(以下バージョン7.4までのネタバレがあります。)
ひとつ前の日誌(30)に続いて「土」や「土星」について見ていきたいと思います。
晶文社の『土星とメランコリー』と平凡社の『7つの星をめぐる話』によると、もともと土星は火星と共に「凶星(マレフィック)」扱いだったのが、
先日別の日誌(世界球根の謎)でも出てきたマルシリオ・フィチーノが15世紀に新たな解釈をもたらしたそうです。
1781年に天王星、1846年に海王星、1930年に冥王星が発見されるまでは、
太陽・月・水星・金星・火星・木星・土星の7惑星が占星術で用いられていましたが、
上記3惑星が発見された後には現在の10惑星で占星術がなされるようになります。
1781年以前の占星術では土星は肉眼で見える最も遠い星とされていました。
フィチーノは、そのため土星が神の領域に近く、それゆえに土星の影響によるメランコリーは真面目に物事を考える気質や我慢強さにつながるとも主張し、その概念が徐々に普及していくようになったそうです。
『土星とメランコリー』p.123によると、「中世後期・ルネサンスのほぼすべての作者は、(中略)土星こそが、メランコリア体質の人間の不幸な性格と宿命をもたらす真の原因であることを、疑いのない事実と考えていた。」とあり、「暗く陰鬱な気質は『土星的』と言われている」と凶星のイメージは強かったのですが、上述のようにプラス面での解釈も加わっていったようです。
キュロンイーターに襲われたキューボがあっさり死を覚悟したり、ロッキュネの死を知った後にひどく落ち込んだりするところはメランコリア体質のように見えなくもないですし、
一方でかつて将来の夢を語り合ったキューボは将来の夢であった航界士となりアストルティアまでの長旅を成功させられたのは並大抵ではない我慢強さがあったからではないかとも思われます。
p.125-126によると「友情に厚い」「異国での長い滞在」「遠方への危険な旅」などやはりキューボやキュレクスを思わせるような特徴が書かれていますが、実際に土星が彼らに作用しているかは定かではないです。
ちなみにこの本ではアルブレヒト・デューラーの銅版画の代表作「メランコリアI」について解説していて、
版画の右上には縦横4マスのマス目が描かれ、その中に数字が記載されていて、縦or横or斜めのどれで足し算をしても同じ値になるという「魔方陣」になっていますが、
魔方陣というと気になったのは、VジャンプWEBでのムニエカの町のバージョン7紹介画像で、
ルーミリアが座るイスを少し画像補正すると、正方形のマス目とローマ字が浮かび上がりましたが、魔方陣や土星との関連は不明です。
土星にはクロノス以外にサトゥルヌスの機能もあり、代表的なものは「農耕」です。
ストーリークリア後のクエスト826「タイムカプセル」でキャラメルが出てきましたが、普通キャラメルには牛乳や生クリームなど乳製品が使われます。
ところが集落にはキャラメルを作るだけの分量の生乳を出せそうな牛や馬は見当たりません。
エテーネの村の馬サンダーはおいしいミルクを出していました。
マダムの店ではポタージュがふるまわれますが、これも牛乳が必要なはずです。
生乳は現在もどこからか集落に流れ込んでいるんでしょうか。
現実世界では、食べ物を確保する手段として、狩猟採集のみの時代から農耕や牧畜を行う時代へ移る流れにおいて錬金術が発生するケースもあったようですが、このゲームでは土星と機巧術、機巧術と錬金術の関係はどうなっているんでしょうか。
最後に共時性の、同じような物事が立て続けに登場する「連続性」の話になりますが、
バージョン7で「土」というと、師匠の大地、ワギ神、畑、野菜のようなキュロン人、生乳、土星とその性質、ゼネシアが創生したゴーレムなどが可能性はありそうですが、
正多面体の正六面体も土を表すことがあります。
これと土星めいた星、土、時渡りのチカラに関係があるかどうかは現時点ではわかりません。
錬金術書の『逃げるアタランタ』(邦訳は八坂書房)のエンブレム36に正六面体や直方体などの石が空中や陸地や川に散在している絵が描かれていて、
この本の論者によると「形成された魂」を表していて、エンブレム12にある「魂の不定形のサトゥルヌス段階」「黒」を意味する岩石と対比をなしているそうです。
バージョン6.2の勇者アシュレイの心域や7.2の断罪の剣の内部にも正六面体や形の整った直方体が見られ、
状況的に世界を構成する要素を意味しているように見えますが、今後ゲーム中でより詳しい説明が来ることが期待されます。
意味のある偶然の一致(共時性)について(32)へ続きます。