(以下バージョン7.1までのネタバレがあります。)
ムニエカの深層にある「浄化の聖花石」。
バージョン5の魔界で似たものが出ていて「月花石」といい、トポルの村でティリア(魔王ヴァレリア)の面倒を見た老女からの贈り物の素材として使われます。
メネトの村では「夢見の香炉」という道具があり、眠りを防いだり、反対に対象を眠らせたりする効果を持っていましたが、
アストルティアの竜族の隠れ里やナドラガンドには「竜の香炉」という道具があり、対象を隠したり、反対に隠された対象を明るみに出したりする効果がありました。
ゼニアスの文化がフォーリオンによってアストルティアに運ばれ、多少の変化・アレンジを伴いながらも伝わっていった可能性はあるのでしょうか。
話を戻すと、錬金術視点で気になるのは「浄化」という表現です。
現実世界の錬金術では、錬金の対象物の色が「黒色化(ニグレド)」→「白色化(アルベド)」→「赤色化(ルベド)」の順に変化していきます。
途中で「黄色化」「虹色化」「紫色化」などが挿入されることもあるそうですが、基本的には上記の黒→白→赤は外れることはないようです。
この「白色化(アルベド)」を言い換えると「浄化」なのです。
「浄化の聖花石」には「黒いモヤのようなもの」が集められていて、これはムニエカの町の住人から吸い取られた「魂のケガレ」だそうです。
「魂」も錬金術の象徴表現で「錬金術での錬金の対象物」を表すことがあります。
エステラは「ヒトは 望まずとも 心の奥底に 悪意を抱いてしまうもの。」と述べますが、
本来なら意識上によからぬものごとが浮かんでも、夢や無意識にそれを解決するヒントが現れることがあります。
ところが、ムニエカの町の住人たちは人形と化してしまったことで、
リオネ(バージョン7.0 ムニエカの町)
「私たちは人形なので 食事を取る必要も
眠る必要もありませんが この身体になる以前と
まったく 同じように暮らしております。」
創造神グランゼニスが設計した有限の命の人間は、現実世界の人間のように、意識と無意識・夢がバランスを取り合うことで意識の自浄作用があったと思われるのですが、
永遠の命の人形になってしまったことで、意識のもう半身である無意識に何かしらの異常が生じたり、
眠らなくていいので夢が見られなくなっている可能性もあり、夢による意識の自浄作用も著しく弱くなってしまい、
これらのために意識のありかである魂に、ケガレが自浄が不可能なほどに必要以上に多く強く生じてしまっているようなのです。
夢とは、意識が切り捨てて無意識の中に置かれたものを、つまり意識とは対立的な関係にあるものを、睡眠中の自我(夢自我)が垣間見る現象で、自分を癒し救うことのできる(錬金術的な)霊薬のようなものだそうです(竜王文庫『ゾシモスのヴィジョン』p.6)。
もし錬金術が関わっているなら、浄化の聖花石は、〝錬金の対象物〟である「魂」のケガレ(黒)を「浄化(白色化)」する機能を持っている可能性が読み取れます。
ルーミリアの日記には、魂の人形への移植を「見よう見まねですがやってみましょう」と書かれていて、この移植術を行うのが初めてだったことがわかります。
また、「今日は特別なお役目を賜りし記念すべき日」とあり、「お」「賜り」の敬意はグランゼニスに対してのものと思われます。
憶測気味の推測になってしまいますが、グランゼニスはルーミリアに対し、移植術としての錬金術を教えなかったようで、死んだらそのままというのが神の意思だったのでしょうか。
また、ロベールは暖炉に身を投じて焼身自殺してしまいましたが、他の住人の話も聞くと、魂のケガレによって怒り狂ってしまっていたようです。
錬金術でまず最初に錬金の対象物を加熱することを「煆焼(かしょう)」といいます。
バージョン4.0で錬金術師リンカが同意語と思しき「焼成」を、釜錬金の第一工程として口にしています(詳細は日誌「正多面体と正多角形について(2)」にあります)。
心理学では錬金術を人の意識や夢になぞらえることがあり、「煆焼」は人の怒り(黒)とも取れます。
これを「浄化(白色化)」によって沈め、その結果「白い灰」が残る、というのが錬金術的な見方になります。
ムニエカの町の謎(3)へ続きます。