そうねー私は、エスコーダ商会の所の商人さんと取引してるから…
特に被害を受けている訳じゃないけど…」
「……おばさん…その…魔物に怒ってる人とか知らないですか?」
マイカがおどおどしながら聞く。
「魔物に怒ってるねぇー…そうだわ!…一番広い土地を
島主様から頂いた”農家のおじさん”が、凄く困っていると言うか
怒っているような事を商売仲間から聞いたねぇ」
「うんうん!…ねぇ、今その人どこにいるのー?」
アスカが聞くと、おばさんは身振り手振りで
どこに居るか答えて、3人は農家のおじさんの所へと向かった。
3人が向かった先は、広大な平地に様々な作物が作られ
収穫時期の作物は美味しそうに実っていた。
その一角に、何人かの人間の大人たちが集まっていた。
魔物たちに荒らされてしまい、壊れたモノや
ダメになった農作物を片付ける作業を行っていた。
「急いで直せー!…まだ外にも魔物どもに壊されたの所もあるんだからなー!」
ひときわ大きく声をあげる小太りの人間のおじさんが居た。
3人は、そのおじさんに大声で挨拶する。
「おう!…島主様の所のお嬢様たちじゃねぇかー!」
と、おじさんが3人の所へ歩いてくる。
「今日はどうしたんだい?」
続く