※蒼天のソウラの二次創作です。実際のキャラの
掛け合いなどに違いがあるかもしれません。
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町の出口へ向かって、容姿が非常に綺麗に
整った青年が歩いていく。アスカがその青年を見ているのに
ようやく気づいたおばちゃん達
「あら、格好いい人ねぇ〜お嬢様の好みですか?」
「!……いえ!違います!…あ、ソウダ!チョット用事が
出来マシタノデ行キマスネ!」
変に顔を赤くしたままアスカは、帽子を被り直し
足早に青年の後を追っていった。その反応はおばちゃん達にも
見え見えだったようで
「あらあら…お嬢様たら、今の人に一目惚れしたのかしらね?」
「それはないわよ〜。アスカお嬢様が働いている軍に、気になっている方が
居るとかなんとかって聞いた事がありますわよ?」
当の本人が去って行った後も、しばらくはおばちゃん達のお喋りが
途切れる事がなかったのだった。
☆
バンデクス島、森林。ここはかつて幼いアスカ達の遊び場であり
島を旅立つ前までは、アスカの修練場となっていた。そこへ青年は
迷いなく入っていった。気配を殺し、追跡していたアスカ。
しかし同じように入り、ほんの少しだけ
目を離した瞬間、アスカの視界から青年の姿が消えた!
突然の事に少し驚いたものの、感覚を研ぎ澄まし、
耳を立て、辺りに気を張っていると枝が何かの踏み切りで
揺れた音と葉っぱを擦るような音が上からして
アスカが見上げると、先程の青年が曲刀を抜いて
斬りかかってきていた。
……しかし、アスカはそれに対して驚く表情も浮かべずに
冷静に自身の剣を抜き、身を引きながら青年の攻撃を
剣で弾き、後ろへと下がった。
青年はそのアスカの行動を見て、何か手応えを
得られたのか口から笑みが浮かび、
「フッ…やるな、アスカ!」
突然、彼女の名を呼び自身の得物を腰に戻した。
「もぅー本気じゃなかったのは、見え見えでしたが
急にやめて下さい…”リーザ師匠”。」
アスカもまた懐かしい人に出会った時のような
和やかな表情を浮かべて、剣を鞘に収めた。
「ナハハ!…追跡されていたのは分かっていたからな、
脅かそうって思ったんだ。しかし…」
リーザは、言葉を区切った後にいつの間にか
背中に回していた左手を出し、謎の羽飾りを
見せびらかすようにアスカの前に差し出した。
「まだまだのようだな?」
「えっ!?」
見覚えのあるそれを見て、アスカは先程まで見せなかった
驚きの顔を見せる。そして自身の帽子を取り、確認すると
いつも付けている羽飾りが無くなっている事に気づく。
「ハハハッ!…お前が俺の攻撃を弾いて身を引く
その瞬間に取ったんだ!」
「うぅー!返して下さいー!!」
自身の師匠を一瞬でも超えられたと思いきや、一杯食わされてしまい
悔しさを滲ませながら、アスカはリーザの手から羽飾りを
取り返し、すぐに帽子につけ直した。
その後は、そのまま二人で談笑しながら森の中を進むと
開けた広場のような所に出た。目的地にたどり着いた事を、
確認するとリーザは大きく深呼吸をして
「さて…”戻るか”…」
そう呟くと、胸に手を当てる。するとそこから、
光を帯びていき、青年だったその姿が徐々にその形を
変え、厳つくアスカより一回り大きな竜の戦士
”リザードマン”へと変化を遂げた。
アスカは、それを見て少し残念そうな表情するが
すぐに笑みが浮かび、
「あーあー戻っちゃった。師匠の変化とっても良い…アイタッ!」
「馬鹿者、俺の”本当の姿”はこっちなんだぞ?」
リーザはニヤついて見ていたアスカの背中を、
尻尾で軽く小突き、”それにだな…”と何かを言おうと
した時
「昔、師匠が仕えていた”方”の大切な姿でしたよね」
アスカに先取りで言われてしまい、説教するために
開いた顎が閉じれずに、驚いていた。
「……よく、覚えていたな」
「だって、ここで修行をつけてもらっていた時は
毎回話していたよ?」
「ハハッ…そうだったな。俺の仕えた方は…
本当に立派なお人だった」
リーザは、自分を持ってきていた荷物を拾い上げて
そのまま修行場に建てられた小屋へ入っていき、中で
ガサゴソとした後に、すぐに出てくる。
「そういえば師匠、どちらに行かれていたんですか?」
その問いに、リーザは懐から手紙を出した。そこにはヴェリナード軍を
示す印章が貼られており、差出人にアスカの名前が書かれていた。
「お前が手紙で、近い内に島へ帰ると書いていただろう?…それを
読んだら、急に永らく帰っていなかった里”こきょう”が、気になってな
久しぶりに帰郷していたんだ。俺の故郷の話…聞くか?」
そう言って、リーザは近くにあった切り株に座った。
〜続く〜