(以下バージョン7.3までのネタバレがあります。)
以下、ゲーム中で出てきた北欧神話関連の例をいくつか挙げていきます。
『シグルド戦記』はこの記述から始まります。
「東の空から 火の矢が落ちた。
燃え落ちるは 青い屋根 赤い屋根……
やがて 英霊の館が ひずんだ音を立て崩れた。」
『エッダ』の「巫女の予言」にはこういう記述があります。
「スルトは南から、枝の破滅をもって攻め寄せ、
戦の神々の剣からは、太陽がきらめく。
岩は崩れ落ち、女巨人は倒れ、
人々は冥府への道をたどり、天は裂ける。」〔五二〕
「方角+から」や、「火の矢」と「枝の破滅(=火)」という火の記述、「崩れ」「落ち」が似ています。
スルトは炎の巨人ですが、『シグルド戦記』で「火の矢」を落としたのが誰なのかは不明です。
「巫女の予言」〔五一〕では「東から」という記述もあり、今までオーディンの味方に付いていたロキが裏切り、神々に戦いを挑むことになります。
7.3終了時点では炎の巨人スルトやロキという言葉はゲーム中に出てきていませんが、今後出てくる可能性はあるのでしょうか。
また、現時点では関連は不明ですが、ゼニアスにある天使像は皆東を向いています。
「東の空」と関係はあるのか、何もなくバージョン8以降へ持ち越しになるのか。
バージョン6.5前期では神具解放の審問宮が出てきますが、審問宮2の石碑にこう書かれています。
「選ばれた魂には 『角笛』が託され
その音色は 神の奏でし『竪琴』と重なり合う。
二重奏は『王冠』を生み 王国を復活させる。」
『シグルド戦記』にはこういう記述がありました。
「そして 世界の終焉が始まった。
残酷な神の 奏でる闇の調べは
またたくまに世界を覆い 死をばらまいた。」
「神の奏で」が一致しています。また「復活させる」と「死をばらまいた」が対義関係に読めなくもないです。
これがただの偶然なのか、意味のある偶然の一致(共時性)なのか、まだわかりません。
また、「闇の調べは またたくまに世界を覆い 死をばらまいた」は、先ほどの「巫女の予言」〔五二〕にある「人々は冥府への道をたどり」と、表現は崩れますが内容的には似ています。
「創失」では黒い霧のようなものが発生しますが、「闇の調べ」と関係はあるのかないのか。
創造神グランゼニスの「王冠」は誓約の園の石碑によると創生のチカラを秘めているそうですが、審問宮2の石碑にある「王冠」と関係はあるのかないのか。
メギストリス城前にいる兵士が城のことを「プクランド大陸の王冠」とも紹介しています。
バージョン6.0のそなえの場では、天使ヘルヴェルとアルビデが一緒に初登場しました。
『エッダ』の「ヴェルンドの歌」ではヴァルキューレが登場し、「ヘルヴォル・アルヴィト」という女性がいます。これでひとりの名前で、鍛冶屋ヴェルンドの妻です。
「ヘルヴェル」と「アルビデ」は、恐らくこれを参照して名付けられたようです。
その可能性をうかがわせる理由は名前以外にもあり、
鍛冶屋ヴェルンドが「赤い黄金」を作る話があったり、
敵である王への復讐のために王の子息たちをおびき寄せて殺害し、その「目」を「輝く宝石」にこしらえて王へ突き出す話が描かれているのですが、
6.2では3500年前の神聖ゼドラ王国に登場した導きの天使が目に手をかざし、
手を離すと、目から赤い宝石が現れレオーネに突き出す場面がありました。
原作を参照しつつ少し改変を加えながらも「赤い黄金」「目」「輝く宝石」がセットになっているところに、「ヴェルンドの歌」の面影が感じられます。
導きの天使が宙から現れるシーンは、ヴェルンドが復讐を済ませた後に宙へ浮かぶ場面に似ています。
また、英語版の北欧神話辞典で「ヘルヴォル・アルヴィト」を引くと、語義のひとつに「strange creature(奇妙な生き物)」とあり、
〝鉱石を飲み下したり手にはめたりして精神支配されている天使たち〟であるヘルヴェルやアルビデに通じるものがあり、
宇宙の陰謀論で使われる概念である「インプランティー(宇宙人が用意した異物を体内に入れられた人)」にも通じるようです。
ヘルヴェルは6.5の最後に転生し、ヴェルと名付けられますが、
「ヴェル」は『新エッダ』の「ギュルヴィたぶらかし」第35節で十番目のアース女神として挙げられています。以下引用します。
「十番目のヴェルは賢明で、何ひとつ隠せないほどせんさく好きだ。女が、あることを知るとき、ヴェルになるという言い廻しがある。」
大修館書店の『北欧・ゲルマン神話シンボル事典』p.28「ヴェル」によると、「最愛の人」を意味し、せんさく好きのことを「予言」「予感」と捉えています。
北欧神話の謎(3)へ続きます。