※蒼天のソウラの二次創作です。実際のキャラの
掛け合いなどに違いがあるかもしれません。
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私は、ヴェリナード軍所属の”アスカ=バンデ・ヒルフェ”です。
イシュナーグ海底離宮での戦いを終えてから、ここの所は忙しい毎日。
当時の戦火の中心に近い場所に居たと言う事で、私とロスウィードは
軍内でも、あちらこちらに引っ張りだこで目が回りました。
特に戦後処理では、ディオーレ女王様の取り決めで一時とは言え、
ウェナ諸島内に太陰の一族の、つまり魔族の集落が出来る事に、
全ての人たちが納得する訳も無いため、そう言った過激な人たちを
抑える役割を担うのが
私の…私達の今の務めです。
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ージュレットの町ー
「……と、思っていたらロスウィード!…どこへ行ったんですかぁ!?」
肝心の人が居ない。そう呟くアスカ。後ろには、今回の
任務で一緒にやって来ていた同じ軍の兵士二人も居た。
「はは…相変わらず大佐は、居なくなるのが早い」
「何言ってるんですか!最近、ジュレットに”魔族撲滅”を掲げる
過激な人たちがたむろしてると、町長さんから報告を受けていたから
来てるのに…」
「少佐…あの人なら、時が来ればひょっこり出てきますよ」
兵士たちに宥められながら、まだ納得行かない表情をしていたが
大きく深呼吸して
「それじゃあ、私達3人で情報収集しましょう。出没する
場所や時間を住民の皆さんから聞いて回りましょ」
「「はい!」」
アスカは二人に担当エリアを振り分け、任務にあたらせた。
彼女自身は、依頼主である町長の居る家へと向かった。
☆
「……と、言う訳でどうも各地を放浪する”魔族は悪だ!”と
話す冒険者グループが町で有志を募っているようなのです」
「なるほど…有志を募ると良いつつ、住民にも迷惑をかけている
とも伺いましたが…」
アスカは町長の家を訪ね、家主であるボーレン町長と机を挟み、
会話をしていた。話によるところ住民の前では、先の目的を
話しており、それに同調した者には装備を貸し与え、訓練まで
施しているが、一方で金品などを少量ながら要求もしており、
それが日に日に同調する住民の数に比例して増え、
さらに要求もエスカレートしているようだった。
「”魔族は悪”を建前に使って、金品をせしめている
かな…これは」
「おや、少佐殿は魔族には寛容ですな」
ボーレン町長に言われた。アスカは自分ではそんなつもりは
なかったものの、聴いた内容をメモしていた手帳には
いつもよりも強い筆圧で書かれていた字が伺えた。
そう”怒り”を滲ませていた。一度深呼吸をした後に
「……私は今回、問題の一端になってる魔族の皆様に
関わった事があります。なので、事情については
理解しています。…それだけに種族の違いだけで
相手を判断する事は良くないと思っているのです。」
返答を返すと、ボーレン町長もその答えに
納得したかのように笑みを浮かべると
「なるほど…やはり”大佐殿”から伺った人そのままのお方ですな♪」
「え…ロス…いえ、大佐がこちらに来られたのですか!?」
アスカは先程とは違い、あたふたする。
「これはもう大佐殿にはお伝えしたのですが、問題を
起こしている冒険者グループは、ジュレリア地下廃坑に
拠点を構えていると、住民から聴いています。もしいかれるなら…」
「あなた?…誰にお話されているのですか?」
自分の妻マーゼッタが不思議そうに声をかけてきて、はじめて
アスカが目の前に居らず、すでに家を飛び出して行った事に気づいた。
☆
〜ジュレリア地下廃坑〜
《ウェナ諸島から魔族を追い出せ!》
《魔族を許すなぁ!》
洞窟内に響く怒号とも取れる言葉。それを繰り返し士気を
高めているのは、冒険者くずれの者たちとその意思に
賛同したジュレットの町の住民たちだった。皆一様に
武装をしており剣や斧、槍を掲げ声を上げ続けていた。
(これは町長殿の話よりも、さらに状況が悪い方に傾いているな…)
物陰から覗き、状況を一人伺うのはロスウィードだった。
事前情報を見聞きしていたが、アスカ達に先立って
ボーレン町長に話を伺った時、既にグループと言うより、
傭兵団並の人員を揃えている事を知ったロスウィードは
ひと足早くに地下廃坑まで来ていたのだった。
そうして隠れながら見渡せる範囲で戦力を推察していると
声を上げる者たちの前にある壇上に、集団をまとめる
リーダーらしきオーガの男が上がった。
「いよいよ明日…!奴らが住まう島、猫島にある集落を叩く!
準備は良いか!?」
声高らかに宣言する。その言葉に周りに居た者たちに声が
より一層大きくなったのだった。
(明日か…!もう時間は残されてないようだな…)
続く