これは蒼天のソウラの二次創作になります。
執筆者の独自解釈などが含まれます。そういった関連の事が
苦手な方は注意が必要です。それでも良い方は進んでください。
―本編―
「今日はどうしたんだい?」
そう聞かれ、リルカは作物を荒らした魔物の噂について聞く。
「ほうほう…俺の所のを荒らしたヤツらは、恐らくだが“小さい魔物ども”だよ」
「どうしてそう言えるの?」
リルカが聞くと、おじさんは近くから作物のトマトをちぎり取る。
持ってきたトマトは手のひらに収まる大きさだが、そこにはいくつかの
小さなかじり跡があった。
「それなりに大きな魔物なら、ここで育ててるトマトくらい丸飲みだろうよ」
おじさんの話を聞きながら、周りを見渡すアスカとマイカ。
「ま、この島の魔物どもは元々森の果実とかで生活出来ていたはず
なんだが…やっぱり“西の洞窟に住み着いた魔物のせい”だろうかなー?」
と言いながら、かじられてダメになったトマトを
別の人に渡しに行く。
「おじさんは何か、住み着いた魔物の事知らない?」
とリルカが聞く。
「あ?…そりゃ知らないよー。…って、お嬢様たち
その魔物を調べてどうす…」
おじさんが何かに気がついて、3人を引き留めようとした時には
既に姿はなかった。
○
日は落ち始め、空がオレンジになり始めていた頃。
三人は屋敷へと帰ってきていた。
「“洞窟の魔物”の事、町の大人たち知らなかったね…。」
「うーん…聞きまわれば、分かると思っていたのにー」
「やっぱり…危ない事は…しない方が良いんじゃ…?」
「もぅマイカたったら…もう町で必要なもの買い揃えちゃったん
だから、あとは行くだけだよー」
と、三人がブツブツ言いながら、買ったものが入った荷物の袋を
持って自分たちの部屋へ戻ろうと屋敷の廊下をトボトボ歩いていると
島主の部屋の両開きの扉が開く。
リルカはそれを見て、足を止めた。後ろについて来ていた
アスカ・マイカは気づかずにぶつかり、尻もちをついてしまう。
「もぅーお姉ちゃん。急に止まらないで…!」
アスカが声を上げて怒るが、リルカは人差し指を口に添えて
静かにするように訴えかけてきて、すぐに口をつむぐ。
「………マーテ様。衛兵長が明日の昼ごろには準備が終わるとの
事ですので、宜しくお願い致します。」
と、衛兵らしき若い青年が部屋の中にいるマーテと話していた。
「分かりました。…では、よろしくお願いします。」
ハッ!と敬礼したのち、扉を閉めた。そして持ち場に戻ろうと
歩こうとするとその先で、リルカ達が待っていた。
「おぉ…これはお嬢様方、どうされたんですか?こんな所で…」
「衛兵のお兄さん。お養母さんと何を話していたのー?」
「それがねー“洞窟に居る魔物”の正体が分かってね…その退治を
するためにマーテ様と相談していたんだよ。」
青年が言うと、リルカとアスカは互いを見て頷いた後に
リルカが声を上げる。
「ねぇねぇーその“魔物の事”教えてくれない?」
「えぇ…!?そんな事聞いてどうするの?」
聞かれると、アスカが下を向いたまま恥ずかしそうにして
動かないマイカの背中を押して、リルカの隣に立たせる。
「それが、マイカがその魔物の事を知りたいんだって!」
「ほ、本当かい…?」
青年が聞くと、目を見ないままマイカはうんうんと
懸命に頷いた。それを見た青年は困った表情しながら
頭を掻いているが、さらにリルカとアスカが教えてと
言わんばかりにつぶらな瞳で訴えかけて
ついに青年は折れ、“洞窟の魔物”の事を話す事となった。
〇
「…とんだおてんば娘だねぇ~?あんたの子供たちは…」
「はは…あんな事を聞いていてどうするんでしょうね…?」
島主が執務を行う大きな机と椅子に座いるマーテは苦笑いする。
その手前の応接用のソファーに座り、用意された紅茶を
すすっているのはドルワーム王立研究院からやって来た
“ヤコミナ”だった。
「それよりも…あんたの夫はどうしたんだい?」
「主人ですか?…主人は今とある調査に出てかけているんですが…
今日の夜には帰ってくると、ドラキーのラッキーが届けてくれた
手紙には書いてありましたが…」
マーテは手紙を持って島主の机から、ヤコミナの対面に座る。
「はーん…まだ”あの事件”を追いかけていたんかい…?」
「はい…」
続く