これは蒼天のソウラの二次創作になります。
―本編―
「待て待て、オレはお前たちを攻撃しない。“主との約束”でな…
お前たちのような子供には危害を加えないぞ」
リザードマンは、両手を上に上げる。語りかけてきた相手に
リルカも目の前の存在が何もしてこない事に安心し、手を下ろし
伏せるのをやめない二人を立ち上がらせた。
「あっちに…オレのキャンプがある。ついてこい」
そう手招きをして、リザードマンはゆっくりと歩いて行った。
三人は一瞬どうするか迷うように、見合ったあと。そのまま
ついて行った。
「えーと、モンスターさん…ありがと」
「おっと、名乗ってなかったな…オレは“リーザ”。
行方不明の主を探して旅をしている剣士だ」
「剣士…!と言う事は…さっきのは、リーザの?」
アスカは目を輝かせる。
「あぁ…故郷の里では一番の使い手と言われていてな
将来、魔王軍の将軍になれるとか、どうとうか長老に
言われていたんだが……そういうのが嫌でな、黙って
故郷を抜け出したんだ。」
「へぇ〜」
「ところで、お前達はどうして…こんな夜遅くに森に居るんだ?」
リーザは歩を止めて、振り返って聞く。リルカは、森の方を
指差して
「この森の奥にある、洞窟に魔物が住み着いたって聞いて
やっつけに来た。」
「ほぅ…なるほどな。…昼間、森に住んでるって言う者たちにも
洞窟に住み着いている奴を追い払って欲しいと言われていたが…」
「え、じゃあ!一緒に行かない!?…リーザ!」
「すまぬが、それは出来ない。人間達が住む町が近くにある時は
長居しない事にしているんだ。助けたのも、お前達を人の居る安全な
場所へ送り届けてから、ここを旅立つつもりだったんだ。」
そう、リーザが話すとリルカはしょんぼりする。
「助けを求めて来た者たちの話では、”こん棒を持った大きな体の魔物”
と話していたな…」
「分かったリーザ。ここでお別れだね
…アスカ。マイカ。洞窟の方、向かお!」
と、言って3人は森に入っていた。
「お、おい!ま…!」
リーザが声をかけようとした時、何かの気配を感じ
追うのをやめ、その場を足早に去るのだった。
○
三人はしばらく懸命に森の中を木々の隙間から漏れてくる
月明かりを頼りに進んでいくと、拓けた場所に出た。
「うぅ…暗くて怖かったよ…」
マイカが少し強張った表情で言う。
「リルカお姉ちゃん…!あそこ、あれが大人のみんなが言ってた
”西の洞窟”じゃないかな?」
アスカがポツンと開いたそこそこ大きな洞窟を指さした。
それを見たリルカは頷く。
3人はその洞窟に近づく。すると、中から何か大きな足音が
響いてきた。
「ねぇ…中から何か…来るよぉ…!」
「マイカ、落ち着いて…!お姉ちゃんに任せて…!」
「出てきた…!」
アスカが言うと、洞窟の中から巨大な影が出てきて
それは月明かりに照らされる内に、正体を現した。
”トロル”。その巨大なずんぐりむっくりの体に、簡素な服。
手に、自身の頭と同じくらいか大きめのこん棒を握っている。
ウェナ諸島では、ヴェリナード王国から東に位置する
ヴァース山林を超えた密林の中に住んでいる魔物の一族である。
「んあーお腹すいた…。あいつら、”食べ物”持ってこいって
いったのに…遅いなー」
と、トロルは周りをチラチラ探し回っていると自分よりも小さい
3人を見つけた。
「んー?…なんだぁ、お前たち。ボクに何か用か?」
トロルは、ゆっくり近づいてくる。それを見たリルカ達は
それぞれの武器を構えた。
「うーん?…突然そんなものをかまえて どうする気?」
「お、おまえが…洞窟に住み着いたと言う魔物か?」
「そうだよ。ボクは流されてきたんだ。ここはいいね。
食べ物はいっぱいあるし、ボク以外におっきな奴もいないし」
と、トロルは嬉しそうに語る。
「でも、お養母さんや町の人たちが困っているんだよー!」
アスカが怒るように言う。
「……そんなのしらないよー!ボクだって帰りたくても、
帰り方なんて、わかんないよ!だから、ここがボクのおうち!
出ていかないよーだ!…」
それに一瞬言葉が詰まったが、意を介さないような素振りを
とり、ドスドスとリルカ達に迫ってくる。
「要するに…ボクの場所を奪ばいに来たんだよね?それなら…
お前たちにもぼくのチカラをみせてあげるよ!」
続く