※蒼天のソウラの二次創作です。実際のキャラの
掛け合いなどに違いがあるかもしれません。
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ここはレンドアからかなり離れた海上。今日は国同士による
交流を目的としたナイトパーティがグランドタイタス号にて、
開かれる事になっていた。各国の王族や貴族など
アストルティアにおける重要なポジションを担っている者たちが
一堂に会する場。
プロの楽曲団から奏でられる心地よいオーケストラが流れる中
貴重な素材を厳選して作られた食事を要人たち同士で
和気あいあいと会話しながら食され、踊りを楽しむために
中央に広くあけられたホール。そこでは軽やかなステップで
合方の男性と踊りに興じるウェディの少女が居た。
「今宵は素晴らしい日です。かの有名なエスコーダ商会の
ご令嬢、マルチナさんと共に踊れる機会を得られた事、恐縮です」
「こちらこそ貴方様の商会とは、これからも円滑に取引を
していきたく思います」
話しているとマルチナのステップが突然乱れる。男性は
それに気づき、即座にサポートする。
「大丈夫でしょうか?…お噂ではマルチナさんは、ダンスが
とてもお上手だと伺っておりますが…」
「少し足がすべ…じゃなかった。調子が悪いだけですわ。おほほー」
「そうでしたか。では今日はエスコートさせていただきますね」
「はい、よろしくおねがいしますわ」
マルチナが笑顔で返していると、突然頭の中に語りかけられる
ように言葉が響く。
《もぅー!しっかりしてよー!》
《大声で、喋らないでよ…。頭に響くんだから》
《あ、ごめんごめん。で、パーティーは楽しい?
”アスカお姉ちゃん”…》
なんと今、ダンスを踊っているマルチナは、
アスカが変装している姿だった。
《こっちの事はいいから、早く特定して》
《うん、わかった。お姉ちゃんは、そのまま
踊っててねー》
変装したアスカと何かを探るマイカ。二人がなぜこんな事を
しているのかと言うと、こういった華やかな場には必ずと言って
良い程に黒い陰謀が存在するからであった。
パーティーが開かれる一月ほど前にヴェリナード軍に
動機や目的は不明なものの、マルチナを亡き者にしようと
考えている者が参加者の中にいるとの情報が届けられた。
それを防ぐために、パーティーへの参加中止を軍から
提案したものの、商会としては将来を左右する重要な
ものになるため辞退する事が出来なかった。
そこで取られた作戦が、マルチナの替え玉を用意し
本人はバレないように別の見た目でパーティーに
参加するというものだった。しかし急を要し、人員を
厳選する余裕がなく
アスカがその”替え玉の役目”を担う事となったのだった。
マルチナが選んだドレスに身を包み、超過密スケジュールで
パーティーでの作法やダンスの踊り方、マルチナ自身の
喋り方・身振り手振りなどを当日までに全て叩き込まれる
事となったのだった。
(マルチナさんの命を守るためではあったけど…
うぅ、普段の鍛錬よりも大変だったよぉ…)
と、内心涙するアスカが扮するマルチナが、ぎこちない
足さばきでダンスを続ける。暗殺者捕縛のため、参加者に紛れ
会場内を目を皿にして探すマイカ。
(通信はとりあえず出来てた。リングピアスの改良も上手く行って
そう!…あとは、偽のマルチナさんを襲おうと動いてる犯人を
見つけて捕縛するだけ!)
会場を回りながら、二人で相互にやり取りをして
相手の居場所や出方を探る。
(会場は大体回ったけど…それらしい人がいない?)
と、ふと中央のホールを見るとペアを組んでダンスをする場
なのに、一人で踊りながら移動している不審な人物を見つける。
(あれって…まさか!)
マイカは手をリングピアスにあてて通信機能を使う。
《お姉ちゃん…!そっ……に、犯人、みつけ…!
そ…ってて!今、行……って…!》
【※お姉ちゃん!そっちに犯人、見つけた!
そのまま踊ってて!今、行くから待ってて!】
(犯人、見つけた?今、行け?…どういう事?)
雑音まじりの内容が不透明な通信を聞きつつアスカは
見える範囲で周りを伺い見ると、明らかに不自然な動きで
自分に向かって来る黒のケープを頭に被った人物を見つける。
アスカは、ダンスをしていた商会の男性に挨拶をして、
暗殺者と思しき相手に向かっていく。
「フフ…見つけたぞ、お前を…!」
「あなたね!」
続く