(以下バージョン7.5までのネタバレがあります。)
日誌(27)で「水」、日誌(28)(29)で「風」、日誌(30)(31)で「土」 について推論しましたが、
残った四大元素の「火」について最後に考えてみたいと思います。
バージョン7に入る前に、「火」に関することがらが2つ出てくるようです。
ひとつは異界アスタルジア、もうひとつはバージョン7.0の前提クエストとなるエテーネの村のクエスト575です。
バージョン7.5で異界アスタルジアに大地の三闘士が実装され、今から初めて遊ぶ場合はバージョン6終了後から彼らの会話が見られます。
カブ
「こうやって たき火を囲んでるとよう
開拓の日々を 思いだしちまうよな。」
ナンナ
「一日の終わりに 火をながめて……
今日も一日 生き延びられて良かったって
胸をなでおろしたっけ。」
ドルタム
「兄ちゃんと姉ちゃん キャラバンのみんな……
大切な人達の顔が 火に照らされてるのを見ると
温かい気持ちになるんだ。
ふふっ。
今は……火の向こうに
大切なあなたの顔が見えるよ。」
カブ
「一度 旅に出たら 生きて帰れる保証はねえ。
いつどこで 命を落としたって
ちっとも おかしくはないんだぜ。」
ナンナ
「だから 毎日 天に感謝するんだよ。
自分が今生きていられることと
大切な人に 再会できる幸せを。
そして 火を見て祈るんだ。
明日もこの先も ずっと
無事に 旅ができますようにって……。」
カブ
「オレたちは この火に願うぜ。
主人公の この先の旅と人生が
幸せなものであるようにってな。
くじけそうになったら この世界のどこかに
お前のために祈るヤツがいること……
思いだしてくれよな 主人公。」
ナンナの「天に感謝するんだよ」が、3行下の「火を見て祈るんだ」と内容的につながっているようで、
火に祈る行為が旅の安全や人生の幸せを願うことであり、生の継続が天への感謝の気持ちをもたらすようです。
「火」は現実世界では世界的に生命力の象徴であることが多く、
邪悪なものをしりぞけたり、けがれを浄化したりする力があるとも広く信じられているそうです。
東京堂書店の『ケルト全史』p.316-317によると、ケルトの暦では5月1日はベルティネと呼ばれる夏の祭りがあり、各地で火が焚かれ、生命力が沸き立つことを祈り、冬の荒廃からの再生と復活を願い、
また、異界と通じる道が開かれ、異界と現世の往来が可能になると信じられているそうです。
このゲームでは、ゴフェル計画からの五種族のアストルティアへの帰還以降ドワーフが穴ぐらにこもっていた原因はまだ描かれていないですが、
4000年前の未開のドワチャッカ大陸を三闘士が冒険するのは命がけだったそうで、このため生の継続を火に向かって祈願していたようです。
異界と現世の往来というと、憎悪という感情(の火)に満ちた女神ゼネシアがガナン帝国を復活させた場面が火を思い起こさせますが、実際に現実のこうした火の働きが参照されているかは不明です。
錬金術や占星術の視点では、火は怒りや攻撃性をあらわすことが多く、
日誌(30)で触れたように星と人とは照応関係にあり、火星の働きとして人に怒りや攻撃性があらわれるという見方もありますし、
怒りをそのままにすると精神衛生上よくないので、錬金術的にはフラスコや炉を作って怒りを浄化する必要が出てきます。
新曜社の『心の解剖学 錬金術的セラピー原論』p.63によると「心理療法においては、高熱を発する《煆焼》(ここでは前述の怒りや攻撃性のこと)の熱さに耐え得る容器が必要です。錬金術の仕事の準備は、まず炉を構える場所を確保し、高熱に耐える特別な容器を用意し、昼夜を問わず熱を得続けるために鞴(ふいご)を吹いてくれる人を雇うところから始まります」とあり、心理療法での錬金術の手法の用いられ方が紹介されています。
このゲームではバージョン6.0の最後に悪神の火種で憎悪の感情をあおられたラダ・ガートの魂が、天使長ミトラーによりフラスコのような容器に回収されました。
あれは錬金術絡みなのか不明ですが、怒りを抑え憎悪で壊れない器具の可能性やミトラーの錬金術への関与の可能性は現時点では残っていると思います。
なお、ムニエカの町では天使ルーミリアが魂の「浄化」を、レクスルクスの楔では天使ミレリーが魂の「清浄化」をしたのに対し、
天使長ミトラーはラダ・ガートの魂に神剣レクタリスで斬りかかって呪炎を解呪していたそうですが、
ミトラーは、呪炎は上述の清浄化では解呪できないという判断だったのか、それとも清浄化について知らなかったのか、その他なのかは不明です。
意味のある偶然の一致(共時性)について(33)へ続きます。