※蒼天のソウラの二次創作です。実際のキャラの
掛け合いなどに違いがあるかもしれません。
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三姉妹が島に帰郷し、各々が思い思いの事や再会をし
和やかな時間が過ぎていった。そして陽は落ち、
バンデクス島に夜が訪れた。
港町はまだ少し活気が残っており、宿屋の酒場からは
一日の労を労う漁師や商人たちの和気あいあいとした
声が響く。
アスカ達も自分たちの屋敷”いえ”へと帰ってきて、
養母とメイド達が作る島で採れる素材を生かした
三姉妹にとっては懐かしい料理の味を堪能していた。
「やっぱりお養母さんの作る料理…美味しいな♪」
「メイドのお婆ちゃんの料理も忘れちゃだめだよ〜!」
アスカとリルカは手を忙しくなく動かし、どんどん食べていく。
「そんなに急がなくても、ちゃんとありますから
ゆっくりと食べなさい」
微笑ましく見ながら、マーテは近くに居たメイドに
追加の用意をお願いする。隣でマイカは呆れつつ、
姉二人と違い自分のペースでゆっくりと食べながら、
「もうぉ…お姉ちゃん達、改良作業してる私よりも汚れだらけで
帰ってくるから”何してたの?”って思った」
「え?あーあたしは、えみ…師匠に偶然会って、
稽古つけてもらってたんだよ…結構激しかった…。」
「リルカお姉ちゃんも?…私も懐かしい人に会えたよ♪」
「へぇ〜何か偶然ね」
「もしかしたら明日は島に雪が降ったりして♪」
”そんな事ある訳無い”と四人はそれぞれ思った。偶然は
偶然であり、それ以上の意味は無い。姉妹は、大好きな養母に
手紙を送り、故郷へ帰ってきただけ。そこで厳しくも優しく
修行をつけてくれた恩師・恩人に出会ったりした…ただそれだけ。
重なった偶然の話題はやがて流れていき、別の話題へと
食事を交えながら続けていき、バンデ・ヒルフェ家の夜は
静かに過ぎ去っていったのだった。
☆
暖かな家族の談話が行われていた同じ頃。場所は海中の地下洞窟。
円卓を挟むように、ローブに身を包む暗殺者。対面するように居るのは、
塩っ辛い香りを体から漂わせるフジツボが生えた甲冑に身を包む
強面の骸骨が3匹佇んでいた。
彼らはかつてイシュナーグ海底離宮に突入する作戦を極秘裏に
実行するヴェリナード軍の穴を狙って、ジュレットの町を制圧せんと
攻撃を仕掛けた”翠煙の海妖兵団”の生き残りの将軍たちだ。
当時、町を守らんとした冒険者たちの手で、大将を討ち取られ
強大であったボスの求心力を失い、戦力がガタ落ちしてしまった。
しかし生き残りの将軍たちで兵団をまとめ上げ、それをもって
現在も兵団としての体を保っていたのだった。
「それじゃあ、オレタチはもう一度”ジュレット”を襲いにイケばいいンだな?」
「ええ、今回は私たちも動いて同時に2箇所で戦闘を起こすの…で
相手側の戦力を分散させ…少なくなった戦力を返り討ちにして、
征服を容易に達成するって寸法よ」
「よく分かった。とにかくオレタチは、ジュレットが欲シイ。だから
お前タチに協力すル」
「そして私たちにも欲しい物がある。良いね〜お互いにWin-Winの関係ね」
暗殺者は笑いを上げる。すると強面の骸骨将軍の後ろから
部下らしき魔物がやってきて、ゴニョゴニョと話す。
「どうやら部下タチの方の準備がもうスグ終わり、コちらは
出陣できソウだ。…オレタチは行く。お前タチもしくじるなヨ?」
「ご心配どうも〜♪」
そうお互いに言い、強面の骸骨将軍たちはガラガラと体の骨を鳴らしながら
円卓から去っていく。それを手を振って見送りながらローブの女は、
邪悪な笑みを浮かべる。
「ザンネ〜ン♪アンタ達は、私達の作戦のオ・ト・リ・よ!
キャハハハ!」
と、今まで自身を覆っていたローブを脱ぎ去ると中から
堕天使を思わせる色違いの翼と露出の多い赤・白・黒の配色が
なされた衣装に身を包む女怪人が姿を現した。
彼女は【芳墨の堕天将フィア】。アストルティア防衛軍の
討伐対象リストに名を連ねる悪女、ウェナ諸島を中心に暴れまわり、
略奪と人々に不幸を運ぶ【芳墨の華烈兵団】を指揮する大将である。
「姉さん…!アイツら行った?」
「ええ、意気揚々とジュレットへ進軍していったわ♪
精々ヴェリナード軍の連中をかく乱してくれれば、上出来ね!」
「これで、作戦の成功率も上がるというもの!」
「リランザ!ドーター!さぁ!私達も行くよ!」
と、フィアが手を掲げ、指を鳴らす。するとその背後から
無数の赤い眼光が現れ、大きく広がっていた。
「私の計画を…目的を邪魔した”アイツら”の居場所を
この手で奪ってやるわッ!アーハハハッ!!!」
全てを見下すような高らかな笑いが洞窟内に響いたのだった。
〜続く〜