※この物語は蒼天のソウラの二次創作です。
今回のお話は筆者の独自の解釈や加筆があります。
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太陰の一族が、魔界への再征服を挑むための
新たなる拠点を猫島に築いてから時が経ったある日。
猫島の主”キャット・マンマー”から、再び自身の元へ
来てほしいとの願いを受け、マリクはライセン・ゴオウ・シュナを
連れて、巨猫の巣へやってきていた。
「よくぞ参った。色々と大変な中で、
またそなたらを呼んでしまい、申し訳無いぞ」
「いえ、こちらも今は此処に住まわして貰っている身の上
ですので、問題ありません。」
「前にギャレリオ様については話したな。」
キャット・ギャレリオ。500年前の戦いで、猫島より
太陰の一族陣営として参戦した巨猫族の剣士で、
リベリオのご先祖にあたる人物。
「はい、我々がこの地へと来れたのも、ギャレリオ殿の
おかげと思っております。」
「うむ。それでじゃ、そのギャレリオ様をこの猫島まで
送り届けたのは、かの”聖獣ダイキリン”であったのだ。
対面した当時の主も大層驚いていたと伝わっておる。」
ダイキリンの名が出た時、ゴオウとライセンは驚く。
「うぉい!…また懐かしい名前が出てきたな」
「うむ。あの聖獣の脚力には、何度全力を出しても
追いすがれなかったものだ…」
なぜか染み染みとうんうんと頷く二人。当時を知らないシュナは
「ライセン様やゴオウ様でも、勝てなかったのですか?」
と質問をする。その問いに、二人は静かに頷いた。
マンマーはそのやり取りを微笑ましくみながら視線をマリクに戻し
「実はな…先日、その聖獣が猫島を突然、妾の元を尋ねて来たのだ。
どこで聞いた分からぬが…お主らの顛末も知っていてな
”太陰の一族の現在の主どこかな?”と聞いてきたのだ。」
「私を…ですか」
「妾もさすがに、突然来た者にそなた達の居場所を言えなくてな
帰るように促したら、”静寂のほこらで待っている”と言い残し、
去っていったのじゃ。」
まるで風のように現れたかと思えば、自分を名指して
去っていた聖獣。直接会った事もなく、繋がりがあるとすれば
かつて戦いで実際に相対した父やゴオウ・ライセンの方であるはずで
なぜ自分が指名されたのか、理解が追いつかずマリクは
思案にふけってしまう。それをみたマンマーは
「まぁ、こう伝えてしまって困惑するのも分かる。なればこそ
ダイキリン殿に、直接会ってみるのが事態の飲み込みも早かろう」
そう言い、マンマーはマリクにダイキリンが住処にしている
静寂のほこらの場所を教えた。
☆
〜静寂のほこら〜
猫島から船をいくつも乗り継ぎ、マリク達はほこらにたどり着く
奥までやってくる。そこには聖獣ダイキリンが地に体を下ろし、
鎮座していた。来ることがわかっていたのか顔を上げ、
出迎えるように挨拶をする
「よく来たな、太陰の一族の主”イシュマリク”」
「お初にお目にかかります。早速で申し訳ないが、
なぜ我々…いえ”私”を?」
マリクはマンマーの元では聞くことの出来なかった疑問を投げかけた。
ダイキリンもまた、その疑問に頷いた後に
「うむ…。ならば順に話して行こう…。ワシは500年前に
シャクラと魔公王イシュラース…二人の決戦を遠くで見届けた後
ギャレリオ殿を猫島に送り届け、”あるもの”の行方を追った」
「”あるもの”?それはいったいなんだ?」
ゴオウは結論を急ぐようにぶっきらぼうに質問してくる。
「まぁ待て、あるもの…と言うのは、お前たちの主…そしてマリク、
お前の父と共に戦地を駆けていた”愛馬”だ。」
「なんですと…!?イシュラース様がお乗りになっていた…」
ダイキリンから語られたのは、魔界からアストルティアへ出征する際に
そしてイシュラースがその生命を終える寸前の時まで、共に居た馬の事だった。
「ワシは、敵ではあったものの魔公王イシュラースには、
シャクラと同じような好感を持っておったのだ。それ故に、
あの時代の野に放たれたその愛馬の行方がとても気になってな、
探しまわりその場所を突き止めた。」
「それでイシュラース様のお馬様は今どちらに?」
シュナが問う。ダイキリンは顔を落として
「……もうおらぬ。だがワシが見守った限りでは、
相当長生きはしておったがな」
マリク達太陰の一族が、暗い海底から復活する時まで生きる事は
出来なかった。だが、それを伝えるためだけにダイキリンほどの聖獣が、
自分たちを呼んだ訳が無いとライセンは悟る。
「聖獣殿。まさかその”真実”を伝えるためだけに、
我々を呼んだ訳ではありませんな?」
と、ライセンより先に言ったのはマリクだった。
〜続く〜