(前回までのあらすじ)
ポルファン師匠の教えによりだいおうキッズにボケを成功させたホーリンは
ボケの技巧の重要さを身をもって学ぶ。
だがそこに現れた三匹の魔物は、旅芸人「っぽい」ホーリンに死の宣告をするのだった。
それから数日後。
僕はポルファン師匠の依頼で、ミュルエルの森に向かっていた。
旅芸人が襲われる事件が多発しているのだという。
旅芸人“だけ”が襲われる理由……?
『旅芸人っぽいヤツは 皆殺しーー!』
(まさか……!)
ミュルエルの森、フォステイル広場。
僕が足を踏み入れた時、
もう……“それ”は終わっていた。
ドザリと、倒れたのは……、プクリポの旅芸人。
「ポルファン師匠っ!?」
まさか、稽古場にいたはずでは……!?
旅芸人なら誰でも一度は身にまとうと言われる、“かたりべの服”を着たその特徴的な姿は――
いや、よく見ろ。ポルファン師匠じゃない。
別人……だが、同じ旅芸人の、仲間だ……。
その旅芸人を害した、道化師の格好をした男は嘲り笑う。
「ククク……。弱すぎて話にならねえな。
旅芸人なんか どいつもこいつもザコばかりだ。
その程度で よく人を笑わせられるぜ。」
「お、お前っ!」
弱いから、ザコだから……殺したっていうのか……!
愛用の棍を構え、道化師と対峙する。
「オレの名はゲイザー。へっへっへ……また旅芸人か」
なんだ、こいつの……旅芸人への執着は。
旅芸人を憎んでいるのか……?
だが、奴が最初に取った行動に、僕は目を見張った。
「タップダンス……!?」
それは、旅芸人の曲芸スキル46ポイントで習得できる、
旅芸人の基礎とも呼べる特技……
消費MPは3。効果時間は3分。自分のみかわし率を2倍にする。
耐久能力がそれほど高くない旅芸人が、自らの身を守るために編み出したと言われている。
だが、そんな問題ではない。
それは、その特技は……!
「旅芸人の、専用スキルのはずだっ……! なら、まさかお前も、旅――」
だが、タップダンスを踊り終え、優雅に一礼をした道化師は、
「“お前も旅芸人なのか”――まさか、そんな下らねえセリフを言うつもりじゃねえよなあ?」
ヤツは片手を振りかぶって、
「オレは 旅芸人が大嫌いなんだよおおお!!」
そう叫び、「火炎斬り」を――放ったのだ。
「なっ……! 片手剣スキル……!?」
ミュルエル花園に火の粉が舞い散る。
かろうじて棍で受け止めながらも、驚愕を隠せなかった。
なぜなら、タップダンスを使用できる――つまり旅芸人が片手剣スキルを使う話など、聞いたことがなかったからだ。
だが、よく見れば奴は両手それぞれに三叉の剣を構えている。
あれは――かつて多くの旅芸人を、コロシアムで血の海に沈めてきた恐怖の象徴、二刀流……!
「お前はっ……まさか、バトルマスターなのか……!?」
(第4章に続く)
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