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孤独の闇芸人

ホーリン

[ホーリン]

キャラID
: TG682-832
種 族
: エルフ
性 別
: 男
職 業
: 旅芸人
レベル
: 111

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ホーリンの冒険日誌

2017-05-01 10:13:59.0 2017-05-01 10:40:07.0テーマ:シナリオ・クエスト攻略

伝説の旅芸人への道2017 闇芸人・決戦編 ~第14章~


 ポルファン師匠がどういう人なのか。
 旅芸人なら知らない人はいないだろう。

「なはは。来ちゃった、見つけちゃったよお!
 いよっ! レベル30以上の旅芸人!
 おめえさんは、いい空気、持ってるなあ」

「なあなあ、おめえさん。オイラ思うのよ。
 人をドカーンと笑わせられるバカは、
 救うこともできるんじゃねえかってなあ」

「おめえさんもオイラの弟子になって、
 そんな旅芸人を目指してみねえかなあ。
 一緒に、芸で人を救っていこうじゃねえか」

 飄々として捉えどころがなくて。
 軽やかな語り口と、明るい振る舞い。

「覚えておいてくれよ、ホーリン。
 芸は、人を救えるんだぜえ」

 いつだって希望に満ちた言葉をかけてくれた師匠。
 僕たちは、その横顔を見たことはあっただろうか。
 そこにはわずかな影も存在しなかったのだろうか……。


『フォッフォッフォ……。
 ゲイザーは去りました。
 これでもう、あなたを闇に染めるのに邪魔は入りませんよ』

 “闇芸人の根源”が語りかけてくる。

『私、好きなんですよ。命をかけた戦いが。
 ここからは私とあなた、絶望と希望、
 どちらが勝つかの戦いです。
 フォッフォッフォ……さあ、楽しみましょう!』

 闇が、僕の意識を侵食してくる。
 旅芸人たちの嘆き、悲しみ、絶望に……
 僕自身の心が引きずられ、負の想念に染められていく。

 旅芸人は無力だ。旅芸人は役立たずだ。旅芸人は不要だ。

「違う……! 師匠はいつだって、希望を語ってくれた」


「……じつはなあ、オイラも昔、
 芸で人を幸せにしようと考えていた師匠と
 各地をまわって芸を披露していたのさ」

「その旅にはよお、師匠の信条に共感して
 芸を愛する魔物が同行していたのよお。
 オイラの兄弟子……ルルルリーチだなあ」

 ――天才と信じた兄弟子の手で、師匠が殺され。


「芸は人を救うって言う、オイラの信条に感動して
 そのころお弟子入りしたのがゲイザーでよお。
 あいつはかなり優秀だったぜえ」

「面白い芸で、病気の母を救いたいって言う
 一途な情熱と才能に、オイラは感動してよお。
 あいつにいろんな芸を教えたんだなあ」

 ――手塩にかけて育てた愛弟子は裏切り、そして死んだ。



「あいつを倒して、かわいい旅芸人たちがよお
 笑って、芸をやれる世の中にしてえなあ」



 身近な人たちを失ったのに、
 なぜ、そんな風に言えるのだろう。
 なぜ、絶望で足を止めてしまわないのだろう。


 たくさんの旅芸人が、笑って、やがて泣いて、最後には絶望した。
 それらが集まって、生まれたのが“闇芸人の根源”……
 絶望を超えられなかった旅芸人たちの心だ。


 僕は、僕たち旅芸人は、ポルファン師匠の事を。

 冴えない、目立たない人だと、ほんの少しでも思わなかっただろうか?

 軽妙なアクロバットと粋な人柄で人気の、オルフェアのナブレット団長。

 ノリノリのダジャレで場をなごませてくれる、レンジャーのポランパン支部長。

 愛らしさとウザさに定評のあるメギストリスのアルウェ王妃。

 放浪の吟遊詩人、神秘の予言者であるフォステイル。

 プクリポにはスターが多いけれど……そういったプクリポの歴々と、どこかで比べてしまっていなかっただろうか。

 あるいは、他の職業にもそれぞれ居るだろう、教え、導いてくれる人たちと。


「……でも、今ならわかる」

 師匠は、乗り越えたのだ。
 絶望を乗り越えて、若き旅芸人たちに芸を託している。

 師匠は自分の過去を、淡々と、なにげなく話しただけだ。
 だから気づかなかった。

 師匠は自分の師匠と、兄弟子と、愛弟子を失ってなお、自らの芸を託す弟子を育て続けた。
 装備を与え、必殺技を教え、証を授けた。

 アストルティアの旅芸人たちは、みんなポルファン師匠の弟子だ。
 何千人、もしかすると何万人の旅芸人に、それだけのものを与えたのだ。
 それがどれだけ尊いことなのか……。

 プクリポのスターたちも、他の職業の師たちも、けっして旅芸人に何かを与えてはくれない。

「師匠こそが……。もっとも、旅芸人を愛しているんだ」

 その師匠の弟子のひとりが、僕。
 だから僕も、師匠と同じように、絶望を乗り越えられる。


 そして、師匠の声が、脳裏に響いた。



“ホーリン。オイラに、いつか見せてなあ。
 笑いの極みにたどり着いたバカの芸をよお。
 それができたら、伝説の旅芸人と呼ばれるぜえ”


 それはいつかの過去。
 そして、未来からの……声だった。

(第15章に続く)

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