(以下バージョン7.3までとドラクエ9のネタバレがあります。)
ドラクエ9でエルマニオン雪原にあるエルシオン学院。
この学院はなぜ雪原地帯に、一体何のために創られたのか不明なままでした。
ただ、この学院では錬金術を匂わせる根拠がいくつかありました。
いわゆる〝点と線〟で言うところの点(錬金術の匂わせ)はいくつか見られるものの、線が引けるかというと確定的な根拠はなかったように思われます。
以下、〝点〟に相当する錬金術の視点でエルシオン学院について書いていきますが、
ドラクエ10のことも少し交えてみようと思います。
まず「エルシオン(エリュシオンとも)」という名称がもろに錬金術ぽいネーミングで、
現実世界の錬金術で「エルシオン」は、錬金作業過程の黒色化を経たあとの「白色化」を意味する「アルベド」の意味で用いられる場合があり、多くの錬金術書でこの表現が見られます。
最終的に錬金術を否定し破綻に追い込んだ17世紀の化学者ロバート・ボイルでさえも彼の実験室を「エルシオン」と呼んでいたほどです。
「白色化」の比喩としては「雪」「灰」など白っぽいものが白色化の比喩として用いられる例が多くあり、
「灰」は日誌「ムニエカの町の謎(2)」で書いたように人形ロベールの遺体となった灰が「白色化」(浄化)の暗示だったように見受けられます。
エルシオン学院という名前と雪原に建立されているところは錬金術めいているようにも見えました。
エルシオン学院の建物の柱には、よその建造物ではあまり見られない六角柱が使われています。
錬金術では、角が上向きの三角形は「火」、これに横線が入ると「風」、角が下向きの三角形は「水」、これに横線が入ると「土」と、いわゆる「四大元素」を表しますが、
上向きの三角形と下向きの三角形を重ね合わせると、その中央に正六角形があり、これが四大元素をつなぐ「第五元素」の象徴だそうです。
このゲームでは、現実世界で第五元素と呼ばれているものが創生のチカラもしくはそれに近いものではないかと予想しています。
つまり、六角形は創生のチカラを象徴している可能性があるかも知れないということです。
ストーリー本編中にエルシオン卿は生徒たちに対し「みがけば光る原石なんだ。なのにキミらは努力をしない……」とぼやきますが、
錬金術では卑金属を貴金属に錬金術で成長させることができるという考え方があり、
「みがけば光る原石」は〝卑金属(の生徒たち)〟、「みがく」は〝錬金術を駆使する〟、「努力」は〝錬金術の修行〟の暗示のようにも見えます。
ドラクエ10ではバージョン6.4でユーライザが謎の弱体化(卑金属化?)を遂げますが、6.5で神化の光炉への身投げ(錬金術の「投入」のようにも?)を経て、神化を遂げ(貴金属化?)、ユーライザは特別な原石だったようにも取れます。
エルシオン学院では各種武器スキルのクエストが受注できますが、これを除くストーリー系のクエストは次の2つです。
クエスト036 「エライのはあたし」
クエスト140 「エルシオンの子は世界一!」
クエスト036 「エライのはあたし」では、学校から錬金術の宿題を出された少女チャチャから、必要な素材である「まりょくの土」2つと「せいすい」1つを要求されます。
気になるのは、この学院では教育に「錬金術」を取り入れていて、チャチャは主人公に「この学院にふさわしい生徒」かどうかをこのクエストを通じて確かめようとしているということです。
エルシオン学院の生徒のふさわしさとは錬金術に通じること、という可能性は表面上の文脈から一応残りそうです。
また、まりょくの土のある場所を主人公自身で探すよう要求するチャチャは、この探求を「試練」と表現していて、〝錬金術の修行〟に通じる表現にも見えます。
現実世界の聖水は塩が含まれていることがありますが、ここから想像されたのは、同じく現実世界の、中世ヨーロッパ以降の錬金術では錬金術師パラケルススらが「硫黄」「水銀」「塩」を必須の素材にしていたことがあり、
「まりょくの土」2つを硫黄と水銀、「せいすい」を「塩」に見立てて宿題として課されていたという可能性は、エルシオン学院の生徒のふさわしさを見る宿題という文脈なので一応残るでしょうか。
(ただし、錬金術での「硫黄」「水銀」「塩」は、現実に存在する「硫黄」「水銀」「塩」という名称だけを使っていて、実際は別の何かであるそうです。)
エルシオン学院の謎(2)へ続きます。